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無題/日記  作者: 星煌
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Log_Prolog

私、岸 星煌は、普通の公立高校学校に通う、ただの一般人、''だった''。


ーー2024年 6月中旬 回想

「いってきます」

いつもの決まり文句を言い、玄関のドアノブに手を添え、ドアを開く。「いってらっしゃい」なんて返事は無い。

外は快晴。青い空に輝く太陽が肌をじりじりと焼く。確か気温は二十……いくつか。

久しぶりに出た外は、6月にしてはやけに暑く、体が重くなるのを感じる、運動不足なこの体が嫌いだ。まあ、動かない自分が悪いのだけれども。

鍵を閉めたのを確認したら、もうあとは学校までの道のりをただ歩くだけ。

返事もないし、人も居ない。ここら辺は田舎だからそもそもの人口が少ないのである。

そんなつまらない事を、ただ頭で考えて、終わり。


いつの日だっただろうか、人生の生きる意味を無くした時、全てがどうでも良くなった。

別に、虐められたとか、親から見放されたとか、そういう訳では無い。むしろ愛されていた方だと思う。

自分が出来たことなんて、他者からしたらどうでも良くて。何かやろうとを努力したって、結局天才には及ばなくて。

一番になんかなれやしなくて。努力の仕方も、過程も何もかも中途半端で、何も出来なくて。

なら、何も出来ないのなら、しなくていいじゃない。

何にも何もやる気が湧かなくなって、全てが面倒くさかった。

そんな事を思い始めたのが去年の頭。そこから学校にだんだんと行かなくなり、サボり癖がついて、そのまま半分不登校。学校なんて、週に3回行けばいい方だった。

まあ、眩しいかったから。他人が、上が。だから下を向いた。

そんな下ばかり向いて歩いてる人生だったから、''空の異変''なんかにも気づかなくてさ


ーー瞬間、世界が変わる。

大きな、いや、実際は小さかったかもしれないけど、確かに音を立て、''ソレ''は現れた。

気配も、正気も生きてる雰囲気も何も無い。

何処から来たのか知らない、とても人とは思えないナニカ。

腕、足、顔、構成するパーツは全て人間のそれなのに、目の焦点は合わなくて、手首関節が180°逆に折れていていた。

けど、確かに''ソレ''はこちらを補足していて、1歩、確実に地面に足を踏みつけて歩いてくる。足取りは重く、鈍い。

本能が感じる。1歩ずつ近ずいて来るのは、人ではなく''死''だと。

だから逃げた。近づいて来る''死''が怖かったから。

怖いと思いながらも、内心『足が竦んで動けないのが定番だけど、案外そんな事ないんやな』なんて考えてた。

『走るのは苦手だけど、まだ家出て数分だから、来た道を戻って家に帰れば良いか』

とりあえず重たいカバンを捨てて、相手の反応を見る。相手はこちらへ歩いて来ている。『目が見えるかどうか知らんけど、音で判断してるんか?』

その考えを元に、1回止まって、そこら辺にあった石を、相手の後ろの方へ投げた。相手との距離は大体一軒家1.5個分。

昔から球技は苦手だったけど、腕が取れる勢いで投げた。

コツン、音は小さいけど、相手は反応した。

意外と冷静な脳で考えた作戦はアタリだった。取り敢えず止まって石投げとけば、相手はそっちに反応する。

『……ただ、このままじゃ解決にはならん。』私が走り出したらきっと、相手も追ってくる。

こちらの攻撃手段はなし。そもそも相手が敵対してんのか、HPはどの位なのか、測る算段もなし。ゲームでもなかったから。

携帯はあるが、連絡取れる人はこの時間帯にいない。

電話は…おそらく声でバレてしまう。

加えて住宅街も無いただの道やから、人も多分来ない。

ほぼ詰みだった。最悪、全て捨てる勢いで走って帰れば助かるかもしらんけど、普通に無理や、体力的に。

『くそ、もう少し運動しとけばよかった……』

石の数も限られてるから、ずっと投げてはいられない。

どうしよう、と、焦りが思考を鈍くさせる。

太陽の暑さで汗出てくる。服に滲んで、次第に呼吸が荒くなる。

『死にたいとは思ってたけど、流石にこんな死に方はダサいし、負けた気分になるから嫌だな……』

周囲を見る。付近には鞄、石、沢山の木々。後ろは坂道で、その後ろにはまた坂道。

相手の近くには、何もなし。

打開できそうな物は、無い。強いてゆうなら鞄を投げつける。それ位の時間稼ぎしか出来ない。

