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無題/日記  作者: 岸 星煌
序章 一『とある日の運命と無数の世界線の始まりについて』
2/21

Log_1

『特別』とは?

人が持ちうる才であり、世界に一握りしかいない、天才。


或いは、天文学的確率で持ち合わせた、どうしようもない()()


そして彼女は知っている。

自身が、『普通』だということを。

彼女はどちらも持ち合わせてなかっただけ。

天才でもなく、馬鹿でもない。正しくもないし、間違いでもない。

まさにそれは()()だった。


"普通"であることが、どれだけ素晴らしいことか。


だが、認めてはいない。

彼女はそれを『不幸』と言い張り、その幸運を一生背負う枷として捉えている。


彼女は、救いようがないほどの『凡人』だ。


「私、岸 星煌(キシ セイカ)は、普通の公立高校学校に通う、ただの一般人''だった''」

きっと書き出しは、そうなるだろう。



そしてただの、プロローグ_│




――2025年 5月中旬 回想


「いってきます」


いつものあいさつを言う。

玄関のドアノブに手を添え、ドアを開く。「いってらっしゃい」なんて返事は無い。


外は快晴。青い空に輝く太陽が肌をじりじりと焼く。確か気温は二十……いくつか。

二日振りに出た外は、自信が運動不足だということを痛感させてくれた。まあ、5月にしてはやけに暑かったが。


コンクリートの道は最近整備されて、歩きやすくなっていた。いつもなら電動自転車だ。だが、昨夜充電するのを忘れていた。

そのことを後悔しながら、歩き出す。



そんなつまらない事を、ただ頭で考えて、終わり。

考えるのは好きだし、喋るのも好きだった。



……


※「岸星煌という人物に対しての偏見。解釈。あるいは感想について考えよう」というメモが貼ってある。



昔から、私は"天才"に憧れていた。

天才といってもその形は様々だ。


例えば、色んな部門で活躍するオールラウンダー。なんでもできて、不得意な事なんて無い。

それか、一つの分野に特化している人。

運動神経がずば抜けて高く、昔から動くのが大好きな未来のオリンピック選手。

頭が良い。その頭で世界を動かし、新たな常識をつくる者。


そうだ。その能力に才を持って生まれた、輝く瞳を持った人間に憧れていた。"天才"に。



なぜ、特別に憧れるのか?

なぜ、私はそれを見ることしか、憧れることしか出来ない?


簡単だ。私は、『努力』が出来なかった。

呆れるほど、『怠惰』であるのだ。

何かを頑張ろうとすると、手が、体が、脳が動かなくなる。

努力という行為に拒否反応が出ているのだ。


そんな、周りから叩かれそうな現象に陥っている原因は明らかだった。

そもそも勉強が不得意だった。点が取れない訳では無いが、新しい事を頭に入れたくなかった。


昔、学校であまりに勉強がしたくなさすぎて、"テスト直前まで勉強せず"に期末試験に挑んだことがある。

点数が落ちても良かった。そしたら自分が今までした努力が証明出来るから。

『あぁ、やっぱり勉強は大事だな』って、『努力は大事だな』と納得して、頑張れるから。


そしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


自分でも驚いた。

今まで散々努力して取った"平均"が、『何もしなくても』取れるのだから。

その時の感情は絶望、というより失望の方が正しいだろう。

なんせ、生物の点数が上がっていたからね!

私はそれをズタズタに引き裂いて、シュレッダーに掛け、すり潰して……そして、ゴミ箱の中へと入れた。


そんなことが過去にあった。

だから、努力をやめた。

いや、やろうとしても出来なかった。一種のトラウマとも言えよう。

努力しない方が、苦しくないから。大金を稼げなくとも、生きてさえいれば良かったから。

目を瞑って、海へと沈んだ。それはとても深くて、誰の手も届かなかった。


そして、人間は欲深い、どうしようもないほど汚い生き物だ。

私は自己嫌悪に陥った。

"努力できない自分"を呪った。お前は生きていくに値しないと、マイナス評価をつけた。

努力なんてしもしないくせに、"特別になりたい自分"があった。

どう頑張っても特別には届かないことを痛感した私は、

自分を客観視して、

それを見捨てた。


占いが好きだった。なぜなら、日によって"特別"になれるから。

幸福が逃げてもいい、と思いため息をついた。まだ学校まで道のりは遠い。誰一人いない、木に囲まれた暗い道を歩くのはそれほど好きではなかった。


……


今までのはただの"前座"だ。『岸 星煌』がどんな人物であり、どれほど普通かを知るための。



天才。それは氷山の一角でしかない。


もっと詳しく潜るなら、"特別"だ。特別ならなんでも良かった。


『生まれてからずっと左利き、ますかけ線が両手にある、髪に茶が混ざって茶髪に見える。背が高い。親が社長でお金持ち。二重で目がくっきりしてる。手の指が細い。声が通りやすい。足が細い。記憶力が良い……』

