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無題/日記  作者: 岸 星煌
一章『何もない、起きやしない日常の大切さについて』
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Log_26

書類が捲られる。

会議、とは。物事を進めるにあたって重要なものであり、皆の意見を交錯させる場である。


ただ、ここの会議はというものの。

勝手に意見を出して勝手にまとめて勝手に決着が着く、中々自由奔放なものとなっていた。


新参者達はそれが本当に意味のあるものなのかと疑問を抱いたが、一人は真面目に聞き、一人は窓の外の雲を眺め、また一人は……無線イヤホンで音楽を聴いていた。




いざ鳴る始まりの十三針とうるさい人の声_│




「ちょぉっと待ったー!!」

鳴り響いた鉄音の先には、二人の人物が顔を出していた。

一人は金髪グラサンの声がでかい人。二人目はメガネをかけた少し髪の長い人。どちらも男で、腕章には『放送委員会』と書かれている。


「お、遅れました……すみません……」

「せーん!」

「一分オーバーね。いつもより早いじゃない。席はいつもの所よ」

彼らが遅刻するのは、いつもの事だ。管も事情を理解しているため、三十分程度の遅刻であれば許している。

「はい、ありがとうございます……」

「まーす!」

そう言って彼等は一つ残った空席に座ろうとする。時空間調査委員会の二個隣だ。


「うわ、びっくりした。幽霊部員が増えてる」

「幽霊じゃないでーす」

この席の隣を歩くのと同時に彼は驚いた。ただでさえ人が死にまくってる委員会の人が増えているのだ。幽霊と疑ってしまうのも無理はないかもしれない。

「すみません……ほら先生さっさと歩いてください」

「わかったから押すな副委員長」

「いい加減名前を覚えてください」

そう言って顧問らしき人物の後ろを歩く副委員長は背中をズルズルと押しながら何とか席へと着いた。


「無事に全員揃ったわね。今回も、前回と同じ順番でやってくわ」

会議長は書類を確認した後に、メモ用のボードを取り出した。

「まずは経過報告からね」


「それじゃあ、鍛造委員会から半時計回りにいくわ。それぞれ、報告の準備をしておくように」

各委員会、それぞれ書類を取り出す。隣の委員会と小さく雑談を交わす者、そしてそれを注意する者。

照井は空をぼーっと眺めている。会話を聞いてはいるが、それに入る気は無さそうだ。



針が五つ進んだ。


「鍛造委員会、報告を始めてください」


「はい。鍛造委員会顧問、名河染です」

「委員長兼 建築支部長の神崎 湊(かんざき みなと)です」

その声に呼ばれた二人は席を立つ。


名河 染。

最初にあった時から変わらない笑顔だ。暑そうな作業着を着て資料を捲っている。珍しくメガネを掛けている。


神崎 湊。

この委員会の委員長にして、建築支部長でもある。

短く切られた黒髪にガタイの良い身体。若干日焼けしている。そして何故か安全用ヘルメットを被ったまま会議に参加している。

こちらも夏には暑そうな長袖のインナーを着て、この会議に参加している。


「では、報告をはじめます」

「前回頼まれた武器点検、壊れたものは交換して、正常な武器もメンテナンスしておきました。特に問題はなかったです」

「頼まれた小物はもうすぐ規定量出来上がりますけど、一応多めに作っときます?」

「聞いてみるわ。でも、『多ければ多い程良い』って上は言うと思うから、作っておいて」

「了解でーす」

さらさらと話が進んでいく。最年少と言っても会議には何度も参加していた。

経過報告とは、前回から変わった点を報告し、それの問題がないかを確認する。

先程言っていたのは前回会議の内容だろう。



『鍛造委員会』

その名の通り、『造ること』に特化している。

指導者や民間人が使う剣などは、大体はここが製造している。

また、存在する支部は『メンテナンス支部』と『建築支部』

メンテナンス支部は、造るのではなくそれを『見る』『直す』『点検する』することに重きを置いている。

建築支部は簡単に言えば大工である。中々のハードワークだが、以外にも人は居る。


「本部が使ってる建物の方も異常なしです。あ、でもこれから夏本番になるんで、建築支部の方から暑さ対策の申請書類が一つだけ」

「メンテナンス支部も鍛造委員会本部も、いつも通り稼働中でーす」

「それは良かったわ。ありがとう」

中々息のあった報告だ。

……後に見ることになる委員会と比べれば、ここの仲の良さは他よも明らかに突飛つしている。


「でも、いい加減工業と合体しません?そうしたら人手も増えるんですけど」

「個人の方は個人でやることに専念しているわ。何度か訪問したけど、全員に断られたわ」

鍛造委員会とは別に、個人で物作りをしている人達。高齢の人達もいるが、その技術が一級品なのは間違いない。

可能であれば全て合併して、より良い技術を作りたいものだ。名河はそう願っている。


「うわ。それ俺が行かされたやつな。ついでに技術でも盗んでやろうと取材依頼したけど、それも断られたよ」

先程の放送委員会顧問らしき人物が声を出す。どうやら、交渉には彼が派遣されていたようだ。

さりげなくネタにしようとしている辺り、かなりちゃっかりしている性格なのだろう。諒は窓にへばりついている葉っぱを見ながらそう思った。


「そっかー。じゃあ大丈夫です」

「仕方ないよな。クリエイティブな仕事はどうしても個人でやるやつが増えるんだよ」

「そして、そういった人達はだいたい頑固者ですね」

介護に頭を悩ましている人物は言う。年長者が頑固であることは、彼女が一番知っていた。

「私達の方は、市民の方が自主的に協力してくださるんですけどね」

常に街を綺麗にしている人者は言う。掃除において一番大事な物は、協調性である。

「ボランティアするくらいなら、雇っちゃいなよって思うんだけど」

「既に他の職に着いてるか、専業主婦の方が多いんです」

「いいなー平和だね」

「ふふ。皆様方に比べれば平和ですね」

この状況も、実に平和な歓談だ。この後飛んでくる言葉の弾丸に比べれば。


