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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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55 月明かりの下で




 帰りの馬車の中でぐったりと伸びたテオ。その横にシャンと座っているジェラルドがいた。


 私は隣のギンに寄りかかってうつらうつらしていた。


 「ルリア、君はあの土地を手放す気はあるのか?」

 「ないでしゅよ。グーちゃんのおうちですから」


 眠い目をこすりながらジェラルドに答えた。それに石ころたちも転がっている。誰にもあげないんだ。


 「それならいいんだ。万が一手放すときは相談してくれ」


 そう言うとジェラルドは窓の外に目をやった。


 「あしょこが、気に入りましたか?」

 「ああ、楽しかった」


 そう言って笑う顔は少年の顔だった。今日は色々あったけど、楽しかったなら良かった。


 それにしても、30人の刺客が押し寄せて来るって、いったい何なんだろう?


 襲ってきた方も、よほど腕に自信のない人たちだよね。飛影のメンバーを見ていると、大抵単独行動をとっている。


 チームプレイというよりは個人プレイが多い。暗殺者と諜報活動専門なのだから当然なのかな?


 ……たぶん……。皆、個性強いしね。


 彼らは私のところに来てからは、危ない仕事はしていないはずだもの。いつの間にか頭の中はレオン達のことを考えていた。


 皆が幸せだったら、それでいいんだ。


 ぼんやりと考えながら、眠りに落ちていった。



      ♢      ♢      ♢



 「君たちは、ずっとルリアに仕えていくのか?」


 別れ際、寝てしまったルリアを抱えるレオンに聞くと鋭い視線で一瞥された。一瞬、空気が凍りそうだった。


 無言で去っていく後ろ姿を眺めていると、そんな質問には答える必要もないってことだな。


 隣でぐうすか寝ているテオを見るとルリアが羨ましく思えた。


 「えらく違う……」


 思わず言葉に出た自分がおかしかった。


 王宮に戻ると騎士団長がやってくる。


 「今日、受けた報告のことで確認があります」


 彼は手に持っていた報告書を僕に差し出した。


 『王宮の影が、不審者30名を捕獲』となっているが……。


 王宮の影ね。やつめ、手柄を独り占めか。


 「確認とは?」

 「影が単独で捕獲したのは事実でしょうか?」


 そうだよな。30人だからな。だからと言ってルリア達のことを言うのは得策じゃないな。


 「ああ、おおむね事実だ。もっとも、すでに誰かにやられてはいたみたいだがな」

 「すでに? ですか……」

 「報告書はそれでよい」


 それだけ言うと騎士団長を下がらせた。


 今日は面白かった。興味深いことが多かった。竜も初めて目にしたな。しかもあの鉱山は古代遺跡じゃないか、あの壁に書かれた文字は本で見たことがあった。


 手のひらに握った、石を見つめた。


 この卵型の石も調べる価値がある。後で鑑定に回さなければな。


 大きく息を吐くと窓の外に目をやった。


 「殿下、フィルナー医師がお目にかかりたいと」

 「エドガーが?」


 この間のルリアのことか……。


 「わかった。通してくれ」


 銀縁の眼鏡を押さえながらエドガーが入ってきた。


 「エドガー、用件は何かな」


 私が聞くとエドガーはグレーの瞳で真っ直ぐとこちらを見る。


 何か込み入った話があるな。直感的にそう思った。


 「先日のアストリア公爵家ですが……」


 ああ、やはりそうか、気になるな。あの傷は……。


 「公爵令嬢の件だな」


 エドガーは頷いた。


 「大変言いにくいのですが……」


 エドガーは銀縁の眼鏡を掛けなおした。


 「頬の傷は明らかに扇によるものです。しかも、住まわれている離れの環境は今一つで、お食事も使用人たちとご一緒かと……」


 エドガーが言いよどむ。つまりそういうことだ。


 「虐待じゃないかと言いたい。違うか?」


 そう、扇を持つのは公爵夫人以外にはいない。


 エドガーは静かに頷いた。やはりそうか……。


 ルリアは実の母親から虐待を受けていることになる。いや、母親だけではないのだろう。公爵夫人がそうであれば、皆、それに倣うものだからな。


 ため息を一つついた。どうしたものか……。


 思い起こせば、食事は確かに使用人たちの食堂だったが、それはそれで楽しんでいるようにも見えた。一緒に食べた朝食は温かく美味しかった。


 あの子を思い出せば、思わず笑みがあふれる。


 「何か、おかしなことでも?」


 咎めるようなエドガーの声にはっとした。いけない、ほだされている場合じゃなかった。


 「先日の貴族の家族会にも末のお嬢様だけ欠席だったと伺っています」

 「確かに、それは僕も聞いた。噂にもなっているな」


 あの日に連れて行かなかったせいで、公爵が外で作った子ではないかと、噂が出ていた。それであのようなことになったんだな。


 「殿下のお耳にも入りましたか……」


 僕は短く頷いた。


 「エドガー、それで君は何が言いたい」

 「理由はともあれ、あのお嬢様は、あの家にあのまま置いておくのはいかがなものかと……」


 確かに、あの子をあのままにしておくのは、危険だ。


 普通ならあの子を心配するのだが、どう考えても公爵家の方に被害が出るな。


 「つまり、保護をすべきだと考えるんだな」

 「はい」


 エドガーは力強く頷いた。その案があったか。


 保護となると、いずれは養子か。


 父上の養子は無理にしても……。いや、僕の養子はもっと無理だな。


 頭を抱えつつも、なにか案があるだろう。エドガーの言葉を受けて僕は決意を固めた。


 「父上に進言しよう」


 決して、鉱山や影達に目がくらんだのではない。ルリア、君が心配なだけだから……。


 珍しく僕は心の中で沢山言い訳をした。


 思わず窓の外に目をやった。


 窓から入る月明かりが今日はひときわ明るく感じられた。



 


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


 今回で一度、少しお休みします。

 ここまで一気に走ってきたので、作者もルリアたちと一緒にひと休みです。


 再開は2週間ほど後を予定しています。


 またルリアたちに会いに来ていただけたら嬉しいです。

 それまで皆さまも、どうぞゆっくりお過ごしください。


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