……これ以上はやめよう。それをあげたらキリがない。

本当に、些細なことで良かったのだ。それすら持っていないのだから。

私は何も持ってなく、失われた同時に全てを持っている『普通の人間』だったから。


まあ、何が言いたいのかというと。

私はただ、天才になりたかった。一般人ではなく、個として見られるような。


それだけなら、岸星煌は特別に憧れたただの一般人、とピリオドを付けれた。



だが、彼女は違う。その憧れは、()()と呼ぶにふさわしい所まで来てしまっていた。


……特別が"前向き"でなくとも良い。

私は、生まれながらに足が不自由な人を、『可哀想』と思える。できる限り"支えて"あげたいと、行動もできる。


そして、心の底から『変わってあげたい』とも思う。

その感情は、『可哀想』だから?

少し違う。


そうだ。酷く『()()()()』と思うから。その精神状態が、手の無いからだが、失われた視界全てが。


代わってあげたい。それは他人を支え続けてあげられるような慈愛の精神ではない。()()()()()()()から来る妬みだ。

肺が悪いなら臓器を移植し、身体が悪いならその病を代わりに背負い、目が見えないのなら私の眼球を差し出したかった。


だって、そうすれば私も、『特別』に『普通の人とは違う』って、言われるし。

どんな目で見られようと、自信が特別であると自覚できたら良かった。


( そうすれば私も、…… )

脳内会話を続ける。

答えは帰ってこない。

当然だ。脳内にいる私に、その答えを知っているものはいなかったから。


それが岸星煌の人物像だ。

天才に憧れる、ただの平均以下。

自分を客観視できるのに、自身のことはイマイチ分からない。

その思考は矛盾だらけの、『一般人』


死にたいなんて感情を抱えているのは、私だけではなかったから。

結局みんなそう思ってて、そっちの方が普通だって。

どんな選択も、世間とっては普通で。



そんな光に目を焼かれて、何も見えなくて目を被った。

暗闇の中、下ばかり向いて歩いてる人生だったから、''空の異変''なんかにも気づかなくてさ


――瞬間、世界が変わる。


「……?」


プロローグが強制的に中断される。

大きな、いや、実際は小さかったかもしれないけど、確かに音を立て、『ソレ』は現れた。

「……なにあれ」

私は小さく呟いた。


気配も、正気も生きてる雰囲気も何も無い。

何処から来たのか知らない、知るはずとも無い、とても人とは思えないナニカ。

腕、足、顔、構成するパーツは全て人間のそれだ。なのに、手首関節が180°逆に折れていていた。目の焦点はバラバラで、それが余計に不気味さを演出させた。


けど、確かにソレはこちらを補足していて、一歩、確実に地面に足を踏みつけて歩いてくる。足取りは重く、鈍い。


本能が感じる。一歩ずつ近ずいて来るのは、人ではなく''死''だと。

だから逃げた。近づいて来る死が怖かったから。

怖いと思いながらも、私は普通を保っていた。

足が竦んで動けないのが定番だけど、(案外そんな事ないんだな)だなんて考えてた。

(走るのは苦手だけど、まだ家出て数分だから、来た道を戻って家に帰れば良いか)

