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無題/日記  作者: 岸 星煌
一章『その言葉の真■と確かな芸術について』
23/24

Log_22


閑話 : 休題_│




「やあ。初めましてかな?」

その顔、身長見た目は星煌と瓜二つ。双子と言われても違和感がないほどに。

強いて相違点をあげるとすれば、鼻にかかった楕円形の眼鏡だろう。

「これが……星煌の言ってたもう一人の自分?」

「ここの世界の、な」

そう言ってT√と名乗る人物は勝手に緑茶を飲み干し、それを凜々に返した。


「星煌が二人いるのは、そういう事か?」

「あぁ、そういう事だ」

「……どゆこと?もっと分かりやすくしてよ」

心が説明を求める。彼女のスカスカの頭は、わかりやすい説明しか入らなかった。

「分かりやすく、と言われても……。私はここにいるだけであるし、彼女は運命に仲介しに来ただけだ」

非常に回りくどい説明だ。

ただ『私はここの世界の岸星煌で、彼女は別の世界から来た岸星煌だよ』と言いたかっただけだろう。


「……こんなんなの?」

「こんなんとは失礼だな水凪」

「一応この世界ではそっち(星煌)がイレギュラーなんだけどな……」

彼女は頭を搔いて、小さく呟いた。


「少なくとも俺らが知ってる岸星煌ではないってことだろ」

「あぁ。数多の岸星煌、その一つに過ぎない」


「……」

「照井さん、私の道案内は正しかったろう?」

何が言いたげな照井の瞳に答えを出す。

「君か、家を教えてくれたのは……」

照井は道案内の声を聞いた時、( どこかで聞いたことがあるような )とは思ったが、それを顔に結びつけるまでには至らなかった。


「お前か、勝手に教えたのは……」

凜々が呆れたように口にする。凜々の認識では、彼女は家までの道のりを知らないはずだ。

何かしらの手を使ったのだろう。彼女なら家の特定ぐらいおちゃのこさいさいだろう。


「え、知り合い?」

「ああそうだ。逆に、知り合いじゃないのに家を知ってたらおかしいだろ?」

その行為は、ストーカーか何かでなければ出来ないだろう。

「う〜ん、確かに」

「今回の件の『協力者』と言った方が正しいな」

メガネの縁を押し上げて、語り始める。黙っていればそっくりなのに、喋り方一つで印象が180°変わった。


「そっちから協力を吹っかけてきたのにか」

「でも、私の協力がなければここまで行き着かなっただろ?」

「……」

「先生、こいつに何話しても無駄です」

「そうですマスター。ショッピングモールで星煌に会った時、T√との性格の差に驚いてたじゃないですか」

口論に関しては相手の方が上手だ。江汐と蒼穹は正論を言われた凜々を宥める。

無理にバトルを仕掛けるより、武力行使をした方が早いだろう。彼女が一人であった場合なら。


「協力者って、なんの?」


「お前たちが唯一気にしなかった『ドア』に関しての、な」


「『ドア』……俺と星煌が取り込まれた時のアレとか、星煌が連れ去られた時の……」

「さすが篠原。その通りだ」

軽く指パッチンをして、彼女は自身の才能を明かした。


「そのドアは、私が出したものだ」

時間を無視して、目的地まで瞬時に行きつけるもの。星煌達はその認識だ。

「そうなの!?」

「そうだぞ水凪」

先程からアホの子の様な反応しか見せない心。間違ってはいないが、こういった難しい話になるとそれがより顕著になる。


