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賢者の森の天才剣士 ~世界で唯一の無詠唱魔法使いだったけど、追放されちゃったので今後は剣士として頑張ります~  作者: 天坂つばさ


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第10話 睡眠花を探そう

 冒険者ギルドが無料で貸してくれた部屋は、そこそこ広いし、わりと良いベッドがあるしで、思ったよりも快適だった。ここが無料なら、お金が貯まるまではここでずっと暮らしたいなって思えたよ。


 さて、イーストロックの街に来て一夜が明けた。今日はホイップとの初仕事だ。気合を入れていかないとね。


 冒険に行く準備をしっかり整えて、私とホイップは冒険者ギルドの1階へと降りていった。受付のメリッサさんがすぐに私たちに気がついてくれて、「いってらっしゃーい」と笑顔で大きく両腕を振ってくれた。


「「いってきまーす」」


 私もホイップも、メリッサさんに負けないくらい元気よく両腕を振った。なんだかメリッサさんから元気をもらえた気分だ。今日は良い仕事ができそうって気持ちになれたよ。


 冒険者ギルドから外に出ると、人々が賑やかに行き交っていた。本当に活気のある街だと思う。


「さあ、ホイップ、冒険に行きましょう~」

「ええ。初仕事だから頑張るわよー」

「はい。ちゃんと仕事を達成して信頼を得たいですね。ええと、今日の仕事場は街の南西方向にある森ですので」


「あっちの方向ね。そこで睡眠花を20本とってくるわよ」

「はいっ、頑張るんるん♪」


 ホイップと一緒に南西方向へと歩いて行く。

 そちらの方向には広大な森があって、採取対象の睡眠花が群生しているらしい。その群生地で睡眠花を20本摘んで帰ってくるのが今日のお仕事だ。達成すれば二人の一日のご飯分くらいの稼ぎにはなるって感じかな。


 Fランクの最初のお仕事だし、それだけ稼げればとりあえずはいいと思う。ただ、毎回このお仕事があるわけじゃないし、明日のご飯代は明日また考えないといけないっていうね……。


 所詮は最底辺のFランクだ。どうしてもその日暮らしって感じになってしまうんだよね。だからなるべく早めにランクアップして、EランクとかDランクに昇格したいところだ。そうすればモンスター退治のお仕事が入ったりして、お金の入りが良くなるからね。


 爽やかな風が吹いてくる。今日はぽかぽかして温かいし、良い天気だったから心地が良い。花の群生地に行くのにちょうど良い日かもね。私、ちょっとしたピクニック気分かも。美味しそうなサンドイッチでも買って行こうかな、なんて思いながら私は街の門に向かって歩いていった。




 街を出てから2時間が経過した。森の中を歩いて歩いて歩き続けて――。ちょくちょく良い素材があったから回収していたのもあったけれど……、ここまで予想よりもだいぶ時間がかかってしまっている。