あぁ、自転車があったらどんだけ楽だっただろう。

そもそも、この事態にも遭遇してなかったのでは……なんて、考えても仕方がない。


多分ここでは、冷静な判断が求められる。

とりあえず重たいカバンを捨てて、相手の反応を見る。相手はこちらへ歩いて来ている。

近くに木を丸ごと抜こうとしているのか、力を込めてそれ抜き始めた。小さな身体にそんな力があるのかは知らないが。


目は見えているのか、不思議だった。

音に反応しているのか?とも思ったが、ゾンビ的な何かだと仮定したら、それなNoといえる。

あと気になることといえば、空に浮かんでいる不思議な…………


「なに、あれ」


思わず足を止めてしまう。あんな"黒い穴"、いや、なんだ?あれは本当に……



空に浮かぶ不自然で異質な黒い穴。空が青くて澄んでいるせいで、はっきりと目に映る。

今、やっと理解した。恐らく''ソレ''はこの穴から来て、こうして、この世界に来ているということ。いや、消去法でそうとしか考えられない。


穴では無く目なのでは?それとも変形可能?なんて考察が思考の邪魔をするが、今はそんなことを考えている暇がない。


ー音と共に、だんだん近づいてくる。

先程とは違く、その目は、はっきりとこちらを捉えている。

いつの間にか相手は木を一本丸ごと抱え、こちらへ攻撃を仕掛けてくる。


「努力が嫌いだった。できることなら、受験なんかする前に、さっさと死んで、楽になりたかった」


誰にも言えることなく終わった、過去の独白が流れ込んでくる。

( 走馬灯ってのは、傷が深い時に流れ込むんじゃないのか? )


相手がその大きな木を振りかぶるのを見た。やはり人ならざるものは、力が強いのだろう。

たとえ致命傷には至らないとしても、人間にとっては相当痛いものである。

近づく死の感覚と共に、後ろに倒れ込み、ゆっくりと目を閉じた。

それは、諦めとも言えた。

無理だと感じたら、それ以上の努力はしない。それが彼女の精神だ。

世界が黒に染まる。



__Log より 一部抜粋


『だからあの時、星煌が無事で、本当に良かったんだ』___



「コラーー!!!!」

その声と共に、世界が色付いていく。

目を開けて感じたのが、音。さっきと違って、確実に大きい、いや、大きすぎる音。

次に見たのが、割れる地面。吹き荒れる木々、そして、剣を持った人が1人。

その人に(多分)倒されている、ソレ。


完膚無きまでに潰されてる。グロい光景を見て出た感想は特にないが、折れ曲がった足も散らばった目も、もう動いていなかった。

呆然としてたら、その人がこちらに気づいた。


「あ、生きてる!?」


……どうやら、死んでいたと思われていたらしい。大の字で倒れていたからかな。


「あ、はい一応…」

そう言って、倒れてた体を持ち上げる。強く打ち付けたせいで、背中が痛い。


「いや〜倒れてたから死んでるのかと思った!ごめんごめん!」

あははと笑いながら近づいてくる、少しテンションの高い、長髪ポニーテールので愛い女の子。前髪は切りそろえ、左前で三つ編みをしている。制服らしき物を着てるので、おそらく学生。

左腕には腕章をがついているが、文字がよく読めない。


「大丈夫?」

わざわざ伸ばしてくれた手に「ありがとうございます」と返し、起き上がる。


「初めまして!私の名前は水凪 心(ミナギ ココロ)貴方の名前は?」

「初めまして。岸 星煌(キシ セイカ)です」

「せいか!いい名前!」

目がキラキラしてる。こんなんじゃ、本当にアニメの世界みたいだ。


「いや〜ごめんね?急に。何が起こってるのかわかんなかったでしょ」

「えぇ、そうですね…」

(ホントだよ…)

