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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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47 まだ、3歳です


 そう、私はまだたったの3歳だった。


 家に着くと真っ青な顔をしたスーザンが駆け寄ってきた。


 「んっ? どうしたでしゅか?」


 馬上でうつらうつらしていた私は眠い目をこすった。スーザンはなんか悪いものでも食べたのかしらね。ぼんやりとそんなことを考えた。


 周りを見れば、いつの間にかレオン以外はそばにいなかった。


 「もう、皆戻った」


 レオンは私にそっけなく告げる。ホルンとケルンはショップの方へ行ったんだわ。ジャックもついて行ったかもしれない。そんなことを考えながら頷いた。


 それよりも気になるのはスーザンよね。なにかあったのかな?


 「お嬢様、奥様とお嬢様がお呼びです」


 はっ、ふぇっ? 


 「お母様とお姉様?」


 今日は皆で王宮に行ってたんじゃなかったかしら……。


 何だろう? 考えた途端に、お腹がチクッとする。


 私が顔をちょっとしかめると、すかさずレオンに聞かれた。


 「どうした?」

 「食べ過ぎたみたいでしゅ」


 曖昧に笑ってごまかした。レオンはそら見ろと言わんばかりに私の頬をつまんだ。


 「いっ、痛いでしゅよ」


 あちこち痛い。お腹に、頬に、そして胸が……。


 「お嬢様、とにかくいらしてください。お待ちかねですから。間に合ってよかった」


 と、スーザンに手を引かれて母屋の方へ重い足取りで歩いていく。


 お母様とお姉様の住んでいる母屋は、家族以外の男子禁制の区画になっていた。馬を連れて戻っていくレオンには手を振ってあげた。


 私が母屋にきた記憶はなかった。ルリアが小さい頃はあったのだろうか? そこは定かじゃなかった。


 色々考えても始まらない。初めてのご対面? あっ、この世界で初めて記憶が戻った時にちょっと見たのを思い出した。


 「奥様、失礼いたします」

 「あなたは、もういいわ。仕事に戻るように」


 私達が部屋に入るや否や、そう言うときらびやかな緑色のドレスを纏ったお母様が扇で部屋の入り口を指した。スーザンは私を一瞥した後速やかに立ち去った。


 スーザンに何か出来るはずもない。


 私を見ると、お母様と同じ緑色のドレスを着た女の子がつかつかとやってきて私の肩をどんとついた。


 「あなた、なんで今日来なかったの。いい恥さらしだったじゃない」


 恥さらし? 言っていることが良く分からなくてしりもちをつきながら首を傾げた。


 「お母様、罰を与えてくださらない?」

 「そうね、どうしましょうかね」


 お母様はそう言うと、そこに置いてあるマドレーヌを一つ床に落とす。


 「それを拾いなさい」


 何となく最悪な想像がついた。手を伸ばせば、その手を踏みつけ、マドレーヌを拾おうとすれば、マドレーヌを踏みつけるのだろう。物語だと『犬のように手を使わないで食べるのよ』なんて言いそうだ。


 拾ったら絶対何かされる。でも拾わなければもっと怒られる。


 仕方ないな。


 私はトコトコっと近寄る。


 つまずいたふりをして、テーブルの上のマドレーヌを全部床にばらまいた。


 「あっ……」と言って、お母様の顔を見た。


 わざとだけど。きっと次は扇が飛んでくる。いつものパターンだ。


 私はお母様が扇で私を叩こうとした瞬間に屈みこんでマドレーヌを拾った。


 「これ?」


 お母様の扇が空を切った。それから拾ったマドレーヌをお母様に見せた。


 私がニッコリ笑うと、お母様は地団駄を踏む。


 その時、私は背後にいるお姉様への警戒がすっかり抜け落ちていた。


 バシャッ!


 突然、頭から冷たい水を浴びせられた。


 お姉様が後ろから水差しの水を掛けたのだ。びっくりしたけど、泣くほどじゃないし、熱いお湯でなくて良かった。


 そう安堵した隙を突かれた。


 次の瞬間、よけたはずのお母様の扇が、ピシャリと頬を打った。


 さすがにこれは痛い。


 私は身を守るためにゴロゴロと床を転がった。コーヒーテーブルの下に隠れた。


 「お母様、この子、腹が立つんですけど、どうするの?」

 「ここに閉じ込めておけばいいわ」

 「でも、さっきの侍女が探しに来るんじゃないかしら」

 「あら、今日は母屋に泊まるっていえば良いのよ」

 「そうよね、明日になれば帰ったのかと思ったっていえば良いだけだしね」


 2人の話を聞きつつ、今日はこのままここで寝るのかな? と思った。


 後で抜け出せないか考えてみよう。


 お母様とお姉様は笑いながらそのまま部屋を出ていった。


 ほっぺがじんじんして涙が出てきた。王宮で一体、何があったんだろう。たかが3歳の私にだ。


 頭から掛けられた水と涙が混じって、なんだかよくわからなかった。


 「痛いよ~」


 と呟いてみた。誰も聞く人はいない。弱音を吐いたっていいよね。誰もいないんだしね。


 たぶん、そのまま寝てしまった。


 気が付くと、辺りは真っ暗だった。


 ――ギシ。


 部屋に人の気配がした。静かに床を踏みしめる音がする。


 泥棒? 私は息をひそめてテーブルの下で丸くなる。


 すると、そばで大きなため息が聞こえる。


 足音は通り過ぎるどころか、私の目の前でピタリと止まった。


 うわっ! どうしよう……。


 ぎゅっと目を固くつむる。




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