46 未来は明るい?
レオンに連れられて、さっきのところまで戻ると、ウィズ達がお弁当を食べていた。
レオンは一人だけご飯も食べずに飛んできてくれたんだ。そう思うとちょっと嬉しかった。
「れお、ご飯食べるでしゅよ」
私がスープを指すと、
「まだ食べるのか?」と、レオンが呆れたように呟く。
違うから、レオンがまだ食べていないのかなって気になっただけなのに。
「違うの。れおがまだ食べていないのでしゅよ!」
「ああ」
レオンはそう言うとスープのカップを取った。私はアップルパイのお替りをもらう。
「ウィズ、さっきのは何だったでしゅか?」
「ああ、昔のお頭が来たんですよ。命知らずですよね」
ウィズはカチャカチャと魔道具をいじりながら、「爆弾巻いて空に飛ばしてやるのも良いな」と口元に悪い笑みを浮かべた。
「じわじわとやってやる」
ジャックが遠くを見つめながら何かを思い出すように呟いた。
その目が怖いんですけど……。
ケルンは壁に向かって黙々とナイフを投げている。一点に集中して……。
皆、だ、大丈夫……?
色々あったんだとは思う。でもなんだか嫌だった。だからつい言ったの。
「お頭は、私の獲物でしゅ」
そう高らかに宣言すると思いっきり高くフォークを持った手を挙げた。
皆は一瞬あっけにとられたみたいだったけど、私に続いた。
「「「「「「「エイエイオー!!!」」」」」」」
洞窟の中に声が鳴り響いた。
「グワーッ!」
んっ?
グワーッ?
……また?
振り向けばあの、緑のふとっちょがいる。
「トカゲ……もとい、竜さん?」
もしかしてついてきたの? 慌ててクーガの顔を見る。竜は私の後ろへと身を隠した。皆の視線が痛いらしい。
「おい、そいつは何だ……」
ジャックが不思議そうにクーガに聞く。
「竜ですよ。ありゃりゃ、すっかり姫様に懐いていますね」
半ば呆れたようにクーガが言った。
「竜! そんなものいたのか?」
ウィズの目が輝く。今にも実験したそうな勢いだ。竜は私の後ろでちょっと震えた。身の危険を感じたんだわ。
「ウィズ、この子は美味しくないでしゅ」
「えっ? 姫様食べる気なんですか……」
「ちがいましゅ」
ウィズは何を言っているのかしら? 私は美味しい物しか食べないんだからね。
「親はいなかったのか?」
レオンの言葉にクーガが頷いた。
「痕跡はなかったですね。盗まれた卵か、忘れられていた卵でしょう。周りにはこの子の殻だと思われるものが少し離れた草むらにあっただけでしたから」
「みなしご?」
「みなしご、というよりはもともと家族を形成しない生き物ですからね。それにしても……」
クーガは言葉を切ると私の顔を見る。
「お屋敷で飼うのは無理ですから」
クーガの言葉に全員が頷く。それぐらい私にだってわかるから。ちょっと頬が膨らんだ。
「そうですね。鍋にしますか?」
ギンの不穏な言葉に竜は「ギィ~」って鳴くと私を見つめた。
鍋にはできない。ゲテモノは得意じゃないもの。
「ここで飼うでしゅ」
「ああ、ここなら飼えますね。言い聞かせられるなら」
クーガに言われてはっとした。
ついてこられたら困るもの。私は竜に向き直った。
「いいこと? ここを守るでしゅよ。ご褒美もってきましゅからね」
竜はご褒美という言葉に嬉しそうにぴょんと跳ねる。私は大きく頷いた。
「ついてきたらダメでしゅから。ハンバーガーも持ってきましゅからね」
今度はしっぽを追いかけるようにクルクル回って「ワォ~ン」と吠えた。さっき教えた時より精度が上がっている。賢いんだわ。
私はいっぱい頭を撫でてあげた。
「お前は……」
レオンが呆れたように自分の頭に手をやる。そばでクーガが目を輝かせた。
「姫様、いつの間に芸を仕込んだんですか?」
いや、そういうわけではないんだけど。ちょっと、暇だっただけでね……。あいまいな笑みを浮かべておく。
「あの短時間で……」
ホルンが感心したように呟く。
「頭のいい動物ってことだな」
隣でケルンがナイフを片付けながらホルンに声を掛けていた。
「名前は付けましたか?」
ギンが私に聞く。
名前? まだだけど。緑色の竜を眺めた。
金色のビー玉みたいな瞳と目が合うと、竜は嬉しそうに「ワォ~ン」と鳴く。
だんだん犬になっていくわね。ワンはまずかったかもしれない。反省しつつ、名前を考える。
「グーは?」
竜は嬉しそうにまたぴょんと跳ねた。
「今日から君はグーでしゅ」
私はまたグーの頭を撫でた。
「そろそろ撤収だ」
レオンの掛け声に私は焦った。まだ石ころを拾っていなかったもの。
「まだ、石ころ拾っていないでしゅ」
私が言うと、ホルンとクーガが持っていたカバンから卵型の石ころをたくさん出してくれた。
「えっ? いつ、拾ったでしゅか?」
「ああ、さっき姫様が落ちた草原の奥にたくさんありましたよ」
クーガの言葉にホルンも頷いた。
「竜の巣の近くですよ。足りなかったですか?」
ホルンの言葉に首を振る。私はそんなに欲張りじゃない。出来れば自分で拾いたかったけど、クーガやホルンが私の為に拾ってくれたなら、それも嬉しかった。
「ありがとう」
そう言うと隣にいたギンに抱き着いた。
「おっと」
不意を突かれたギンは後ろへひっくり返りそうになった。逆さまのお返しだからね。
私はご機嫌で帰路に就いた。グーにしっかり手を振った。また来週には来ないとね。
これから忙しくなりそうだ。石ころ達をどこに並べるか考えなきゃ。
ホルンの背中の袋に目をやる。あの中にはぎっしりと石ころたちが入っている。
自然と私の頬も緩んだ。
私の未来は明るいわ。そう思っていた。
トラブルが待ち受けているなんて思いもしなかった。
誰の頭上にもポップアップは出ていなかったし、今日のご飯も美味しかったし、新しいお友達まで出来たんだもの。
そして私は、なんたってまだ3歳。




