Log_23
振り返ると、そこには何も無く。
俺はただ彷徨って、川を下るだけ。
……ただ、そんなことが出来たなら良かった。なにも背負うことなく、自由に生きるような。
鳥は羽ばたく。何も恐れず。
俺だって昔はそうだった。
だが、今はどうだ?
過去を忘れることは決してない。俺にとってそれはこの世で一番尊いであり、一番好きな物であった。
だが、それに縋ることは醜いことだと、俺は知っていた。
だから決めたんだ。必ず、……復讐をしてやると。
過去を想うより、今を生きた方がいい。そして今を生きるなら、過去の出来事を清算しなければならない。
燃えた。俺以外の全てが。そして、俺自身もその残り火に焼かれた。
未だに俺は、檻の中にいる。
流れる川をを横目に、横たわり。その足枷は外れることなく、ただ俺のそばにいた。
鳥籠の中に囚われ、ただその時を待つ。ずっと、ずっと息を潜めて。
鉄が冷たい。あんなにも焼かれたのに、俺に残ったのはこの冷たさだけなのか。
暖かい日々は全て消えた。それを取り戻すことが叶わないのなら、さらに燃やしてしまおう。
楽しかった日々も、幸せだった日々も思い出せない。いや、思い出そうとしない。
それは、復讐への"躊躇い"になってしまう。それと向き合ってしまったら、許してしまったら……俺はきっと、復讐を果たせない。
だからこうしてじっと、今だけを思って。
周りと合わせて、その裏で計画を立て。人は気にせず、仲間とは適当に喋って、笑って、仲良くなって……しあわせ、に……
あれ
そして、その鍵が開く時。ドアが開き、その手を掴む、その時。
一人の孤独な指揮者が、ついに外の世界に顔を出す。
それは平凡な時間で、些細なことであろう。
ただの日常の一部となって、笑う。特別な日ではなく、誰かにとって、ありふれた日常。
それが何より素晴らしいと、彼は知っていた。……失ったからこそ、それに気付けた。
才能なんて、なければ良かった。昔なら、そう言っただろう。
だが、これがなければここは辿り着けなかった。
何かを失わなければその結果は得られない。
過去には戻れない。結末を噛み締め、やはり今を生きるしかない。
「なぁ、星煌」
「それでも俺は……やっぱり、お前が羨ましいよ」
Log_ 引用。
これは、とある復讐者がその刃を手放す時。
過去も想い、今も大切にすることを決めた、その瞬間の一ページである。
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一章『何もない、起きやしない日常の大切さについて』




