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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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59 お見舞いでしゅ


 「リクのお見舞いに行くでしゅよ」


 私はパンケーキを食べ終わると、ジェラルドに言った。


 「なら僕も行こう。エドガー、君は先に戻ってくれ」


 ジェラルドはそう言って、フィルナー医師を、乗ってきた馬車で先に王宮へ戻らせた。


 私がいつものように、ギンも一緒に荷馬車まで行くとジェラルドが固まった。


 「馬車って……荷馬車か……」

 「開放感溢れて気持ちいいんでしゅ!」


 私が胸を張って言うと、護衛についてきた騎士が慌てた。


 「殿下、これは物騒です。どこから狙われるかわかりません」


 この人達、何を言っているんでしょうかね? 狙われたことなんてないし、うちの影達はみな優秀だから心配なんてないのに。


 「いやなら、お留守番で……」

 「初めて乗るから楽しみだ」


 ジェラルドはそう言うと私を荷馬車に乗せてくれた。


 ギンがいつものように一緒に乗ってくれる。ギンはお薬係だから、リクのケガを診てもらうつもり。


 騎士は仕方なさそうに荷馬車の後を馬でついてくる。来なくてもいいのに。


 カステラ屋の入り口に着くと、ソラが私を見て慌てて出てきた。どうしたのかな?


 「今、リクの友達が見舞いに来ているから」


 ソラはそう言うと私達を店の隅に引っ張っていく。リクのお友達? 心配してお見舞いに来てくれたのかしら。ならお礼を言わなきゃいけないわ。


 「リクのお友達ならご挨拶しないとでしゅ」


 私の言葉にソラは首を振った。


 「邪魔しない方がいいんだ」


 えっ? そうなの? 私はギンの顔を見る。


 「ああ、もしかしたらジーナか」


 ギンが2階への階段を見ながら呟く。


 「ジーナ? 女の子でしゅか?」

 

 ソラが頷く。


 あらまぁ、いつの間にかみんな春ですね。これは、是非見に行かなければ……。


 「ご挨拶しましゅよ」


 私はソラが「まずいよ!」というのを無視して、ジェラルドを引っ張って2階へと上がった。


 「ジーナ、違うんだ! お嬢は悪くない!」


 廊下までリクの声が聞こえてきた。痴話げんか……? リクはケガしているんだよね?


 不思議に思いながらそっと部屋を覗くと、上半身を包帯でぐるぐる巻きにされたリクが、ベッドで起き上がっていて、リクの手を茶色いおかっぱ頭の女の子が握っていた。


 ギンはたいしたことないなんて言っていたけど、見るからに重症だよね?


 リクより大きく見えるその子は、年上?


 片方の手でなだめるようにリクの頭を撫でている。姉さん女房ですね。ドアの陰から覗いているとリクと目が合った。


 「あっ、お嬢」


 リクが気まずそうに目を伏せた。


 「リク、入ってもいいでしゅか?」


 私が言うと、リクのそばにいた女の子が私を睨む。『ダメに決まっているでしょう!』と、その目は語っていた。


 その子はこちらにやってくると、目の前でドアをバンッと閉めた。驚いて後ろに倒れそうになった私を、ジェラルドが支えてくれた。


 「大丈夫?」


 ジェラルドがそう言いながら私を抱き上げた。何が何だかよくわからないけど、歓迎はされていないみたいだった。心がチクッとして泣きそうになった。


 「リクは、具合が悪いんでしゅか……」


 もしかして、絶対安静とか? それなのに、私はのんきにパンケーキを食べていたんだわ。


 泣きそうになりながらジェラルドに聞くと、そっと私の頭を撫でてくれる。


 「下で聞いてみようか?」


 ジェラルドは落ち着いた声でそう言うと、私を連れてお店へと降りていく。


 「ソラ? だったかな? 事情を教えてくれる? ルリアが混乱しているからね」

 「姫様、リクのやつ、何かしやしたか? 放り出します」


 ギンが血相を変えて飛んでくる。私は慌ててジェラルドの腕の中からギンに手を伸ばした。


 「ギン、違うでしゅよ……でも……ここが痛いでしゅ」


 リクに拒否られたような気がして、胸が苦しかった。胸を押さえながら、ギンに訴えた。良いお薬を出してくれるかもしれないもの。


 「えっ? フィルナー医師に診てもらったんじゃ……。まさか、やぶ医者?」

 「いや、エドガーは優秀だ。それより、何か気の落ち着くものを」


 ジェラルドはそう言うと私を抱きかかえたまま椅子に座った。


 ギンの入れてくれたシナモン入りアップルティーに、ジェラルドがミルクをたっぷりと入れてくれる。私の頭もずっと撫でていた。あんまり撫でると、はげるかもしれない……。


 ジェラルドの膝の上でミルクティーをすする。


 「怪我をした子はリクだったね。彼はどうしたのかな? 上で何があったんだい?」


 ジェラルドが聞くとソラが話し出した。


 ソラの話で状況がわかってきた。


 リクは昨日投げ出された拍子にあばら骨を折っていた。


 町医者には診てもらい、お薬も貰っている。


 ただ、宿屋の前の騒ぎを聞きつけたソラの彼女アンが、友人のジーナにリクのケガのことを話したんだそう。


 ジーナはリクと付き合い始めたばかりで心配して大騒ぎになったんだって。


 アンとジーナは親友同士で2人共に12歳だ。


 リクやソラよりも年上だよね。


 今回のケガは私のせいだと、怒っているんだって。


 もともと、皆が『姫様』『お嬢』なんて呼ぶのが気に入らなくて、周りにいつもイケメンを侍らせているって、怒っていたらしい……。


 そうなんだ……。私の街での評判は、カステラ屋とは違って悪いんだ。


 話を聞いても、なんて言っていいかわからなくて、目をパチクリさせる。


 イケメン侍らす3歳って……。ビジュアルがヤバい。


 悪役だよね!? どう考えても正義の味方じゃない。


 「えっと……悪いやつ?」


 私はそう言うと自分を指さした。


 ガヤガヤッと音がして入り口からクーガとウィズが入ってきた。お仕置き帰りみたいだ。私を見ると嬉しそうに寄ってくる。


 「姫様、悪い奴らは俺達が成敗しますね!」


 クーガが言えばウィズも大きく頷いた。


 「俺がやります!」


 クーガとウィズが腕まくりをして、店の中をきょろきょろ見回し始めた。


 その時私は思った。この2人に殺されるなら仕方ないかもしれないって……。


 「私……成敗されるっ……でしゅ……」

 「あわっ!?」

 

 クーガが私の顔を心配そうに見た。


 「姫様が泣きそうな顔をしている……」


 ウィズが戸惑ったように立ち止まるとクーガと目を合わせた。


 私はたまらず、ジェラルドの胸に顔をうずめた。 唇をかみしめたけど嗚咽が漏れた。


 ジェラルドが私の背中を、ぽんぽんと叩いた。


 「大丈夫だよ、ルリア。誰も君を成敗なんてしない」


 静かな声が、胸の奥にじんわりしみた。


 うっ、うっ、うっ……。


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