「仲良くしてるところ悪いけど、次に進ませてもらうわね。交通委員会。報告をはじめてください」




「分かりました。交通委員会顧問、雨宮 彰(あまみや あきら)です」

「委員長の、天音 澪奈(あまね れいな)です……あ、交通警備支部長兼、です……」



雨宮 彰。

この委員会の顧問である彼の目元には深い隈。髪を切る暇がないのだろう、灰色の伸びた髪をそのままにしている。


天音 澪奈。

この委員会の委員長であり、交通警備支部長でもある女性。こちらは白髪の髪をボブヘアにし、今にも死にそうな顔をしている。


「休みをください。それ以外は支部共に通常運転です。俺の華麗な運転のようにね」

その顔に削ぐわず、しっかりとワーカーホリックのようだ。

運転のしすぎで頭がおかしくなったのだろう。別の面白くも無いギャグを放った。

「……検討しておくわ」

ツッコミがないあたり、いつも通りのことなのだろう。



『交通委員会』

本部と支部の立ち位置が逆なことで有名な委員会。本部では数少ない人間がバスやタクシーの運転手をし、『交通警備支部』では交通整備を日々行っている。

本部はともかく、支部に人は居なくもないのだが……全国に支部を配置しなければいけないお陰で、普通に人が足りない。


「そう言って毎回却下されるじゃないですか。人手がいないんですよ。チャームとかなんだか要らないんでもっと人寄越してください」

机を両手でバシバシ叩いて雨宮は抗議する。


「……善処するわ」

「交通警備支部は足りてるんですよ。あんなんぶっちゃけ誰でもできるんで。でも、本部の運転手が本当に足りないんです」

「お陰で全員寝不足です。この委員長を見て可哀想だと思わないんですか?」

雨宮はさらに抗議する。上の空な天音を指さして。


「……来年の公募は一番上に掲示しておくわね」

「無理ってことですね。じゃもういいです」

その抗議は傍から見たら虚しいものでしか無かった。

仕方ないのである。人事管理連盟である管でさえも、どうにかできる問題ではなかった。


「ミント飴。眠気が覚めるから常備してるのだけれど、要るかしら。」

「ありがとうございます……」

その後ろで天音は同じくワーカーホリックである救護委員会の委員長から、良い物を貰っていた。




「では次、放送委員会」

「放送委員会顧問、相楽 蓮(さがら れん)でーす」

「同じく放送委員会、副委員長兼 広報支部長の谷崎 応(たにざき こう)です。報告を始めさせていただきます」

先程の、遅刻してきた二人だ。そんな名前だったらしい。



相楽 蓮。

この委員会の顧問の男。そこまで派手ではないが、染まって少し跳ねている金髪に謎の星型サングラス。腕を組んでいるのを見る辺り、報告は全て副委員長に全投げするようだ。


谷崎 応。

この委員会の副委員長もとい広報支部長である男。少し明るい赤茶色の髪を後ろで一つに結っている。形式としては照井が近いが、彼より髪が長くなっている。



『放送委員会』

簡単に言えば、テレビ局だ。スタッフやアナウンサー。それに関連する仕事は全てここにまとめられている。また、防災無線などの放送の運営をすることも少々。

存在する支部は『広報支部』である。各地へ取材へ飛び、日々ネタを作っている。また、本部ではなくこちらの支部が新聞記事をまとめることもあったりする。


「こちらも、これといった問題は特には無いのですが」

副委員長が書類を捲るなか、一つのページで手が止まる。


「一つだけ。最近またチャームの事故が増えて来て……それの扱いが少々難点ですね。もっと大々的に報じて良いのでしょうか?」

「そうね……再発防止の観点から、警戒しとして発信するのは良いことだけど、あまり取り上げすぎてもね」


チャームの事故。

この世界の才能の種類は様々であると同時に、事故も多種多様である。

出しすぎた水で窒息死、火をつけすぎて家を燃やす、力が制御できなくて首をもぎ取る。



そして、才能に溺れて光を『無くす』もの。



「そうなんです。年長者が批判することが結構多いんですよ。委員会の方に電話でクレームが入るので、それがやなんですよ」

ここにいる全ての人……いや、この世界に住む人々に、チャームが何かを完全に理解してる人はいない。

『どうしてこんなことが起こったか』なんて言われたって、『ただの事故です』と返すしかないのだ。


双方ため息をつく。この問題で悩んでいるのは個人ではない。国的な、世界的な問題であった。

「上で検討しておくわ。今はとりあえず、重大な事故のみを取り上げてちょうだい」

管は素早くメモを記入する。とても常人の速度とは思えなかった。速記というものだろうか。



「未来ある若者が、事故を恐れて才能を使わなくなったらそれはそれで困るわ」


「あぁ、『開花(かいか)』でしたっけ」

聞きなれないワードが飛び出て、諒は視線を窓から谷崎へと移す。

そんな話は聞いたことがなかった。彼だけではない、ほとんどの人間はそれの名前を覚えていない。

谷崎が覚えているのは、ひとえにその仕事のせいだろう。


「そうよ。ちょうど良いわ、前回少ししか話せなかった『()()()()』について話をさせてちょうだい」



「知っての通り、チャームはまだ歴史が浅い。自分でも何ができるのかわからずに、その才能を"適当"に、"雑"に使っている」

管は立ち上がり、解説を始める。

ホワイトボードに素早く文字を書いて、『開花現象』の文字を指をさした。


「私たちでさえ、自分のその才能を完全には扱えていない」

「へぇ?『指導者』でもか?」

「そうよ」

教育者の質問を簡単に受け返す。この流れに一部の人物は動揺を見せた。

心も例外ではない。今まで完璧だと思っていた指導者が、完璧ではなかったのだ。誰だって驚いてしまう。


「そんな中、その才能を()()に扱える人が要ると、報告を受けたの」


「完璧に……具体的に言うと、その才能の力を"全て"発揮出来る」

「そして、私たちの目に光る星が、白ではなく()()に輝く」

「そして、その現象を『開花』と呼んでいるわ」


チャームを、真の意味で使いこなすこと。開花。

チャームが生まれてから少し経ったことで、新たにわかった新事実だ。

「その、才能を開花させたって人物は誰なんだ?」

では、それはどこで見つかった?

