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無題/日記  作者: 岸 星煌
序章 『とある日の運命と無数の世界線の始まりについて』
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1/36

Log_0

ここは、いくつもの才能が蔓延る世界。

およそ三十年ほど前から、それは輝きを持って生まれた。


始まりの日。突如として、各地から報告が出たのだ。

『うちの子が空を飛んだ』『目から光が出て眩しい』『足だけが異様に長くなった』など。その種類は多種多様だ。

子供だけではない。その時生きていた大人も、突如として異様な才能がその目に宿った。


その報告を受けた政府は、すぐに調査を開始した。その才能を持つ人を調べ、検査し、徹底的に。

だが、その十年で得られた物は少なかった。今はまだ"調査中"とだけ言い放って、実際は何もしていなかったのである。


彼らが成し遂げたことは、その才能を『チャーム』と呼称することだけ。

それによる虐待も、差別も何も解決させないまま。



でも、ある一人の人物が突如として頂点へと立った。

今では『指導者』と呼ばれるその人物。

彼女は日本の体制を変えた。各地に『連盟』と『委員会』を作り、才能を持つ者が生きやすい世の中を作った。


彼女はこの世界を救った英雄だ。間違いない。



そうだ。()()()()()()のだ。

たとえ"どんな手を使おう"と、彼女は世界を平和にする。そう誓った。


……


人は時代を超えて、最高の知識を得る。

例えば、その才能で勝者の頂きに立つとか。


そして、その過程で色んな物を失う。逆に得たりもするが、それが出来るのはごく一部の人間だ。


その知識とは何か。それは人によって違う。


今回はそれが、()()という曖昧なものだっただけ。


彼等は得たのだ。『正義とはなにか』

その光の外側を目指すには、何が必要だったのかを。


これはそんな到達地点に至るまでの、物語(日記)

才能が溢れる摩訶不思議な世界にやってきた、とある『異世界人』の。




Log___より 一部抜粋



「それでも結局、私は何も変わらなかった」

「そうでしょ?」

硝子片は鏡に向かって静かに問いかける。

その思考がどのような塊で出来ているのか、鏡には分からなかった。


「……そうかもしれないな」

暗い空間で自問自答を繰り返す。

性格は真反対な二人。世界線とは面白いものだ。こんなに似ていない二人の名前が同じなんて、██に言ったら笑われるだろう。

鏡はそう思って、重い質問を軽く受け止めた。


鏡が分岐点(衝撃)で割れた先の、ただの一部分。もしもの世界。

全ての世界の一でしかない、たったちっぽけで小さな存在。

硝子片にはそれが全てであった。その思考が、名前が存在が……価値を証明できなくとも、それは彼女を象徴するものになった。



「でも、救世主。その代価こそが、お前にとっての特別だったんだ」

全ての鏡である少女は答えを残す。全ての世界を覗き見る彼女であっても、その答えを知りえない。

彼女もまた、それを追い求めているから。


硝子片ただの一部分でしかなく、"だからこそ"出来た選択。

それは他の誰にもない『特別』であることを、彼女は自覚していないようだ。


「わかってるだろ?自分でも」

鏡は呆れたように口にした。

それを自分でも分かっているくせに認めないのは、硝子片の悪い所だった。

よく言えば、諦めが悪いというとこか。

……"誤魔化しが上手い"の方が彼女の性格としては正しいか。


「……そうだね」

硝子片は小さく頷く。

その表情から読み取れるのは、彼女は納得はしていないということ。理解はしている。だが、意地でもそれを認めたくないのだ。

その自己嫌悪は、彼女が明かしてる内、数少ない"分かりやすい性格"の内一つであった。



……



かくして、最後のページの一つの会話が終了する。

これは、主人公が『特別』が特別を目指す、在り来りな物語(日記)の一冊である。




log___より


結局こうなった。

正義とは人によって違うもの。それに意義なんて、私は求めない。

ただ、そこにあるだけで、人は盲信してしまうのだから。

正義を過信して、見誤って、落ちて……戻れないところまで来てしまう。


だから、『本当の正義』なんて決めない方が良い。


私はそう思っていたから、暗闇に深く、奥底まで落ちていく手を取る。

その手は血だらけで救いようがなかったが、拭き取るくらいなら私にもできた。


「やっぱり私は、正しくも善でも優しくも……何でも無いよ」

正義なんて、知らない。

私は、私が正しいと思う『選択』をするだけ。


そう言って硝子片は、特別(才能)の象徴である輝く瞳を写し出した。




Log_2より抜粋


……


これは、私 岸 星煌(キシ セイカ)が体験した、

今のところ、八割が非現実的で、二割が現実的な。


ただの日記。あるいは遺書である。



記録 記入:星煌

序章 テーマ

『普通』『才能』『穴』

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― 新着の感想 ―
『無題/日記』読ませていただきました。 「特別になりたかった」「平凡から抜け出したかった」という主人公の想いから始まる書き出しが印象的でした。 空に開いた穴によって平行世界へ飛ばされ、チャームという異…
Xの企画から来ました。 断片的なログ形式と伏せ字が謎めいていて、世界の輪郭を想像しながら読むのが楽しかったです。硝子片と鏡の対話、噛み合っているようですれ違っている感じが良いですね。「本当の正義なんて…
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