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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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58 朝帰りのれお


 「お前らは、そのまま見張りだ」


 レオンはそう一言残すと姿を消した。俺とクーガは橋の欄干から逆さにつるされたままだ。


 「くそっ、今頃レオンは牢に忍び込んで、思う存分奴を吐かせているんじゃねえか? 俺達だけ見張りなんてよ……」


 隣でクーガがボソッと呟いた。


 しかし、レオンも優しくなった。仕置きを、逆さ吊りだけで済ますとは……。


 「里にいた頃はこんなんじゃ済まなかった」


 俺の言葉にクーガも頷く。


 むち打ち100回なんてざらだったからな。思い出したくもない記憶が頭をよぎった。


 それにしてもよりによって姫様を狙うなんぞ愚の骨頂だ。


 奴ら終わったな。


 レオンの無言の剣幕を見れば火を見るよりも明らかだし、なんせ、俺達全員を敵に回したんだから。


 ばかな奴らだ。


 「今日のは先鋒だな。3人で動くはずだから、今頃残りの2人が、探りを入れているか、引き上げる頃だ」


 俺の言葉に、クーガも頷く。


 そろそろこの橋を通るだろう。案の定、橋の向こうから馬を走らせる音がする。


 「ウィズ」


 クーガの呼びかけに黙って頷くと、お互いの縄を切り宵闇に紛れた。


 必死で馬を走らせる人影が2つ。つんと鼻を突く血の匂い。


 手負いだな。レオンか……。


 殺(や)っちまいたいところだが、黙って後をつける。どこの手の者か探れというのがレオンの指示だ。


 昼間のことを思うと思わず手に力が入った。クーガが懐の剣に手を掛けているのをそっと止めた。


 「殺(や)るなら全員だ」


 低い声で言えばクーガも頷いた。


 「ああ、全滅だ」


 宵闇が深く俺達の姿を隠す。


 二度と手出しはさせない。気が付かれないように木の上を追っていく。


 どのくらい走っただろう、もう国境も近い。草原に大きなテントがいくつも見えてきた。


 「おい、あれ見ろよ」

 

 クーガに促されて俺は頷いた。旅芸人のテントだ。しかも大所帯だ。


 「……探るか」


 奴らが入るのを見届けると、そっと、同じテントに忍び込んだ。中では男達が数人集まっていた。耳を傾けて会話だけを拾っていく。


 「おい、もう一人はどうした」

 「ドジをふんだ。警備兵に捕まっている。それより、そいつの怪我を見てくれ」

 「これは……」

 「たぶん王宮が雇っている影だ。牢に忍び込もうとしたら、奴にやられた」

 「おまえら、団長に知れたら、厳罰だな」

 「……『暁組』が悪いんだ」

 「接触できたのか?」

 「なかった。そんな組なんかなかったぜ」

 「『暁組』がない……?」

 「『めっ!組』が台頭してきて、『暁組』は消滅したって聞いた。今じゃ、組長は雲隠れしているって噂だったぜ」

 「はぁっ!? 『めっ!組』? なんじゃそれ?」


 俺とクーガは奴らの会話を聞きながら思わず吹き出しそうになった。クーガと目を合わせると、そっとテントを抜け出した。


 いやいや、うちの姫様はやっぱり偉大だ。そんな気分だ。2人で他のテントも探って、さっさと帰ろう。早く姫様の顔が見たい。


 クーガと手分けして、いくつかのテントを探っていく。


 ほとんどが荷物の保管だ。旅芸人にしては荷物が多いな。


 最後のテントを抜け出ると向こうから背の高い男が歩いて来るのが見えた。


 あのシルエットには見覚えがあった。


 「クーガ、あいつ、お頭と会っていた奴じゃねえか?」

 「いや、俺は見たことないが……」


 長い髪を一つにまとめたあのシルエット。間違いない。


 「あいつ、里に訪ねてきたことがある」

 「まじか……」


 眺めていると、テントから出てきた男が声を掛けていた。


 「団長、偵察に行った奴らが戻りました」

 「報告は?」

 「それが……」


 男が口を濁すと、団長と呼ばれた男が一瞬こちらに気配を飛ばしてくる。


 まずいな。無言でクーガと目を合わせる。


 俺達はそのまま暗闇に溶け込んだ。



      ♢      ♢      ♢



 朝からスーザンのため息が激しい。


 部屋にはジャックとギンがつきっきりで世話を焼いてくれている。


 ギンが食事を運んでくれれば、ジャックがナイフで切ってくれる。2人で交互に「あ~ん」をされている私は乳幼児じゃありません。「これ」とか、「あれ」とか指図するのにも飽きてきてジャックからナイフを奪った。