あとは、空に浮かんでいる不思議な…………

「なに、あれ」

『あ、やば声出しちゃった。』

相手が声に反応する。

いや、声にも出るって、あんな黒い穴、いや、なんだ?あれは本当に…

空に浮かぶ不自然な黒い穴。空が青くて澄んでいるせいで、はっきりと目に映る。

今、やっと理解した。恐らく''ソレ''はこの穴から来て、こうして、この世界に来ているということ。

穴がまだ開いてるということは、恐らく、これから増援が来るということ。そしてこいつは、恐らく警戒の為に落とされた、1匹目。まあ、そんなことを操作する人も、機械も、あるのか知らないけど。

ー音と共に、だんだん近づいてくる。

先程とは違く、その目は、はっきりとこちらを捉えている。

『流石に、無理か。』

近づく死の感覚と共に、後ろに倒れ込み、ゆっくりと目を閉じた。

世界が黒に染まる。


ーLog2より 抜粋

『ーーだから、この出会いはきっと、言葉で表すのなら''運命''、だと思うんだ。』


「コラーー!!!!」

その声と共に、世界が色付いていく

目を開けて感じたのが、音。さっきと違って、確実に大きい、いや、大きすぎる音。

次に見たのが、割れる地面。吹き荒れる木々、そして、武装している人が1人。

その人に(多分)倒されている、''ソレ''

完膚無きまでに潰されてる。出た感想は、痛そう。

折れ曲がった足は、もう動いていなかった。

呆然としてたら、その人がこちらに気づいた。

「あ、生きてる!?」

……どうやら、死んでいたと思われていたらしい。

「あ、はい一応…」

「いや〜倒れてたから死んでるのかと思った!ごめんごめん!」

あははと笑いながら近づいてくる、少しテンションの高い、長髪で可愛い女の子。制服らしき物を着てるので、おそらく学生。

「大丈夫?」

わざわざ伸ばしてくれた手に「ありがとうございます」と返し、起き上がる。

「初めまして!私の名前は水凪 心(ミナギ ココロ)貴方の名前は?」

「初めまして。岸 星煌(キシ セイカ)です。」

「星煌!いい名前!」

目がキラキラしてる。本当にアニメみたいだ。

「いや〜ごめんね?急に。何が起こってるのかわかんなかったでしょ」

「えぇ、そうですね…」

『ホントだよ…』

何が何だか理解出来ていないし、内心は冷や汗ダラダラだし、心臓がバクバクしてる。普通にアイツ殺った勢いで殺されるかと思ったし。

そんなことを思っていたら急に距離を詰められ

「で、さ」

相手の目が鋭くなった。

顔は笑ってるけど、表情は真剣。先程とは明らかに雰囲気が違う。

こちらも思わず表情が硬くなる。

「これ、私達のミスも…まあ、あるけど、でも、目撃者に君はなっちゃったんだよね」

あ、やばいこれ証拠隠滅で殺られるか?

どう考えても相手には勝てない。力の差が現れて過ぎている。地面抉る程の怪物とまともに戦えるわけない。

そんなことを考えていたら

「…ああ!」

心縁さんが驚いたように声を上げる。思わずこちらも肩がはねる。

「いや、ごめん殺すとかそんな事じゃないよ!?ごめん!怖い顔しないで!」

あわあわしながら言ってくる。どうやら誤解だったようだ。……まあ、嘘かもしれないけど

「あ、はい…こちらこそすみません。」

手をブンブン音が聞こえる位の勢いで横に振っている。…そんな顔が怖かったのだろうか。

「ええっと、だからさ…」

手をもじもじさせて、申し訳なさそうな顔をしながら頼み込んでくる。

「一緒に、着いてきてくれないかな〜って…」

まあ、おそらくそうだろうとは思っていたが。

「あぁ、はぁ、良いですよ……」

思ってたんと違うし、随分あっさりした返事だな、ってセルフツッコミする位には落ち着いてた。

でも、相手からしたらその返事は良好であったようで

「ほ、ほんとに!?」

目を輝かせながら手を握ってくる。

「やった〜!!丁度人手が…………」

「嬉しい〜!」

なんか変な言葉が聞こえたような気がする…が、そんな事よりも大事な事が私にはあった。

「あの、一つだけお願いしたいんですけど」

「ん?全然良いよ!こっちから頼み込んでんだし」

相手の目を見て、あくまでも自然に。

「荷物だけ、取りに行ってきてもいいですか?」

そう!どうせ学校は遅刻だし、退屈な人生には飽き飽きだった!!なら!この誘い、断る筈もなく!と、内心浮き足立って、ルンルンと歩いて家まで歩いて行く。会話なんてまともに出来ない…と、思っていたが相手がコミュ力高いタイプだから特に苦も無く帰ってこれた。