簡単なことだ。



「『門番』よ」


「門番さん!?!?」

突然上がった大声に一部の人間が肩を震わす。


「心うるせぇ!黙れ座れ静かに聞けサインボードをしまえ」

声の主は心だ。今に飛び出しそうな程に体が前のめりになって、別の意味でキラキラと瞳が輝いている。

そしてそれを諒が窘める。間に星煌を挟んで。

「だってびっくりしたもん!仕方ないじゃん!」

「いいから早く黙れ。そして座れ」

「はぁい」

星煌は必死に周りに謝った。声は出してないが、その顔の必死さに周りの大人は大丈夫と手でサインを作った。

左右の二人は特に悪びれることなく持ち場へ戻った。ついでに言うと照井は目を閉じている。


「……こほん。まあ、"五線譜の"一人である門番が直々に報告に来てね。一ヶ月ほど前の事、そして突然だったから報告が遅れてしまったわ」

「この現象を知ってるのは 指導者、五線譜。そして連盟と委員会のみになるわ。このことは口外しないでちょうだい」

キッと相楽を睨みつける。何でもかんでもネタにしてしまうのは業界の悪い癖だ。相楽ははいはいと言いたげに右手をしっしと左右に振った。


「分かりました、いつものメンツですね。……秘密事も段々と増えてきましたね」

「そうね。まだ詳細が分かってないから、公表するのは後になるわ」

報告を受けたあとも色々調べたりしたが、現状わかっているのは、『そういった現象がある』という理解のみ。


「話を遮ってしまってごめんなさい。続き良いわよ」


「そうか。じゃ給料あげてくれ!」

折角の緊張モード虚しく、第一声はマイナス一点だ。

んな事を本人は気にせず右手でお金のポーズを作っていた。

「……今のは聞かなくて結構です」

「いいなそれ。こっちにも予算をくれ予算」

「先生、だめですよ。机から足を下ろしてください」

教育者あるまじき態度だ。諒はうわぁと出そうな声を飲み込んだ。


「はぁ……放送委員会本部、広報支部共に問題はないです。次行って大丈夫です」

そんな二人を抑えるため、副委員長は強引に次にいこうとした。



「そう?じゃ次。救護委員会、報告をはじめてください」




「では、お言葉に甘えて。救護委員会顧問、真壁 康一(まかべ こういち)です」

「委員長の如月 遥(きらさぎ はるか)です」



真壁 康一。

救護委員会の顧問で消防支部である彼を一言で表すのなら、まさに"壁"である。何一つ崩さない表情、態度。優しくない訳では無いのだが、顔が怖い。髪も体格も普通。


如月 遥。

委員長である彼女も、顧問に似て顔が怖い。無表情ではなく、常に眉にシワがよっているという意味での。でもこっちは優しい。前髪をセットして後ろ髪は雀のしっぽになっている。


「先程の話と地続きになりますが、チャームの事故が本当に多いです。今までもありましたが、近年は本当に顕著になってます」



『救護委員会』

救護と表すより、レスキュー隊の方が正しいだろう。

彼等は診る事で人を救うのではなく、一刻も早く現場に駆けつけ、速さで人を救うのだ。

最も大変な仕事であると同時に、最も大事な仕事でもある。

存在する支部は『消防支部』。やることは消防士と同じだ。

また、緊急で手術を行う場合もある。


「特に、まだ力が制御できない小さい子。そして、ちょっとやんちゃしたいお年頃の中高生」

「私達が駆けつけた段階では既に間に合わないことが多数。チャームの扱い方についての指導にもっと力を入れて欲しいですね」

そんな彼らであっても、たどり着けない程残酷な事故。


「それに、その『開花』現象によって才能の殺傷力が増すのなら、事故はより一層増えるでしょうね」

「ふむ……教育委員会、その辺については?」

そういった事故を未然に防ぐ方法。

それは、教育を施すこと。


「散々言ってるんだよ!若いうちは力の制御が効かないことが多い上に、チャームがなんなのかさえ未だにわかっちゃいねぇ」

「先生、机に足を乗っけないでください」

だが、それでさえも意味をなしていない。どれだけ危険性を促しても、好奇心には勝てないのである。


「特に多いのが中学の奴らだ。そういうことをやりたい年頃なのは分かっちゃいるが、事故を起こすまで行くのは勘弁して欲しい!」

机を左手で大きく叩く。椅子に大きく仰け反って自身の意見を口に出した。

「あとついでに予算も」

「先生、それでは首が痛くなりますよ」


「同感だよ。建物が破壊される度に私たちが派遣されるんだ」

「先生は武器専門じゃないですか。文句言いたいのはこっちですよ」

壊れた建物を修復するのも、建築支部の仕事だ。本部ではなく。

「代弁してあげてるのさ」

何が言いたげな神崎ジト目に名河はポンポンと背中を叩いた。


「やはりそうですよね。こういった事故が一件でも起きてしまうと、止まることを知らないんです」

「チャームの『発現』が"平均して五歳"なのからが幸いです。もっと幼い頃から扱えていたら、こういった事故が増えてました」

才能が現れるのは、生まれてすぐではない。例外もあるが、大概が五歳前後である。


「そうね。『チャームの事故』に関して色々取り組んできたけど、改めて考えるよう本部の議題に上げとくわ。ありがとう」

先程のボードに新たに項目を加えた。今現在、最も重要なのはそれの対処だ。

「他にはなにかない?」

「はい。手術支部も消防支部も、悩んでいるのは同じ事なので。特にはありません」



「じゃあ、この流れで教育委員会の報告を始じめてちょうだい」

「教育委員会顧問、久世 修二(くせ しゅうじ)だ。予算を回せ」

「小学支部長兼委員長の朝倉 栞(あさくら しおり)です」

「予算を回せ。金が欲しいんだ」

先程から散々飛び出た言葉。もはや語尾である。

「……それ以外は?」

「ない。少なくとも教育面ではな」


「じゃあいいわ。次は」「おい!!こっちはブラックなんだぞ!!」

今度は両手で机をバンバン叩いて抗議する。

「安心して、あなた以外もみんなドス黒いわよ」

どこか深淵を彷彿とさせるような瞳で管は言った。委員会の仕事が総じて過酷であることは、火を見るより明らかだ。

「チッ、なんだよこの職場!!!」

「先生、足を机に乗っけながら台パンをしないでください」

このキレ芸も、会議においてはもはや名物である。星煌は大きな音が鳴る度にびっくりしているが。



『教育委員会』

小中高、大学の教師であり、保育園などの管理も行っている。

やることはほぼ教師と変わらない。ただ、高校生や大学生が大幅に減少したことで、教師の必要数も少なくなってきている。顧問は「この叡智を途切れさせてはいけない!」と奮闘しているが、果たしてどうなることやら。