 「姫様、刃物は危険です」


 そう言って、ジャックにナイフを取り上げられた。思わずほっぺが膨らむ。いつも、ポンポンとナイフを投げているジャックに言われたくない。


 「フォークちょうだい!」


 私が言うとギンが首を振った。


 これじゃあ、手足が退化しちゃうから。


 「いいでしゅか、私は、たくさん食べて、大きくなるんでしゅよ」


 ギンもジャックも頷く。


 「自分で食べたいでしゅ!」


 ジャックとギンは2人で顔を見合わせた。


 「ちょっと待って、全部切るから」


 そう言うとジャックが見事なナイフさばきで細かく切ってくれた。細かすぎて、フォークに刺さらなかった。


 「はぁ~」


 今日一番の大きなため息が出た。


 「お嬢様、お医者様が見えました」


 スーザンの声が聞こえた。


 「んっ?」


 お医者様って? 頬の傷はギンのお薬でだいぶ良くなったもの。


 呼んでいないよね……誰?


 「失礼。お邪魔するよ」


 そう言って部屋に入ってきたのは、フィルナー医師を連れたジェラルドだった。


 フィルナー医師は私のお皿を一瞥すると眼鏡を上げる。


 「お食事が進まないようですな」


 むっ、と頬が膨らむ。


 違うから、ジャックが切り刻んだだけだから。食欲がないわけじゃないのよ。


 「これから食べるでしゅよ」


 フィルナー医師は私の返事も聞かずに、横にいたギンと話をし出した。


 はぁ~、また、深いため息が出る。


 この人私を診る気ないよね。良いんだけどね、別に。


 「心配したんだ。昨日は怖い思いをしたと聞いたからね」


 ジェラルドは私に声を掛けながら、隣に腰を下ろした。私は、チラッとジェラルドを見る。


 ジェラルドは私と目が合うとニッコリと笑った。


 これはこれでめんどくさそうだわ。


 食事中なんですけど……。


 「僕達がケアしていますから、精神的ショックはありません」


 ジャックがそう言ってお茶を入れてくれる。


 精神的ショック?

 誰の……。


 まさか、リク?


 「リク? 具合悪いの?」


 私が聞くとジェラルドがギンに視線を移した。


 「リクっていうのは一緒にいた子供か?」


 ギンが頷く。


 「ああ、たいしたことはないです」

 「なら、よかった。ルリアはもう食べないのか?」


 ジェラルドに聞かれて細かく切り刻んだお野菜やお肉を見る。離乳食じゃないんだから……。


 「パンケーキが食べたい」

 「いいね、僕も貰おうか」


 ジャックがそれを聞いて厨房へと姿を消した。


 「彼も……影か」


 ジェラルドがしばらくジャックのいた空間を見つめてから呟いた。


 「いつもの護衛は?」


 ジェラルドに言われて、昨日からレオンを見ていないことに気が付いた。


 「ギン、れおは? いないの?」

 「ああ姫様、心配しなくても、すぐ帰ってきますよ」


 もう、朝もだいぶ過ぎているよね。


 「れおは、朝帰りでしゅか……」


 いつの間にか、レオンにも良い人ができたのかもしれない。でもまだ15歳位だよね? あんなことや、こんなことをするのには早くないかしら……。


 やっぱり、この世界、皆、おませさんなのかなぁ~


 私はついて行けないかもしれない……。


 でもでも、レオンが帰ってきたら、色々聞いてみなくちゃ!


 「姫様、顔が変ですよ!」


 ギンの言葉に慌てて頬をパンとはたいた。


 妄想し過ぎて、ごめんなさい。心の中で謝った。


 隣でジェラルドが肩を震わせて笑っていた。


 「一人百面相だね」


 はいっ? 違うから!



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