53 好き嫌いはしないタイプでしゅ
レオンは帰ってくるなりジェラルドに言う。
「転がしておいたから、あそこのやつに言っておくんだな」
そう言って馬車が停めてある方を顎でしゃくった。んっ? 他に誰かいたかしら?
「れお? だれがいたんでしゅか?」
レオンはジェラルドを一瞥する。
「ああ、そいつの客だな」
「客?」
「刺客ですよ」
ケルンが私を抱き上げるとそっと教えてくれた。
「ネズミとは違うの?」
「ネズミは探っている奴らで、客は刺客です」
刺客って、ジェラルドの? 30人って……。
少年1人に多くないかしら……。
ちょっとした戦争よね?
「ふ~ん」
私はジェラルドからそっと目をそらした。
見たら悪いかも。
人には言えない過去があるもの……。
「ルリア、その私はわかってます的な態度は気になるな」
ジェラルドが口角を少し上げて私を見つめた。
えっ? そうなの。私は別に気にならないわ。それに、そんな皮肉気なジェラルドは相手にしたくない。
「んっ?」
と、とぼける。なんたって天下の3歳児だもの。
「出発だ」
レオンがすかさず手を挙げてみんなに合図をする。
さぁ、グーちゃんが待っているもの。
洞窟の入り口に着くとジェラルドは興味深そうに周りを眺めている。
「殿下、足元にお気を付けください」
テオの言葉にジェラルドは眉をしかめた。
もしかして、手を差し伸べたりするのかな? 興味津々で2人を見ていると後ろからサッと摘まみ上げられた。この摘まみ上げ方はレオンだ。
「れおっ!」
抗議の眼差しを向けた。テオみたいなベタベタなのも嫌だけど、摘まみ上げるのもどうかと思う。
ふんっ、今のうちだけだからね。いっぱい食べて大きくなればもう、摘まめないからね。
「ランチをたくさん食べましゅ」
レオンの腕の中で呟くと、ウィズとジャックが「お任せください」と向こう側で手を挙げた。テッドのスペシャル弁当があるらしい。
ふふふ……。
この間みんなでお弁当を食べた洞窟に行くと、グーちゃんが待っていた。ここまで下から上がってきたのね。
「グーちゃん、ただいま」
私が言うとグーちゃんはクルクルっと3回回って「ワォ~ン」と叫んだ。
「トカゲ? いや、犬ですね」
テオがジェラルドに説明していた。どっちでもないけど、どっちでもいいかな。
「ルリア、それがお留守番のグーちゃん?」
ジェラルドに聞かれて私は頷いた。
「そうでしゅ。とってもおりこうさんでしゅ」
私はグーちゃんの頭を撫でてあげる。
「これが、じぇりーでしゅよ。そっちがテオ」
ジェラルドは私の紹介に一瞬「えっ、違うだろう」みたいな顔をしたけどすぐに諦めたように言った。
「僕はジェラルド。よろしくね」
そう言ってグーちゃんの頭を撫でた。
グーちゃんはちょっと首を傾げた。
「君は? 見たことがないな」
「竜でしゅ」
「……竜? なぜわかる?」
ジェラルドの言葉に首を傾げた。確かに、何故と言われると……。
「クーガが言ってましゅた」
「クーガ?」
「ああ、馬に乗っていたこげ茶の短髪ですよ」
めずらしくテオが役に立った。
私が頷くと合っていたというように嬉しそうに笑う。まだまだ子供だね。
「姫様、お昼ですよ!」
ウィズの言葉に慌てて石のテーブルに着く。
ギンが持ってきたりんごをグーちゃんにあげていた。お肌が綺麗になるのよね。後でハンバーガーもあげるんだ。
「りんごを食べるんだな。草食か……」
ジェラルドが呟いている。グーちゃんはハンバーガーも食べるから雑食だと思うわ。
「グーちゃんは好き嫌いはしないタイプでしゅよ」
「好き嫌いがあるのか?」
「だからないでしゅ」
ジェラルドは不思議そうにグーちゃんから目を離さなかった。
用意されたテッドのスペシャル弁当は、唐揚げやサンドイッチ、サラダ、そして今日のデザートは洋ナシのタルト。
美味しそう。
「じぇりーも食べるでしゅよ」
私は唐揚げを木のお皿に取ってあげた。
「姫様の考える料理は美味いんだ」
ジャックが得意げに言う。作るのはテッド達だけどね。
「ルリアが考案したのか?」
私は大きく頷いた。
「そうでしゅ。えらいんでしゅよ」
私が胸を張って答えると、ジェラルドは興味なさそうに目をそらす。
あっ、信じていない雰囲気。
まっ、いいけどね。
「いやぁ、これ本当に美味しいですね」
感心したようにテオが言う。テオはスペシャル弁当が気に入ったみたいだった。
「……美味しい」
やっと食べ始めたジェラルドも手を止めて私を見つめた。
「今まで口にしたことのない味だ。これを君が?」
やっと、信じる気になったのかな? 信じる者は救われるんですよ!
えへへへ、と笑ってごまかした。
3歳なんでね。