存在する支部は『保育支部』『小学支部』『中学支部』『高等支部』『大学支部』であり、全委員会の中でも最多の部数を誇る。


「そもそも、なんでそんなに予算が欲しいんだい?」

「より良い教育のためだ。逆にそれ以外あると思うか?」

人を診る仕事に就く人間の問いに、久世は即答した。


「……真面目なのかそうじゃないのか、ハッキリして欲しいわね」

「俺はいつだって好きな先生ランキング殿堂入りだぜ」

「はぁ……」



久世 修二。

教育委員会顧問。

黒い前髪をセンター分けをしてセットしている、ごく普通の髪型だ。目つきも悪いしメガネも掛かっているが、こう見えて生徒からの人気は高い。子供には優しいと言うやつだ。


朝倉 栞。

この委員会の委員長であり小学支部長である彼女はそんな先生の教育を昔受けた。それに感化されてこの委員会に入り、委員長の座まで上り詰めた。かなりの長髪であり、こちらもメガネ。


「先程の事故に関しての教育申請書類があるので、後で拝見しておいてください。他支部も通常通りなので次にどうぞ」


「わかったわ。じゃあ次、保健委員会の報告をはじめてちょうだい」




「保健委員会顧問の水野 凌(みずの りょう)です」

「委員長の白川 陽菜(しらかわ ひな)です」

「副委員長兼介護支部長の高峯 千景(たかみね ちかげ)です」



水野 凌。

保健委員会の顧問。一日の休みより休憩時間が欲しい系の男。この部屋の中で一番まともな人間。医者なのに栄養失調。ヘビースモーカー。


白川 陽菜。

三度の飯を食うより子供の相手がしたい系委員長。休みを貰って子供の様子を見に行く女。お金は全ておもちゃに注ぎ込んでいる。髪は低めのツインテールをしている。


高峯 千景。

介護に頭をやられている代表。仕事が増えるので委員長はやりたくないと言ったら、副委員長にさせられた系の不憫な女。でもお金の為に辛抱する。髪はボブパッツン。



『保健委員会』

こちらは救護委員会とは違い、医療で人を救う仕事。

チャームという未知の現象の対応に日々頭を悩ませている。けどそれに助けられてもいる。この仕事に就く大半の人が寝不足。

存在する支部は『介護支部』『歯科支部』『獣医支部』『手術支部』

教育委員会に次いで支部が二番目に多い委員会。本部の仕事を分ければもっと増えたりする。


「問題がありすぎるのが普通なので問題ありません」

水野は諦めたように口にする。先程から委員会にワーカーホリックが多すぎる。

「あぁ、全部院内の出来事ですのでお気になさらず。この先生疲れてるんで」

「貴方達もですよ」

医者は互いに互いを尊敬していると聞いたことがあるが、本当らしい。水野は本来胸ポケットにあるはずだったのタバコを取る動作をしている。

「これ、今月の申請書です。器具の申請とかまとめたんで読んでおいてください」

「わかったわ」

「介護支部 歯科支部 獣医支部 手術支部。全て問題ありなので問題ありません」

副委員長は楽しそうに口にした。そうしないとやっていけないのだろう。

「……わかったわ。ありがとう」

先程と比べスピーディーな報告に管は感動で涙が出そうになる。こういった仕事が出来る人が増えれば良いのにと、四分の一程度寝ている惨状を見て思った。



「次、運送委員会。報告を始めて」




「はーい。運送委員会顧問の宮坂 宏斗(みやざか ひろと)です」

桐山 悠斗(きりやま はると)……委員長君ではハードスケジュールのため欠席です」

委員長は欠席のようだ。一人だからか、ここの席だけやけに狭く組み立てられている。

「毎回言ってるんですけど、郵便支部との格差はいつなくなるんですか?!」

「諦めてちょうだい」

「じゃあ諦めます☆」「というとでも!?明らかに仕事量が違いますよね!?」

書類をバタバタと靡かせながら彼は叫んだ。



宮坂宏斗。

運送委員会顧問。黒髪でさっぱりしているが、見てわかる通りテンションが高いタレ目の陽キャ。別に大阪出身とかそういう訳では無いけど、どっかで恐らく血が混じっている。仕事を減らして欲しい。


