43 石ころ拾いツアーでしゅ!
翌朝、家族が王宮へ出かけたのを見届けると、私は元気よく号令をかけた。
「石ころ拾いツアー出発!」
レオン以下総勢7名。元気よく馬で出発。私はホルンに乗せてもらっている。
一番荷物が多いのはウィズだ。何を持ってきているんだろう?
朝、テッドがお弁当を作ってくれた。ジャックとケルンが大事そうに抱えている。お昼が楽しみだ。
馬車とは違って速いけど、ゴロゴロできない。時々ラグビーボールのようにレオンやクーガにパス回しされる。うとうと寝ていると突然空中を舞っている。
ギャッ!
何度、短い悲鳴をあげたことか……。
「びっくりするから止めて」とレオンに涙目で訴えたら、「起こしてからにするか」と呟いた。
違うから、そこじゃないから!
投げないで!
「優しくするでしゅよ!」
「めしか?」
なんかずれてる……。
でも私のお腹が、ぎゅうルルって答えた。違うのに……。
「休憩に入る」
水辺で馬を休ませる。
「クーガとジャックは周辺の見回りだ」
レオンの一言であっという間に2人が目の前から消えた。凄い……。
ギンの作ってくれたハチミツレモン水を飲んでいると、戻ってきた2人がレオンに何か報告している。どうしたんだろう?
「レオン? なにかあったの?」
「ネズミがいたらしい」
「ねずみ?」
「なんか探っている奴らのことですよ」
ギンが隣で教えてくれた。
「この辺りを嗅ぎ回っていた連中だ」
「ルリアを探るの?」
探られるようなことは何もしていないよ!
なんたって天下の3歳児。隠すことはありません。ギルドマスターじゃあるまいしね。
「お前を探ってどうするんだ」
レオンが呆れたように言う。
えっ、そう言われると……。
実は隠し事があるような気がしてきた。脱税はしていない。拾ったのは石だけだし……。
「れお、わたし、大丈夫かな?」
レオンは何も答えずに向こうへ行ってしまった。無視するのね。
「姫様、やっといたんで、大丈夫っすよ」
クーガが明るい声で言う。この場合のやったとは?
思わず私が首ちょんぱのジェスチャーをする。
「やっぱり、生ぬるかったじゃん」
ジャックが口をはさむ。
「今から行くか」
ちょっと、待ったぁ~。まだやっていないんだよね。ダメだから。人殺しは!
「首ちょんぱはダメでしゅ」
「やっぱり心臓一突きにですよね」
「その方が血が派手じゃないな」
クーガ、違うから。ジャック納得しないで!
「いや、姫様は血は好きじゃない」
おお、ギン、わかってるじゃない。私が大きく頷いていると、ギンが得意げに言う。
「毒殺が一番きれいだ」
違うから、毒殺はダメだから。
「人殺しはダメでしゅ」
ああ~。頭がくらくらしてきた。
「石ころ拾うでしゅよ」
最初の目的を言う。これ以上みんなが物騒なことを言い出さないうちに、私は有無を言わせずに出発した。
のんびりした日常に時々忘れてしまう。
こいつらは暗殺者たちだった……。気をつけねば。
さっき途中で休憩を取ったけど、馬車の時とは違ってあっという間に鉱山へと着いた。
この間は上からしか眺めていない。あの上だったのよねと目の前の崖に目をやる。
崖は30メートルはありそうで、下から見上げると目が眩む。
この崖をレオン達は難なく降りたんだった。レオン達の真似は、到底、出来るようにならないと思った。
いったい今までどんな訓練をしてきたんだろう……。
そんな思いを振り払うように鉱山の入口へ目をやった。
鉱山の入り口は山肌に隠れるように開いている洞窟だ。見張り小屋がなければその存在もわからない。
私はすでに探検ムード、うきうきしながら洞窟の入り口から中を覗く。
薄暗い洞窟の中にはごつごつした岩が落ちていた。
脇で、ウィズが持ってきた荷物をほどいて何やらいろいろと出している。この間は認識障害の魔道具を設置していたわよね。まだいろいろあるのかしら?
「ウィズ、なにしているでしゅか?」
「姫様、ばっちりお任せを。侵入者を知らせる魔道具に記録をする魔道具。いろいろ持ってきたんですよ」
私が聞くと、得意げに広げだした。時間かかりそうね。
「ジャック、ケルン。ウィズを手伝ってやれ。先に行ってる」
レオンはそう言うと私を抱き上げた。
「お前の足では無理だな」
わかっているけどちょっとむっとした。
「ジャックとケルンがお弁当持っているでしゅ」
私の言葉にケルンが手を振る。
「姫様、すぐ行きますよ」
ならいいんだけど、ルリアのカバンには非常食はちゃんと入っているから。遭難した時用にハンバーガーとカステラ持ってきたんだ。ルリアの分だけだけどね。
穴の中はひんやりとした空気が流れてきた。空気の流れはあるみたいだった。ところどころにつるはしやらシャベルが落ちていて、人がいたのがわかる。
「ここが愛の逃避行の現場でしゅね」
「この間のやつらは、もう少し先にいたが、ここはまだ入り口だな」
「れおはこの奥に行ったでしゅか?」
レオンは首を振る。
「それは任務外だったな」
確かに、あの時はそこまで考えていなかった。石で作られたような道がずっと奥まで続いていた。だんだん外の明かり取りの窓が少なくなり暗くなっていく。これじゃあ、石を拾うのも一苦労だわ。
「明かりもいるでしゅね」
後ろからウィズ達の声が聞こえてきた。
「姫様、設置終わりました。お昼にしましょう」
近くの岩場にシートを広げて皆がテキパキとランチの準備を始めた。
古い遺跡でピクニック。テンション上がります。ウィズが魔道具でお湯を沸かしてスープも温めてくれた。いいにおいが立ち込める。
”グォォォォン……”
地鳴りのような音が聞こえて、天井からパラパラと石が落ちてきた。
何の音? 地震?
まさかの火山爆発とか!?
”グォォ~ン”
何かいる?
皆、一気に緊張が走る。