「……そうだったのか。てっきり、なにかのマジックかと」

「マジックでそんな芸当は…………、まあ出来るかもしれないが、少なくとも私は不可能だな」

一人……いや、二人ほど心当たりがT√にはあるが、別にどちらも親しい関係ではなかった。


「じゃあ、お前の『チャーム』か?」

諒が発言を繰り返す。彼が問い詰めてくれるため、他の人らはそれを傍聴するだけで情報を得れた。



「正解だ。私のチャーム『次元の扉』によって作られたものだ」


「簡単に言うと、()()()()()()()()()()()()()()ものだ」


『次元の扉』

ドアを触媒にすることで、別世界へのテレポートを可能にする。

何も無いところからドアを生えさせることもできるが、それには"鍵"を使った特定の動作が必要となる。

また、狙った世界に行けるとは限らない。一度ドアが記憶した所には何度でも行き来可能である。



「?それだと、今この世界は俺らがいた世界ではないことにならないか?」

諒はドアを"一度"しかくぐっていない。

江汐との戦闘時に連れ去られた、あの一回のみだ。


その扉を介して移動したのであれば、諒の今いる世界は元いた世界からズレていることになる。


「あぁ、目の付け所がいいな」

「一度しか入らなかったら他の世界線になってしまうが、もう一度入ったら元の世界線に戻るんだよ」

このドアも、入口と出口が存在する。

他の世界線からまた別の世界線へ行くのには、一度元の本線を経由しなければならない。


「つまり、お前が体験した時はドアを二個出てたってことだ」

「星煌が連れ去られた時も、ここの拠点に一つ。そしてその先の別世界線にもう一つだして元に戻してたんだよ」


先程、世界線がどこへ行くかは選べないと記述した。

が、これには"抜け道"が存在する。

ドアは原則、一度来た世界線はそのドア本体に記録される。

なら、それが記録された"瞬間"。その記憶を介して瞬時に出口のドアを出せば良い。T√本人が知らなくとも、そのドアが覚えているのだから。鍵をガチャガチャレバガチャすることにより、このバグを可能とさせている。

それにより、擬似的な瞬間移動を可能とさせていた。


連続して二つをくぐることにより、違和感なく目的地へとたどり着く。

「この技術を簡単に言うと、テレポートだな」


「あぁ、なるほどな。だいたい理解した」

諒は頭が良い。回転の速さや記憶力という意味もあるが、なにより情報の解析、飲み込みがとても高品質だ。


「僕は理解しないでいい?」

「私も」

「何を言ってるんだか」

「……まあ、別に知っててどうこうなる問題ではないからな」

対してこの三人。照井は半分話を聞いていないし、心はuniverse状態。星煌はそもそも理解しようとしていない。


「遠隔発動が可能でな。最初は江汐や樺澤が使ったように見えたろう」

「あぁ。凜々さんが使ってるのかと」

諒や心視点で見ると、T√が存在していた事は先まで知らなかった。自然と犯人が凜々達へと行き着くのはごく普通のことだ。


「僕は凜々ちゃんのチャーム知ってたけど……そこまで考えを回せてなかったな」

それもそうだ。彼の思考は常に芸術でいっぱいである。凜々と戦っていた時だってそうであった。


「そうだな。ついでに暴いてやる」

そして凜々が腕を組み、その親指をT√の方へ向けた。



「こいつが、()()()()()()()()()()