「あのね。郵便局ってのは大事なのよ」

管は子供に説明する様な口調で言う。

「運送業だって大事でしょう!?!?」

バカにしてんのかというツッコミを抑えて他の答えを提示する。

それを言ったらぶっ飛ばされるだろう。

「チャームの応用技術によって多少はマシになったでしょう?」

「まあそうですけど……って、そんな睨まないでください!わかりました問題ないです!次行ってください!!」

圧に屈した、弱い男だ。

ここに桐山が居れば彼を鼻で笑っただろう。桐山は高飛車な男である。



「そう。じゃあ次、図書委員会の報告をはじめてちょうだい」




「はい!顧問兼委員長の桜庭 文乃(さくらば ふみの)です!!」

「図書委員会副委員長の藍沢 凌(あいざわ しの)です。報告始めさせていただきます」


「図書委員会は問題ないです!!」

「本部のスペースが狭くなってきたので、後で拡張希望の資料を提出します」


「通訳支部と文化支部のみなさんも元気です!最近はチャームを見ようと各国から来ることが増えてますね!!」

「そこら辺の事故は頑張って抑えてます」

テンションの落差が激しい。

誰もが思った。委員長と副委員長逆だろと。

「いい事ね」

管は頷いた。この子達にだけ甘い傾向が見られると、朝倉はメモを取った。



桜庭 文乃。

世にも珍しい顧問と委員長を両立している女。頭にカチューシャを付け、長い髪を靡かせている。声がでかいので通訳支部だと勘違いされるが、実は違う。


藍沢 凌。

図書館委員会副委員長。

顔の可愛さならここで一、二を争うだろう。落ち着いているが、本狂い。自分の人生は本を読むために生まれてきたのだと思っている。



『図書委員会』

各国にある図書館、そしてそこに存在する本を取り扱っている。

この仕事に就く仕事の人は大体が本好きであり、高校を卒業している傾向にある。

だが、本部に存在する図書館のみ、『司書』が取り扱っている。

存在する支部は『文化支部』『通訳支部』。通訳支部は交通委員会に主張したり、文化支部は博物館などの運営も行っている。


「あと、新しい本を探しに行きたいです!」

「聞くけど、どこまで?」

「まだ見ぬ地まで!!」

相当本が好きなのだろう。世に出てない本を探しに行くとは、中々のアクティブさだ。

「ネット通販を使ってちょうだい」

「おい!それ運ぶの俺なんだぞ!!」

……手軽になったからこそ生じるデメリットもあるようだ。

「見ての通り、図書館委員会の異常はなしです。二十四時間営業はまだ早いですかね?」

「……検討させていただくわ」

図書館が二十四時間営業になったら、周りのようにハードワークになってしまうだろう。


「次、環境委員会、報告を始めてちょうだい」




「環境委員会顧問、若葉 (わかば )こはるです!」

「委員長の清水 真白(しみず ましろ)です」



『環境委員会』

この国を清潔にするのには欠かせない委員会。ごみ拾いからその処理まで、全てこの委員会が担当している。

そのため、心の優しい人物で結成されている。街も心も綺麗すぎるのだ。良い意味で。

存在する支部は『園芸支部』

公園などの花壇の手入れ、整備。そして花を売ったりもしている。


「園芸支部が前依頼された委員会本部周りのガーデン、だいたい完了しました」

「ありがとう。これでもっと華が出るわ」

「次の夏祭りに向けて、もっと清潔になるように頑張ります!」

「他は問題無しです。次にどうぞ」



若葉 こはる。

環境委員会顧問で園芸支部所属。ほわほわボブヘアーの可愛い見た目だが力強い。実家が花屋で、昔から花が好きだった。

虫も好き。昆虫も触れる。


清水 真白。

環境委員会委員会であり、掃除好き。動画サイトに自身の掃除方法をアップしたりもしている。チャンネル登録者数はそこそこいる。真面目なパッツンカットのの丸メガネさん。けど八重歯がある。