ポケットに手を突っ込み、いつも通りに鍵を捻ってドアを開ける。

…ってか、あの穴見つかっていないよな?誰かが撮影してあげでもしたら、新聞のトップニュース確定なのだが。

鞄の中にはスマホ、財布と旅行にでも行くかのような荷物を詰める。いつの間にか中の空気は無くなっていた。

相手を待たせるのも悪いし…と、急いでまた外に出る。

「行ってきます」

返事は、あるわけがなかった。


「ところで、ついて行くとは言ったんですが」

「ん?」

そう、肝心な事を聞いてなかった。

「どこに、なにで行くんですか?」

移動方法と、目的地である。

肝心な心さんが来る時に目を瞑っていた為、何も見えなかったのである。

まあ、おそらく穴だろうとは思うが…。

「あの穴に~」

「はい」

まあ想定通りである

「飛んで行く!」

「…?」

「そして私たちの世界に行く!」

「……ありがとうございます」

どうやら飛ぶらしい。飛ぶ?結構な距離があったと思うが。

そうなると問題なのが、まず高いところが苦手。そして降りる時の位置。

高いところから落ちるのは、どうしても苦痛ある。絶叫系が苦手だからである。終わりである。

「よ~し、しっかり捕まってね!」

気づいたらもう目的地に着いていたし、いつの間にやらお姫様抱っこされていた。行動が速い。

上を見ると、やはり空高くに浮かんでいた、黒。

だがもう何かを考える隙すら与えずに、

「行くよ〜!!」

返事をしようと口を開いた次の瞬間。


私の体は、背景の空に映えるように、空に浮いていた。


記録 記入:星煌


ーー同時刻、??にて

『あいつおっせーな…』

いつまでも閉じることの無い穴が、それを意味している。

水凪があっちに行ってから、早30分。「あっちのやつ!飛び込んで殺ってくる!!」なんて言って、そもそも移動できるかも知らんのに、駆け出して。あいつなら、そこら辺の雑魚敵一体ちょちょいのちょいなのに、なにをしてるのやら。

いつも通り委員会の仕事をこなしていただけだった。

ただ、ちょっと量が多く、二人では捌ききれなかったのだ。

だから、出てきた穴に入った個体がいたから、帰るのか?と思っていたが…そうしたら、1人になっちまったって訳だ。出入り仕様だろ。普通。

…まあ、目を離した俺も悪かった。

穴が2個同時に開くなんてこと、今まで無かったから、

穴から出た敵が、別の穴に入ったらどうなるのかなんて、考えたことはあってもどうなるのかなんて知らなかったし。

『…まあ、今回でどうなるのかは判ったか……』

そんな仮定ばっかの考察をしながら、律儀に待っていた。まだ暑さが本格化する前で良かったと、心底思う。

これで真夏だったら汗びっしょりで流石に帰っていた。

あいつも帰って来ないから、俺が迎えにでも行ってやろうかと考えていた時、それが来た。

上から降ってくるのは、見慣れた姿と…

…知らない人。

「ただいまー!!」

周囲に豪快な音を撒き散らしながら、豪快に着地。オマケに声もでかい。

「お前、着地下手すぎ」「な!!」

頭にドスン、と1発ぶち込む。

「いたぁ~い!」

なんて思ってても思ってもなさそうな顔と声で心は答える。

はぁ、と、短く息を吐く。物語は始まったばっかなのに、既に疲労感はMAXだった。

これはまた、面倒くさそうなことだな…と、抱え込まれてる奴をみて思う。

「…おかえり。で、誰?そいつ。」

「拾った!!!」

と、大人も騙せる純粋な顔でそいつは答える。

「……生きてます。」

…ここからだった、始まりは。

俺とこいつとそいつが、バカ委員会の三馬鹿と名付けられたのは。


記録:俺。(篠原 諒しのはらゆう)

編集:星煌

外伝<オマケ>1

Qどうしてあの時、あんな冷静だったのですか?

A敵が出てきても動揺しない。RPGの基礎だよ。

回答︰岸 星煌

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