 目的地に向けてまっすぐに歩いて来たつもりだったんだけどな……。それなのに、ああそれなのに……。


「ホイップ、おかしいですよ。睡眠花の群生地へは30分で着くはずだったじゃないですか。それなのに、いったい何が起こっているのでしょうか」

「うーん……、地図の通りに歩いて来たはずなんだけどねぇ……」


 ホイップが地図を見ながら首を傾げている。

 その地図は冒険者ギルドの受付のメリッサさんが描いてくれたものだ。だから間違いはないはず……なんだけどなぁ。


「これ、どう見ても山に入っちゃってますよね……」

「そうよね……。地図によると山は森を突き抜けた先にしかないはずなのよねぇ……」

「やっぱりメリッサさんの描いてくれた地図が雑すぎたのでは」

「さらさらって適当に描いていたものね……」


 二人して「はあ……」と深いため息を吐いた。メリッサさんは明るくて親しみやすくてとても良い人だけれど、もしかしたらわりと大雑把な人なのかもしれない。

 ホイップが足を止めた。つられて私も足を止める。


「アイネ、このまま山に入っても群生地にはたどり着かないと思うの。ということで、さっきとは違うところを歩いてみつつ、いったん戻ってみない?」

「それが良さそうですね。このまま山を登っても何もないでしょうし」


 くるりと方向転換をして、右後ろの方向に向けて歩き出す。運が良ければ睡眠花の群生地にたどり着けると思う。運が悪かったら何も見つけられずに森を抜けてしまうだろうね。

 ん~、やっぱりちょっと心配かもしれない。


「あの、ホイップ、私、ちょっと木を上って周辺を確認してみましょうか。もしかしたら群生地が見えるかもしれないですし」


 ホイップが私の身体をジーッと観察した。そして酷く心配そうにする。


「え……? その格好で木に登って大丈夫?」

「スカートだからってことですか? 男子がいないから平気じゃないですか?」

「スカートの中を楽しみにしているのが男子だけだとでも思っているの?」

「ええっ、違うんですか。そんな女子がいるんですか?」


「うふふっ、冗談よ、冗談。そんな女子はいないわよね。もしもアイネが木登りが得意なら、周辺の確認をお願いしたいわ」

「了解です」


 私は木の幹に足を引っかけて、ぴょんぴょんぴょーんと幹を蹴り、枝に乗っかり、そこからさらに跳び上がり、より高いところへとどんどん跳び移っていった。

 地面の方から「すごっ。木ってそうやって登るんだっけ?」とホイップの感心したような声が聞こえてきた。森育ちの私はどうやら木登りが得意だったみたいだね。


 よし、木の一番てっぺんについたぞ。しっかりと枝を手で持って周辺を確認する。後ろは山、前方は森。そのずっと先にはイーストロックの街の石壁が見えた。


「ふむー、なるほどなるほど。上から見るとメリッサさんの地図は正しかったね。ただ、地図の印象よりも森がだいぶ広大だったみたい」


 つまり、私たちは街道からあまりにも早いタイミングで森に入ってしまったのがいけなかったようだった。森の真ん中あたりから入っていたら、きっと睡眠花の群生地がすぐに見つかったんじゃないだろうか。


 しかし……、目印になりそうなものが何もないな……。これは今日中に睡眠花の群生地を見つけられるかどうか怪しいなぁ。私が魔法で空を飛べたら楽に目的地を見つけられたと思うけど、そんな高度すぎる魔法は習得してないんだよね。


 私は枝から枝にジャンプをしながら地面へと下りていった。途中で枝がけっこうミシミシ言っていたけれど、それはけっして私の体重が重たいせいではないと思う。絶対に違うんだからね。


「ホイップ、分かりましたよ。森の中央はあっちの方向でした」


 私は来た道よりだいぶ左の方向を指さした。


「そっちなの? あれ、私、地図を見間違った?」

「いえ、森が想像の3倍は広かった感じです。私たち、森に入るのが早すぎたんですよ」

「そういうことか。なるほど、それじゃあそっちの方向に行きましょう。あ、そうだ。あとね、アイネ」


「なんでしょうか? 何か発見しました?」

「ええ、凄いものを発見したわ」


 むふふ、とホイップが悪い顔を見せる。そして意地悪をしてやるぞって感じの声を出した。


「アイネのパンツはピンク色で、お肌にぴったりフィットしてる、わりと大人向けのものだったわ。エッチっち~♪」

「あ~~~~~~~~っ! みっ、見たんですかっ。いたいけな私のスカートの中をっ」

「うふふっ、ごちそうさまでした♪」


「スカートの中に興味がある女子がこんなにも身近にいたとは~~~~~」

「絶景だったわー。ありがとうーって感じー」

「ううう……、弟さんがエッチだとお姉さんもエッチなんですねっ」

「はっ……。オーランドと一緒にしないでっ。心外だわっ」


 エッチな血筋なのかもしれないな。この姉弟は油断がならないなって思った。

 恥ずかしさで身体を火照らせながら、森の中を歩いて行く。さっきまでは道っぽいところを歩いていたから歩きやすかったけれど、今は完全に森の中って感じだからちょっと歩きづらかった。でこぼこしているところが多かったり、腐った木が倒れていたりするからね。


 私、新しいショーツを買わないとなーとか思いながら歩いていた。乙女だし、一度見られたショーツはもう一回は見られたくないよね。次にまた見られてしまうのなら、せめて新しくて可愛いのを見られたい。……って、いったい何を考えているんだ私は。


 それから10分ほど歩いたときだった。

 私たちが来た方向から、何かが急接近してくる気配を感じた。私は剣の柄に手を当てた。


「ホイップ、モンスターです」

「えっ? あ、本当だ。なにあれ、中型のオオカミ?」

「あれはお金持ちがペット兼、家の番犬としてよく飼っているモンスターですね。負けを認めさせれば人にやたらと懐きますけど、野生にいるのだと漏れなく獰猛で危険性の高いモンスターです」


「つまり、戦闘は避けられないと」

「私が瞬殺します。そこにいてくださいね」


 私は剣の柄に手を当てたまま走り出した。よだれをたらしながら走ってくる番犬モンスターとお互いに猛スピードで接近し合う。


「がるるるるるるるるるるるるるるるっ!」

「ごめんねっ」


 私はさらにスピードを上げた。そして最低限の動きで剣を抜いて、番犬モンスターの横を通り抜けると同時にスッと斬ってしまった。番犬モンスターからしたら冷たい風がヒヤッと通り過ぎただけに感じたと思う。


 番犬モンスターは私とすれ違って数歩だけ前に進んだ。しかし、そこで限界に気がついたようで急に脚の力を失い、横にぐらりと倒れて動かなくなった。血がだらだらと地面を濡らしていく。


「アイネ、凄い。やっぱり剣の達人ね」

「えへへ、ありがとうございます」


 ホイップのところへと戻ろうとする。しかし、別の気配を感じて私は足を止めた。気配は二つだ。困ったように何かを探しながら走ってくる男性が二人いる。

 あれは……、私たちの同業者だろうか。男性たちは私の姿を見つけると、少しホッとした様子を見せながら近づいて来た。


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