「……」

「は?」

場が沈黙へと陥る。



「チッ、バラされた……」


「、はあああああ!?」

「星煌うるさい」

「お前に言われたかないわ!」

「私は静かだろ……」

星煌が叫ぶ。血の繋がりのない関西弁がでてしまうほど。

自信を連れ去り、今もこの委員会が作られ、世界を危険な状況に陥れた元凶である穴が、まさか自分もどきが作っていたとは。信じ難い事実である。


「え、穴ってあの穴?」

これにはさすがの心も驚きを隠せない。むしろさっきまで喋っていた諒がフリーズし、心が問い詰めるという逆転の状態になっていた。

「あぁ。時空間調査委員会が対処してる、あの穴だ」


「はあ、バラされたなら、白状するしかない」

「さっき言ったよな?私のチャームは『他の世界にいける』と」


元気用は若干気まずそうに声のトーンを落とし、さらなる真実を口にした。

それは、本人でさえ気付くのに遅れたもの。

故に手遅れであり、どうしようも無いもの。


「あ〜なんだ……私が他の世界線に行き過ぎて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」


「……」

また、場が沈黙に支配された。


「は?馬鹿じゃん」

「馬鹿ではないが、申し訳ないとは思ってる」

星煌のその声色は、怒りというより理解不能を表していた。


「が、一度弱まってしまったバリアは強めることができないのでな、今後も辞めるつもりはないぞ」

「こいつ……」

でかい声でガッハッハと笑っても違和感がない態度だ。元凶らしく、魔王らしく……。



そして照井は、ある()()に気付くことになる。


過去を辿る。まず、"なぜ"時空間調査委員会が結成されたのか。



「……え?じゃあ時空間調査委員会で起こったあの事件、そもそもを辿ればT√ちゃんも悪いってこと?」

叶御が殺された事件。それが起こってしまった、そもそもの起源。

『なぜ穴が発生したのか』まで辿ると……


「あぁ。『真犯人』と言えよう」

先程と変わらず、堂々とした態度だ。

悪びれる気もなく、かと言って捕まるつもりもない。


「……」

「真犯人と協力してたの?凜々ちゃん……」

照井は思わず引いてしまう。いくら手段を選ばないと言え、状況次第では敵になりうる相手と協力するとは。


「だから、こいつから吹っかけて来たんだよ……最初はそれを明かされれてなかったし」

「お前たちの情報も、こいつから渡されたんだ。だからてっきり、潜入調査でもしてるのかと思ってたんだ」

「潜入どころか俺らは初対面だな……」

一瞬にして場が混沌にへと変わった。

明かされる衝撃の事実の数々に、星煌達は疲弊してばっかりだった。



だが彼女は、その中でもしっかりと計画を立てた。

「バレてしまったなら仕方ない。予定を早めるか」

「もう少し先で、明かす予定だったのだが、まあいい」

そう言って席を立つ。その足取りの目的地は、星煌の真隣であった。



「この異世界での物語の目標(ラスト)が、穴の解決だと思ったか?岸星煌」


「穴の正体を突き止め、ラスボスを倒すことが目標だと思っていただろう?」

「残念だが、それは間違いだ」


いつの日か見た硝子片が、またポケットから現れる。それを右手に取り、星煌へと押し付けた。


「つまり……もう、時空間調査なんでしている場合ではない。お前も、こいつらも」


左手に見えたのは、黒いランプだ。

決して明るくはなく、その場の全てを飲み込むような、ただ一つの暗がり。


「お前はこの世界を()()()()()()()()()んだ」


「っ、は!?」


辺りが暗くなる。それはあの日(Log_5)に見たような、真っ暗闇の森と同じ景色だった。

「ランプが光だけを生み出すなんて常識は通用しないぞ。これは、辺りを暗くする専用のランプだからな」

「最大四人まで取り込める。すごくお得だな」

「、それもアンタの『チャーム』?」

星煌が一つ後退りし、その奇妙な異物に存在を奪われる。


「いや?これはただの骨董品さ。チャームを二つ以上持つやつなんて存在しない」

そのランプを振り回した後、地面に置いた。扱いからして、それほど重要なものではないと星煌は考えた。


「昔、旅をしていたんだ。まあ今もしてるが……昔はより活発的にな。そこでの記念に色々と買ったんだよ」

「この世界、そんなものまで売ってるのか」

流石は異世界だ。自身の世界では見られないような素敵な物が……


「あ、すまん。これは他の世界のやつな」

「……そんなこったろうと思ったよ」


「はは。それにしても、驚かないんだな」

「確かに。危機感に欠けてるのは良くないが、適応力があるのはいい事だろ?」

そんな雑談を交わす。火種になる話題さえなければ、この二人はまともな会話が可能である。


だがこの二人が会話をする時は、大抵内容はまともではなかった。



「おさらいをしよう」

そうカッコつけて、T√が未来で語る予定だった話題を話そうとした時。



「いや、ちょっと待って」

星煌の一声によって止められた。

「えっと、こいつが犯人で、世界線を行き来できるチャームを持ってる……で、が……」

「……」

何やら一人でブツブツ言っている。思考をまとめているのか、考察をしてるのか。

T√はその間立ち尽くす。彼女と同じように、思考をしながら暇を潰した。



「よし、いいよ」

「……はぁ、じゃあ行くぞ」

それにより、テンポが非常に悪くなってしまった。少し変拍子になったが、すぐに戻そう。



「お前は常に、他の世界線を観測してる」

「それが、お前の目が常に光ってる理由。ここまでは覚えてるか?」

「……たぶん」

「まあ、今覚えてくれればいいさ」

数週間前に話したばっかであり、思い出そうと思えば日記でも使えば思い出せることだ。

( こいつ、才能が欲しいくせに自分のことには興味が無いのか? )