何が何だか理解出来ていないし、内心は冷や汗ダラダラだし、心臓がバクバクしてる。普通にソレを殺った勢いで殺されるかと思ったし。


そんなことを思っていたら急に距離を詰められ


「で、さ」

顔は笑ってるけど、表情は真剣。先程とは明らかに雰囲気が違う。

こちらも思わず表情が硬くなる。


「これ、私達のミスも…まあ、あるけど、でも、目撃者に君はなっちゃったんだよね」

ふむ、証拠隠滅か?先程思ったことがこう現実になるのは少々早すぎる気もするが。

まあ、どう考えても相手には勝てない。力の差が現れてすぎている。地面抉る程の怪物とまともに戦えるわけない。

「ええっと、だからさ…」

手をもじもじさせて、申し訳なさそうな顔をしながら頼み込んでくる。


「一緒に、着いてきてくれないかな〜って…」

驚いた。思っていた事とは違う言葉に、思わず頭に星が落ちる。

「あぁ、はぁ、良いですよ……」

どこについて行くのかも聞き忘れるほどには、ね。

でも、相手からしたらその返事は良好であったようで。

「ほ、ほんとに!?」

目を輝かせながら手を握ってくる。

「やった〜!!丁度人手が…………」

「嬉しい〜!」

そのまま腕を上下にブンブン振り始める。

これは一種の筋トレ法なのかと疑うくらいに、勢いが凄かった。


「ところで、ついて行くとは言ったんですが」

「ん?」

そう、肝心な事を聞いてなかった。

「どこに、なにで行くんですか?」

移動方法と、目的地である。

肝心な心さんが来る時に目を瞑っていた為、何も見えなかったのである。

「あの穴に~」

「はい」

まあ想定通りである

「飛んで行く!」


「…?」

「そして私たちの世界に行く!」

「……ありがとうございます」


どうやら飛ぶらしい。飛ぶ?それは鳥のように羽ばたいて?それとも擬似的に?結構な距離があったと思うが。

そうなると問題なのが、まず高いところが苦手。そして降りる時の位置。

高いところから落ちるのは、どうしても苦痛だ。それは絶叫系が苦手だからである。まあ、普通の人間だから仕方の無いことだ。



「よ~し、しっかり捕まってね!」

気づいたらもう目的地の真下に着いていたし、いつの間にやらお姫様抱っこされていた。行動が速い。思考する暇がない位には。

上を見ると、やはり空高くに浮かんでいた、黒。

だがもう何かを考える隙すら与えずに、

「行くよ〜!!」

返事をしようと口を開いた次の瞬間。


私の体は、背景の空に映えるように、まるで映画のポスターのように、浮いていた。



記録 記入:星煌




side __/視線

――同時刻、?にて


「あいつおっせーな…」

辺りに散らばった敵と青い空、そしていつまでも閉じることの無い穴が、それを意味している。


水凪があっちに行ってから、早30分。

「あっちのやつ!飛び込んで殺ってくる!!」なんて言って、そもそも移動できるかも知らんのに、駆け出して。あいつなら、そこら辺の雑魚敵一体ちょちょいのちょいなのに、なにをしてるのやら。

いつも通り委員会の仕事をこなしていただけだった。


ただ、ちょっと量が多く、二人では捌ききれなかったのだ。

だから、二つ目に出てきた穴に入った個体がいたから、帰るのか?と思っていたが……そうしたら、一人になっちまったって訳だ。出入り仕様だろ。普通。


……まあ、目を離した俺も悪かった。

穴が二個同時に開くなんてこと、今まで無かったから、

穴から出た敵が、別の穴に入ったらどうなるのかなんて、考えたことはあってもどうなるのかなんて知らなかったし。

(今回でどうなるのかは判ったか……)

そんな仮定ばっかの考察をしながら、律儀に待っていた。まだ暑さが本格化する前で良かったと、心底思う。

これで真夏だったら汗びっしょりで流石に帰っていた。当たり前だ。

あいつ(先生)も来ないから、俺が迎えにでも行ってやろうかと考えていた時、盛大な音を立ててそれが来た。

上から降ってくるのは、見慣れた姿と……

……知らない人。


「ただいまー!!」

周囲に豪快な音を撒き散らしながら、派手に着地。オマケに声もでかい。

「いやぁ〜聞いてよ実はさ〜……」

なんて呑気に話し始めるから俺は思わず

「お前、帰ってる来るのが遅い!」「ぞ!!」

頭にドスン、と1発ぶち込む。


「いったぁ~い!」

なんて思ってても思ってもなさそうな顔と声で心は答える。

はぁ、と、短く息を吐く。既に疲労感はMAXだった。

これはまた、面倒くさそうなことだな…と、抱え込まれてる奴をみて思う。

「…おかえり。で、誰?そいつ」

「拾った!!!」

と、大人も騙せる純粋な顔でそいつは答える。

「……生きてます」


……ここからだった、始まりは。

非常に不服だが、俺の人生はここから変わった。



記録:__

記入:星

はじめまして。

実質これがプロローグです。一話が長く、昔に書いたものなので字も拙く読みにくいと思います。すみません。

入りも弱いし面白くなるのはだいぶ後ですが……まあ気になったら続きも読んでください。読んでくれてありがとうございました。


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