「夏祭り……休みは……」

「ないよ。きっとね」

天音が絶望した。それにつられて周りの人間も落ち込み出した。

そんな空気をリセットするために、管は最後の委員会に行くことにした。




「それじゃあ最後、時空間調査委員会。報告をはじめてちょうだい」


「……照井。あなたの委員会よ?」

呼びかけたのに返事をしない姿を見て、管は報告を促した。無いなら無いと、さっさと言って欲しい。


「んー……なんかあったっけ?」

「沢山あったじゃん先生!」

「ほら、立って自己紹介だよ!」

心は先生を軽々持って立ち上がらせる。

「初めて来た人に教わって恥ずかしくないかよ?」

若干呆れながら久世は言う。彼にツッコミを言わせるとは、照井は中々の逸材であるかもしれない。


「てか、なんでそんな人いるんだよ」

「勝手に連れてこられました」

「あれは銃刀法違反では?」

「ああいった委員会 連盟は特別に許可されています」

桜庭は不思議に思ったが、無事に解決した。そこら辺のミステリーよりも簡単だ。


「えー、時空間調査委員会顧問の照井穹です」

「委員長の篠原諒で「じゃあ副委員長の水凪心です!」は?」

「こっちが、副副委員長の星煌!」

「あ、……ら、しいです。岸星煌です」

流れでされた自己紹介に星煌は戸惑いつつも名前を口にした。


「おいなんだ副委員長って絶対今決めただろ」

「諒だってさっき決まったじゃん!」

「お前が副委員長に座るよりかは星煌に着いて貰った方が絶対に良いね」

「えぇ!?私の方がお姉ちゃんだよ!?」

当然始まる攻防戦。家のノリをここまで持ってくるのはやめて欲しいと星煌は内心思った。


「なんだか……落差が激しいですね」

「見てください真ん中の子。すごく可哀想」

「挟まれてるわね」

物理的に肩身が狭そうな星煌を見て保健委員会は内なる心配性を顕にした。


「あの委員会の人が全部揃うなんて!こんな機会、滅多にありませんよ。終わったら取材してきても?」

「勝手にしろ副委員長。ネタになるんだったらなんだって良い」

名前は覚えられていない。


「はぁ……もういい。「ぐえ」先生、報告は俺が言っても?」

諒は心の顔面掴んでを無理やり喧嘩を中断させる。

「いいよ。ああ、僕の失敗は隠してね」

(この人あの事件隠蔽したかっただけか)