とんだ矛盾野郎だ。T√は内心ハッと笑って、会話を続けた。


「そして、それにより判明したお前の()()()()の能力」


「お前はそのおかげで、()()()()()()()()をしてしてる」

「失敗するのが怖いから。間違えたくない。ただ、『敷かれたレールの上を歩きたい』」

「そんな無意識下の選択によって、お前の間違いは無かったことになっている」

間違えたくないのなら、そもそも間違えなければいい。間違えが発生する状況を、作らなければ良い。


「『間違えのない選択』って……」

「そうだ。『ありふれた方の選択』をしている」

「どの世界線のお前もやる、『当たり前』の選択をな」


世界線、というものは。

二択を迫られた際、大抵の自分は同じ選択をする。

そいつが米が好きな性格であるとする。そいつの朝食にパンと米の選択を出せば、大抵のそいつは米を選択するだろう。


だが、その中でパンを選んだ、"変拍子"


この話を踏まえた上で、彼女の話をしよう。

星煌の"記憶力"が悪いのは、世界線の観測に脳のリソースをさいているから。

常に他の世界線を観測し、自信を重ねている。どの選択をすれば間違いではないのかでさえ常に『選択』をして。



そしてその、"変拍子"

どこかの世界で『強く違う』ことが起きるとする。それが世界線の何千分の一であれ、何万分の十であれ。


そしてこの星煌自身が選んだ選択が全ての世界線含め『多数派』だったのであれば、星煌はそれを()()()()と認識する。


歴史の分岐点。重要な時、それは起こる。

彼女はまだありふれた選択をしてるが故に、デジャヴに陥ってるだけ。

『前にもこんなことが』ではなく『今こんなことがあったんだな』の方が彼女的には正しいな。


「私は、お前が『特別になる方法』を知っている」

「は?」

突飛した発言に星煌は豆鉄砲を喰らう。


「デジャヴってのが分岐点ってのは話したよな?お前の特別には、それが関わっている」

先程記述した、それ。その、異質なデジャヴ。


「そ、それはどう「先に言っておく。これはただの推測だ。期待はするな」……チッ」

星煌に特大舌打ちをされたが、T√は気にしなかった。それがT√にではなく、自分自身に向けたものだと知っていたから。



「だが、それを"いつ、なにを、どこで、どうやってやる"のか……特別になるやり方ってのは、私には分からない。なぜならそれは、『未来』に関するからだ」


T√は次元を超えうる存在だ。その気になればその画面の中へも行けるし、超越した神の次元にだって行ける。

だが彼女が行けるのは、どう頑張っても"現在"だけ。

「だからお前が特別になるには、『観測』をするしかないってことだ」

ここで出てきた、星煌のチャーム。

それは現在、そして未来をその目で記録できるもの。

だから世界に頼ることなく、自身でその特別を掴み取らなければならない。



「……まあ、せいぜい頑張れよ、私」

T√そう言って会話を辞めてしまった。続きをなんと言おうとしたのだろうか。

星煌には分からなかった。なんせ、数多の情報量で頭がいっぱいだったから。



「んな事はいいんだよ。いや良くないけど。ていうかさ」

星煌は日記を手に取り、過去のページを遡る。

「こんな仲良さげに書いてるし、家族だなんて言ってるけど、多分まだそんなに仲良くないよ?だって一ヶ月経ったくらいだし」

「……」

盲点だった。T√視点では彼女達は十分仲の良い家族に見えたが、そうではないらしい。

「まあ、それは受け取り方次第だな」

「誇張すんなちゃんと段位踏め」


まあそれでも、この件で確実に距離は縮まっただろう。T√はそう考え、今度はしっかり校正にも聞くようにとメモをとった。

まあ、嘘がテーマであった本章では、むしろ丁度良いのかもしれない。




「じゃ、返すよ」

「最後に何かある?」

「……特に。特別のなり方も分からないやつに聞くことはないよ」

星煌はやっと開放されると伸びをして、自身へと悪態をつく。

「そうか。じゃあこっちからあと一つだけ」

