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かぼちゃのパンツはもういらない~弱みを握ればこっちのもの!  作者: 星降る夜


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39 お日様もお出かけ中


 今日は朝から、なんだか体が重たい。

 部屋の中も薄暗くて、お日様まで、一緒にさぼっているみたいだ。


 寒くてお布団の中にうずくまる。


 「お嬢様。朝ですよ」


 いつもの様にスーザンが来て、声をかけるけど、起きたくなくてますますお布団にもぐりこんだ。


 「お嬢様?」


 スーザンがベッドの脇に来て、私からお布団をはいだ。ぶるっと寒気がして、お布団にへばりつく。


 「お嬢様、どうしました?」


 スーザンはそう言いながら手をそっと私の額に当てた。


 「お熱がありますね」

 「お熱はないもん」


 私はすかさず言う。苦いお薬は嫌いだ。

 スーザンからお布団を引っ張るとまたもぐりこんだ。


 「冬眠しゅる」


 そう言ったまま、ふわふわと意識が沈んでいった。


 だんだん頭が痛くなってきて変な夢ばかりを見ていた。お腹がすいてハンバーガーショップに行くんだけど、順番を抜かされていつまでたっても注文できないんだ。何故か背が小さくなってカウンターに届かなかった。


 う~ん、う~ん。届かない。向こうを見たいのに覗けないんだ。遠くで誰かの声が聞こえた。


 「姫様、熱はあるけど、そんなに高くはなさそうだ」


 そういうと誰かが私の首筋を撫でた。ひんやりとした温度が気持ちいい。


 目を開けると、レオンとギンが私の顔を覗いていた。


 「れお、ぎん? 私、冬眠中でしゅ」と、またお布団にもぐりこもうとする私をレオンが抱き上げる。


 「お薬持ってきました。お口を開けてください」


 ギンが優しく言うけど苦いのは嫌いだ。私は口を真一文字に結んで首を振った。


 「鼻つまむか」


 レオンがギンに聞く。


 ……レオンは優しくない。なんてことを言うんでしゅか?


 「れお、ひどい……ごくあくひどうでしゅ……」


 私はレオンの胸に顔をうずめた。絶対に顔はあげない。


 「これは、生姜にはちみつ、レモンが入っていますよ。甘いんですよ」

 「んっ、あまいの?」


 私が聞くとギンはニッコリ笑って答えた。


 「僕の特製です」


 ギンは薬草にも詳しかった。お薬も作れるかもしれない。私は恐る恐る訪ねた。


 「毒?」


 私が聞くとギンは慌てて首を振る。


 「そんなことしたら僕が先に死にます」


 そういうと一口飲みこんだ。「ほらね!」と、にっこりと笑う。


 いつまでも駄々をこねていても仕方がないわ。女は度胸ね。前を向くと、お口を開けた。


 甘酸っぱい薬が喉を通る。


 「苦くないでしゅ」


 私が言うとギンが笑う。安心したら夢で見たハンバーガーショップに行きたくなった。


 「お腹しゅいた。ハンバーガー食べるでしゅ」


 私が言うとギンとレオンが困ったように顔を見合わせた。


 「ハン……バーガー?」


 レオンが困惑したように小声で尋ねる。


 私は熱でぼんやりする頭のまま、レオンの服をぎゅっと握った。


 「まぁるいパンに……おにく、はさんで……じゅーって焼くの……」


 声が小さくなる。さっきの甘いお薬のせいか、またひどく眠くなってきた。ハンバーガーの映像だけが頭の中をフワフワと浮いている。


 「パンに肉を挟んで焼く……?」


 ギンが顎に手を当てて真剣な顔で呟く。


 「……暗号でしょうか。標的(肉)を挟み撃ちにして、焼き払うという……」

 「ちがう……たべもの……。鉄板で……作ってって……お願いしゅる……」


 もう半分、夢の中だ。私が目を閉じてモゴモゴと呟くと、レオンが静かに頷いたのが気配で分かった。


 そっと、お布団の中に降ろされた。毛布の端を、無言で直してもらった気がした。


 もう一度夢の中でハンバーガーショップに行けるかもしれない。今度はカウンターに背が届くといいな。


 ポン、ポン、と。

 レオンの大きな手が、不器用だけど優しく、お布団の上から私を叩く。


 「ん……おにく、焦がしちゃ『めっ』……だぞ……」


 その心地よいリズムと、はちみつ生姜の甘い余韻に包まれて、私は再び、今度こそハンバーガーに手が届く夢の中へと落ちていった。



   ♢      ♢     ♢


 「姫様が風邪ひいて寝てるって」


 ジャックが厨房に顔を出して言った。


 テッドは「何が良いかな……」と呟きながら野菜を選び出した。


 「小さいのに頑張っているからな」


 感慨深げにテッドが言う。


 「夜に墓地になんて行くからだろう?」


 ウィズがこの間のことを指摘する。そのあとのクリーナーズ20人の訓練までも姫様が教育していた。 とても3歳児にさせることではない。


 「……ハンバーガー食べたいって」


 レオンに「お前、作れ!」と言われたが、そもそも何なのかさっぱりわからない。

 ケルンやホルンに聞いてもわからない。


 「「ハンバーガー!……?」」


 厨房ではコックのテッドと見習いのウィズとジャックが頭を悩ませていた。


 「なんでも肉を焼いてパンにはさむらしい」

 「なんだ、それなら簡単だな」

 「でも、そんなもの食えるか? 熱があるのに」


 鍋の前で腕を組んだまま、気づけば3時間が過ぎていた。


 ——結局、料理は出来なかった。


 「やっぱり、スープだな」


 皆で頷く。元気になったら教えてもらおう。


 厨房に、スープの湯気だけが静かに立ち上っていた。




 今日は少し短めの、静かな回でした。

 ルリアが早く元気になりますように。

 明日の更新は午後になります。

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