第11話 睡眠花の群生地へ
冒険者っぽい二人の男性が私の前で足を止めた。
一人はモヒカン頭の細い顔の人だ。もう一人はスキンヘッドのタレ目の人。どっちも背が高くて筋肉質で、瞳が濁っているという特徴があった。
「す、すまねぇ、お嬢ちゃん。ちょっと聞きてーんだが、こっちにシミラーウルフっていうオオカミみたいな犬のモンスターは来なかったか?」
「俺らの討伐対象のモンスターなんだよ。見つけたはいいが、逃げられちまってな」
「そのモンスターなら、私が倒してそこで死んでますけど」
「「えっ」」
「お仕事の邪魔をしてしまってすみません、私は別のお仕事がありますので討伐の成果や素材は持ち帰ってけっこうですので。それでは、失礼します」
モヒカン頭の人がシミラーウルフの死体を見て青ざめている。もしかして倒してしまったらいけなかっただろうか。成果や報酬を奪おうとは思っていないし、そういう思いはちゃんと伝えたつもりだったんだけど……。
「マ、マジかよ。Cランク冒険者でやっと倒せるような強いモンスターなんだが」
スキンヘッドの人はなんだか楽しそうだ。豪快に笑い始めた。
「わっはっは、お嬢ちゃん、細くて小さいのに強いんだなぁ。本当に討伐の成果は俺たちがもらってもいいのか?」
背中を向けて歩き去ろうとしたのに、声をかけられてしまった。仕方なく足を止める。
「はい、構いません」
「悪いな。お礼に冒険者ギルドでランクアップの推薦をしておくよ」
「……。……。……どうも」
「他に俺たちにできる礼はないか?」
モヒカンの人も話に加わってきた。
「俺たちはこのあたりで10年以上は働いてるからよ。いろいろと詳しいぜ。特にこの森は庭みたいなもんだな。ここって素材の宝庫なのに、目印らしいものが何もなくて迷いやすいだろ。もしかして、迷ってるんじゃないのか?」
……んー。困ったな。パーティーに王女様がいるから、素性が分からない人たちとはあんまり交流をしたくないんだけど。私たちが道に迷っているのは本当なんだよね。
二人の顔をもう一度見てみる。……。……。……あまり信頼できる顔じゃないなぁ。というか、鼻の下を伸ばした表情で私のバストからお腹、太ももあたりを見てくるんだけど……。
まあでも、ずっとつきまとわれるよりは、適当に情報だけもらってお礼を言って離れた方がいいか。
「実は、私たちは睡眠花の群生地を探していて」
二人とも凄く嬉しそうにした。
「おー、なるほどなるほど。初心者がよくやる仕事だな」
「こことは全然場所が違うぜ」
「どっちの方ですか?」
「「案内してやるよ」」
あー……、そういう……。これは失敗したかもしれない。昨日、冒険者ギルドで酔っ払いが言っていたことを思い出す。新人潰しがちらほら起きていると。この人たちはその新人潰しの人たちかもしれなかった。そんな人たちに森を案内してもらってもいいのだろうか。いや、いいわけがない。
しかし、スキンヘッドの人が「こっちだ、こっち。ついてきな」と歩き始めてしまった。
私、コミュニケーションスキルが低いのかもしれないなぁ。ホイップと合流して「すみません」と小声で伝えておいた。ホイップは、何もかも理解しているわって感じでこっそり苦笑いをしていた。
20分ほど森を歩いて行くと、急に視界が開けて黄色い花がいっぱい咲いているところに出た。どうやら着いたみたいだ。ここが睡眠花の群生地だね。ここで睡眠花を20本積んで帰ればお仕事は完了する。
ホイップが睡眠花を見て少し感動しているだろうか。
「わ~、とても綺麗なところね」
「ですねー。お仕事じゃなくて、ピクニックとして来たかったですね」
あとできれば二人きりで来たかったな。なにせこの綺麗な場所に似合わない人たちがいるからね。
二人の悪意が増幅していく気配を感じる。やっぱり二人は悪い人たちだったようだ。
そもそもこの二人、私の冒険者ランクが低いって決めつけていたし、私たちがこの森に不慣れだとも決めつけていた。つまり、始めから私たちのことを知っていて、この場で襲おうって決めていたってことだろう。そのために飼い慣らした番犬モンスターに私たちを追跡させたんだと思う。
やれやれだ、と思った。この綺麗な景色が血で染まってしまうんだね。




