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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第21話 カラスの子育て

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(二)カラスは気性が荒い

◆ 問題は、うちの人間


問題は、うちの人間である。


うちの人間は、カラスの声を聞いて顔を上げた。


「あ、カラス」


見れば分かる。


そのまま通り過ぎればよい。


だが、うちの人間は足を止めた。


高い木を見上げる。


「この辺に巣があったよね」


あったよね、ではない。


今もある。


そして、その巣を守っているカラスが、すぐ上から見ている。


枝の上のカラスが、低い声で鳴いた。


「止まったぞ」


もう一羽が答える。


「巣を見てる」


「怪しい」


うちの人間は、さらに木へ近づいた。


枝の隙間をのぞこうとしている。


絵の光る板まで持ち上げた。


写真を撮るつもりなのかもしれない。


カラスからすれば、人間が何を持っているかなど関係ない。


手を上げた。


巣へ何かを向けた。


十分に警戒する行動である。


一羽のカラスが、強く鳴いた。


「離れろ!」


うちの人間が少し肩をすくめた。


「うるさいなあ」


うるさくしている原因は、うちの人間である。


立ち止まらなければ、そこまで強く鳴かれなかった。


巣を見上げなければ、警戒もされなかった。


それでも、うちの人間は動かない。


「どこに巣があるんだろう」


探さなくてよい。


見つけてどうするのだろう。


子がいると確認する。


写真を撮る。


かわいいと言う。


おそらく、それだけである。


だが、親のカラスには、その目的が分からない。


人間が子を見て満足するだけかどうかなど、判断できない。


近づく者は危険。


巣を見る者は危険。


そのように考えるほうが、子を守るには正しい。


人間が、


「見るだけ」


と言ったところで、カラスには関係ない。


見るだけの者と、襲う前に様子を確認する者は、最初の行動が同じだからである。


◆ 次はもっと近く行くぞ


枝の上のカラスが飛び立った。


羽音がする。


うちの人間の頭上を大きく回る。


「離れろ!」


うちの人間がようやく一歩動いた。


だが、離れる方向ではない。


カラスの姿を目で追うため、さらに木の近くへ寄った。


なぜそちらへ行くのだろう。


警告されているのに、警告している者を見ようとする。


人間は危険を感じると、原因を確認したくなるらしい。


だが、確認するために近づけば、相手はさらに警戒する。


カラスがもう一度近くを飛んだ。


今度は先ほどより低い。


うちの人間の頭の少し上を通り過ぎる。


風で髪が揺れた。


うちの人間が声を上げる。


「わっ!」


ようやく危険だと分かったらしい。


カラスは近くの電線へ止まった。


「次はもっと近く行くぞ」


巣のそばにいるカラスが答える。


「まだ離れない」


うちの人間は、頭を押さえながらカラスを見た。


「あーもう、カラスって気性が荒いよね」


違う。


カラスだから気性が荒いのではない。


子育て中だから気性が荒いのである。


正確には、気性が荒くなったのではない。


守る必要があるため、普段より強く警戒している。


その場所から離れればよい。


木を見上げるのをやめればよい。


巣へ近づかなければよい。


カラスが街中の人間を、理由もなく追い回しているわけではない。


うちの人間が子のいる場所へ近づいた。


巣を見上げた。


その場へ立ち続けた。


だから追い払われている。


原因は分かりやすい。


◆ カラスは気性が荒い


それなのに、うちの人間は、


「カラスは気性が荒い」


で話を終わらせた。


相手の事情を考えることなく、種類の性質へしてしまう。


カラスだから乱暴。


犬だから吠える。


猫だから気まぐれ。


鳥だからかわいらしく鳴く。


人間は相手の行動を見ても、そのときの状況をあまり考えない。


最初から持っている印象へ当てはめる。


カラスは怖い。


だから襲ってきた。


自分が巣へ近づいたことは、考えの中から消えている。


うちの人間は歩き出した。


だが、まだカラスを振り返っている。


何度も後ろを見る。


立ち止まりそうになる。


そのたびにカラスが鳴く。


「まだ見てる!」


「早く行け!」


振り返るから警告が続く。


警告が続くから、うちの人間はまた振り返る。


実に効率が悪い。


背を向けて、そのまま離れれば終わる。


シジミは塀の上から、うちの人間へ向かって短く鳴いた。


こちらへ来い。


木から離れろ。


うちの人間がシジミを見る。


「シジミ、怖いの?」


怖いわけではない。


早く離れたほうがよいと教えている。


だが、うちの人間はシジミがカラスを怖がっていると思ったらしい。


「大丈夫だよ。もう行くからね」


最初から、そうしてほしい。


うちの人間は少し足を速めた。


巣のある木から離れる。


カラスの声が弱くなった。


頭上を飛んでいた一羽も、巣の近くへ戻っていく。


追ってこない。


目的は、うちの人間を傷つけることではない。


巣から遠ざけることだった。


離れたから、もう追う必要がない。


それだけである。



※第21話「カラスの子育て」は全三回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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