やけに消極的な照井の姿が不思議だったが、凜々との一件を言うのは億劫だっただけだ。

そう言って照井の机に置いてあるファイルを取り、諒は報告を始めた。


「あー……なんて言うんでしょう。詳細は割愛しますが、あの穴について色々分かりました」

「穴について?」

これには管は声も出さざるおえなかった。この委員会が結成された理由であるそれが、解決するのかもしれないのだから。

「中々重大なことだな。照井お前よくそれでなんかあったっけなんて言えたな」

久世だって人のこと言えない。ほぼ全員が同時に同じことを思った。

「ごめんなさーい」

自分が報告しないとわかって、照井は既に座っている。


「穴。あれは、『自然現象』です」

「我々が塞ぐことは出来ない。どれだけ頑丈に補強しようと、それは破られてしまう」




「あぁ。自然的に、勝手に起こってしまう」

「そうして、解決もできない。被害を無くす、抑えることはできるが、根本的な解決はほぼ無理だと言える」


「そうだ。私が死んだとて、『世界と世界にはドアがあり、それを破れる』という認識はほかの世界まで広まってしまった」

「故にこれを解決するのは、もう無理だ」

観測者は自室から同調するように声を上げた。



「ふむ……あの穴は、誰かが開けているのではない。雨が風に流されるがごとく、勝手に起きる。ということ?」

「はい。そして、それを覆すことは絶対にできないということです」


「自然現象……」

「なるほどね……ありがとう。貴重な報告だわ」

管は少し考え込んだ後、その意見を受け入れた。


「穴について他にわかったことは」


「ここの委員会の予算をくれ」

「……」

そんな中、突然久世が顔を出している。予算をくれだけなら、いつもと変わりはない。

でも、彼は『ここの』と言った。それは管も見過ごせない。

「あのねぇ。過去にどれだけの人がこの委員会で亡くなってると思ってるの?この子達がここまで生きているの、奇跡と言っても過言ではないのよ」


「そんなところから、金を巻き上げるだなん「そうだよ。奇跡だ」……」

彼はそれに同意した。生きている。それ以上に尊いことはない。


「『だから』だ。俺は、これ以上子供たちが犠牲になるくらいなら、『指導者』が対処しろつってんだよ!」

「お前の言う通りだ。今までどれだけの人が亡くなったと思ってる!」

「これ以上犠牲になるくらいだったら、とっとと世間に公表して指導者にでも対処させろ!」

久世は立ち上がって叫んだ。突然の意見に、周りも落ち着けと声を出した。


だが、この言い方では語弊がある。そう考えた委員長は、素早く意見を翻訳をした。


「先生は、『早くこの子供達を安全にさせてそれにより浮いたお金を寄越せ』と言っています」

「そうだ!」

「そうなのかよ……」

なんだか緊迫した雰囲気になったが、翻訳のお陰で真実が明らかになった。諒は安心の意味のため息が出た。

その意見は、"優しさ"故のものだった。


「それならご心配なく」

「俺たち、そこまで弱くないです。少なくとも、ここまで生き残ってることがその証明になります」

諒はそれに対抗する。それは思い上がりでもなんでもない。彼等は確かに、強かった。

「うんうん!私たち四人で一千億人の力があるからね!そうでしょ、星煌!」

「!?あ、うんそうだねたぶん、はい」

「おい約一名不安だぞ」

久世は窓に寄りかかった。


「それに見てください、傷だってどこにもついてないでしょう?」

最近半袖に変えたのをいいことに自身の綺麗な肌をアピールする諒。

「……この前平手打ちされてたじゃん」

「あれは怪我に入らない。てかお前だって膝擦りむいてただろ」

「あれは転んだだけ!戦闘とは関係ない!」

「いーーやあるね」

「ないない!諒後頭部思いっきり殴られてたじゃん!」

「お前だって油断したかなんだか知らないが目に砂入ってただろ!そっちの方が重大だね」

「あれはただ――」


「……はぁ」

「星煌ちゃん、頑張れ!」

星煌の明らかに顔が曇っている。

こうやって挟まれるのは結構経験してきたが、流石にTPOを弁えて欲しい。