「『観測』に副作用なんてもん存在しないから、もっと使えよ」

チャームには直接的な副作用は存在しない。内容にもよるが、自身にデメリットがあるチャームはT√してんだと見たことがない。


「……そんなバンバン使っていいの?」

星煌は諒の発言を思い出す。『チャームを使いすぎたやつはその才能に溺れてウンタラカンタラ……』と言っていたこと。

「逆に使いたくないのか?」

「……」

それを相手は暴論で返してきた。星煌にとっては正論でもあろう。



「じゃ、頑張ってね。救世主ちゃん」

「そもそも、最初に言ってた世界を救うって何を……」

「さあ。適当に言っただけで、私もよくわかってないよ」

星煌はまた舌打ちが出そうになって、それを必死に抑えた。


「だが……」

「このまま行けば、お前は特別にはなれない」

ありふれた選択をするだけじゃ、ただの一般人止まりである。


「いや……特別だと、『自覚』ができない」

彼女に足りないのは、見ての通り自己愛だった。

「お前はきっと世界を、友を救える存在になる。そのまま行くだけでもな」

彼女にはその才能がある。カリスマや強さではない。一般人だからこそ、そこまでのし上がれる。


「だが、どう頑張ろうと自分は救えない」


「『全ての自分』と向き合え。逃げるな」

「その果てに自分を救えたら、『特別』になれるかもな」



星煌が言葉を掛ける暇もなく、その闇は元あったランプの中へと収まった。

「あ、戻ってきた」

「びっくりしましたよ。突然黒い光が出たかと思ったら……」「すまんな。ちょっとしたお話だ」

「……会話でそんな不機嫌になること、あるの?」

星煌の顔を見た心が一言。今までに見たことがない、そして形容しがたい顔をしていた。

「はは、人によってはあるかもな。自己嫌悪ってやつだ、気にするだけ無駄だよ」

T√がいない間に再び入れられていた茶を飲んで、心に向かってニヤリと笑った。



「じゃ、帰ろうかな」

「……結局何がしたかったの」

「自己紹介が出来れば良かったからね。顔と名前だけ覚えてくれれば上出来だ」

( いやお前が真犯人なのが衝撃すぎて誰も忘れられないよ )

星煌と諒は同じことを思った。むしろ名前以上に覚えやすいことだ。


「『Tルート』でしょ?覚えたよ、ルート!!」

心はT√の手を取り、ブンブンと握手を交わす。彼女と仲良くなることは、前に心が決めたことだった。

「お、おう……その呼ばれ方は初めてだな」

「それいいな。俺もルートって呼ぶか」

「じゃあ僕もルートちゃんって呼ぼっかな」

隙を逃さず諒と照井も便乗する。それにT√は少しだけ頬を引き攣らせた。


「まあ、呼び名にこだわりはないから、別にいいが……はは、面白いな」

「ほんと?ありがと!」

「っ、調子が狂うな……」

T√は思った。きっと彼女は皮肉やお世辞が通用しないタイプの人間だと。コレ近い人物が身近にいるからわかる。

「ふむ、T√の天敵は、水凪心である……」

「やめろ樺澤。メモを取るな」


「はぁ、早く帰ろう」

そう言って席を立つ。その足は星煌の方ではなく、玄関へと向かった。


「じゃあな、皆様方」

「また、次の分岐点で会おうじゃないか」


そう言って彼女は去っていった。ドアを、軽く開けて。

これから、何が起こるのか。

それは誰にも分からない。未来を観測できる、星煌であっても。


その選択一つで、未来は簡単に変えられる。




じゃあ、()()は?



スポットライトが当たる。

次のタイトルは、彼だ。





序章 二

『その言葉に含まれる真実と、全てを包む狂気的な嘘について』


『TRUE END』


NEXT


前章 『元復讐者と、人生を変えるその選択について』


一章 『何もない、起きやしない日常の大切さについて』

記録 : 記入 星煌


祝!序章完結

まず、ここまで読んでくださってありがとうございます。

楽しみにしててください。次は面白いと思いますよ(当社比)

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