「先生も立ってください……」

「しょうがないなぁ。でも何もしないよ?」

「じゃあ威圧感とか出しといてください」

「威圧感?じゃあピースでもしとくね」

適当にいえーいと言いながらダブルピースをしている。一人集合写真とはこのことだ。


「じゃあ真ん中の……星煌でいい。お前、これからもちゃんとやれんのか?」

「はいと答えれば金は巻き上げないでやる」

脅しだ。NOと答える選択は消されてしまった。

「先生、自分の番じゃないのに立たないでください」


「はい。頑張ります」

「もっと大きな声で!」

「うぇ?、は、はい!頑張ります!!……なぁ諒!」

予想外の返答に星煌は諒に助けを求める。これで「声が小さい!」などと言われたらメンタルブレイクしてしまうので、もはや喧嘩がどうのとか言ってある場合ではなかった。


「!?、そ、そうだな?」

諒は若干困惑しながらも答えた。

「ねぇ心!!!!」

「うん!!!」

「見ての通り、これからも完璧にこなしてみせまーす」

最後に閉めとして照井が答えた。このチームワークなら心配入らないだろう。


「てかそもそも、俺たちのところはそんなに金回ってきてないですよ」

「は?」

「はい、これ」

諒は一枚の書類を久世へと渡した。

「……おい、もっとこいつらに予算を回せ。仮にも人を救ってるんだぞ」

「先生。足おろしてください」


「まあいいでしょ。恒例行事なんだから」

「はあ……今の一連の流れ、あなたの教育者としての腕がなければ即興解雇でしたよ。予算については検討しておきます」


こうして、無事に自分の番を終えた星煌は安心して席へと座った。



「じゃあ次の議題ね。委員会の方針に異論がある人いる?」


「……特にないみたいね。じゃあ、『国民のために尽くす』を第一目標として、今まで通り頑張ってちょうだい」


「それと、最近は委員会に所属してない人達も増えてきてるわ。たとえ相手がチャームを持っていたとしても、委員会所属として丁寧な対応を心がけましょう」


「あと、委員会内での格差問題もあるわね。年齢がどうとか言って、パワーハラスメントをする人が増えてるわ。配った資料の五ページ目を――」




そこからは、普通の会議が続いた。

照井は寝た。というか参加してる半分くらいは寝ていた。





「今回はここまでにしましょう」

管が書類を閉じる。席を立って、両手を払った。

「お疲れ様。じゃあ、最後に挨拶を」


「起立。……『今日も我らが、正しい道を歩めますように』」

「「『今日*も〜ら、み◎〜を%@に』」」


この胡散臭いセリフも、覚えてない人が大半である。

「よし、解散ね」

その声と共に、一斉に椅子がガタガタと動き出した。


「はー!!やっと終わったぜ」

「先生、帰りますから足を下ろしてください」

教育委員会は怠そうに退出した。


「委員長さん、お疲れ様です。失礼します」

「えぇ。気をつけてね白川さん」

保健委員会は駆け足で帰って行った。


「ここで寝てていいですか……」

「ダメですよ先生。前そうやって時間を無駄にしたじゃないですか……」

「折角の休みなんですから、ちゃんと家で寝ますよ、ほら起きて」

交通委員会は眠そうにタクシーを呼んだ。



「よし、じゃ僕たちも帰ろうか」

照井が席を立つ。殆どはもう退出していた。

「寄り道!寄り道忘れてないよね!!」

「忘れてないよ。どこに行きたいんだっけ?」

「ここの、有名な――」

心が興奮気味にスマホを見せる。まだ時間はたっぷり残されていた。


「まさか、俺が発言するとは思わなかったよ」

「ね。でも良かったよ、諒の強い態度」

「あれで評判が高い先生のが信じられん。表裏が激しいんだよ」

愚痴を零しながら会議室を出ようとした。




いつも通りに、肩を並べて帰る。


これから起こりうる、『時空間調査委員会の最大の過ち』が来るとは知らずに。





記録:記入 管 星煌

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