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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第10話 昼間から遊び歩く人間

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22/110

(二)昼間から遊び歩く人間

◆ 昼間から遊びに出かけた


扉が閉まった。


家の中が静かになる。


シジミは玄関の前で、少しのあいだ耳を澄ませた。


硬い靴の足音が遠ざかっていく。


今日も、昼間から遊びに出かけたらしい。


家にいれば安全なのに。


暖かい寝床もある。


好きなときに水も飲める。


外から何かが入ってくれば、すぐに気づける。


それなのに、わざわざ危険の多い外へ出ていく。


しかも、ほとんど毎日である。


遊びに行くのが好きなのだろう。


うちの人間は、外へ出る前にはたいてい嫌そうな顔をしている。


だが、人間はときどき、楽しみにしていることを隠す。


甘い物を食べる前にも、


「太るからよくないんだけど」


と言う。


そのわりに食べる。


遅くまで絵の動く箱を見るときも、


「肌に悪いから早く寝ないと」


と言う。


そのわりに寝ない。


つまり、外へ出る前の嫌そうな顔も、遊びに行くことを隠すためなのかもしれない。


人間には、人前で楽しそうにしてはいけない決まりでもあるのだろうか。


シジミは長椅子へ戻った。


うちの人間がいなくなった家は広い。


真ん中で寝ても邪魔されない。


窓辺へ行っても、急にカーテンを動かされることがない。


食事の時間まで静かに過ごせる。


うちの人間が家を空けること自体は、悪いことばかりではない。


ただし、外へ行くなら、もっと短い時間で戻ってくるべきである。


猫の散歩は、それほど長くない。


周囲を確認する。


気になる匂いを調べる。


日なたで少し休む。


用事が済めば家へ戻る。


外には危険が多い。


長くいるほど、何かに遭う可能性も増える。


うちの人間は、そのことを分かっていない。


昼を過ぎても戻ってこない。


シジミは窓辺へ移動し、外を見た。


道を歩く人間がいる。


荷物を持った人間。


急いでいる人間。


立ち止まって話している人間。


どの人間も、明るいうちから外を歩き回っている。


人間は家を作った。


雨や風を防げるようにした。


戸をつけ、知らない者が入らないようにした。


食べ物を置く場所も、眠る場所も作った。


長い時間をかけて、安全な場所を用意したはずである。


それなのに、完成すると毎日そこから出ていく。


何のために家を作ったのだろう。


使わないのであれば、初めから外で暮らせばよい。


猫は安全な場所を見つければ、そこを使う。


人間は安全な場所を作ったあと、危険な外へ遊びに行く。


せっかくの知恵を、自分で無駄にしているように見える。


◆ 決まった場所でしかできない遊び


午後になった。


日の当たる場所が少しずつ動く。


シジミも日なたに合わせて移動する。


窓辺。


床。


長椅子の端。


部屋の奥。


人間は、猫が一日中寝ていると思っている。


実際には、日の位置を見ながら最も暖かい場所へ移動している。


外の音も聞いている。


鳥の動きも確認している。


家の中に変わったことがないかも調べている。


ただ横になっているだけではない。


効率よく休みながら、必要な情報を集めているのである。


一方、うちの人間は外で何をしているのだろう。


朝から大きな鞄を持って出かけた。


さぞ楽しい場所へ行っているに違いない。


広い場所を走り回っているのかもしれない。


大勢の人間と遊んでいるのかもしれない。


絵の光る板を使って、何か複雑な遊びをしている可能性もある。


うちの人間は帰ってくると、


「今日も一日、画面を見てた」


と言うことがある。


外まで行って、絵の光る板を見ているらしい。


家にも同じような板がある。


わざわざ遠くへ行く必要はない。


人間の遊びには、場所の決まりがあるのだろうか。


家でしてはいけない遊び。


決まった建物でしかできない遊び。


決まった服を着なければならない遊び。


決まった時間まで帰ってはいけない遊び。


ずいぶん窮屈である。


遊びとは、もっと自由なものだ。


眠りたければ眠る。


走りたければ走る。


気になるものがあれば触る。


飽きたらやめる。


うちの人間は遊ぶために、朝から嫌そうな顔で起き、髪を整え、顔へいろいろ塗り、動きにくい服へ着替え、重い鞄を持ち、遠くまで出かける。


そこまで準備しなければ遊べないのなら、別の遊びを探したほうがよい。


◆ 帰宅時刻の確認


夕方になった。


外が少し暗くなり始める。


だが、うちの人間は戻ってこない。


シジミは玄関の音へ注意を向けながら、食事の皿を見た。


まだ少し早い。


うちの人間が帰ってくる日なら、このあと食事が出る。


しかし、帰りが遅ければ、シジミの食事まで遅くなる。


自分が遊び歩くのは勝手である。


だが、家で待っているシジミの生活へ影響を出すべきではない。


うちの人間には、自分が面倒を見られているという自覚が足りない。


シジミが毎日帰りを確認しているから、この家へ戻ってこられる。


玄関の音がすれば迎えに行く。


外の匂いがついていれば、安全な場所へ行っていたか確かめる。


疲れていれば、長椅子の隣で休ませる。


朝になれば、決まった時間に起きるよう顔の近くへ行く。


これだけ面倒を見ているのに、うちの人間は昼間から勝手に外を歩き回る。


若い人間は落ち着きがない。


日が沈んだ。


窓の外は暗い。


ようやく、人間が動きやすい時間になった。


猫なら、これから周囲を見回してもよい。


昼間より人通りが少ない。


車も減る。


鳥は眠り、虫が動き始める。


だが、うちの人間は昼間から外にいた。


もう十分に遊んだはずである。


それでも帰ってこない。


シジミは玄関へ行った。


扉の向こうへ耳を向ける。


まだ足音はしない。


長椅子へ戻る。


しばらくして、また玄関へ行く。


人間は猫が玄関で待っていると、


「寂しかったの?」


と言う。


違う。


帰宅時刻を確認しているだけである。


食事の時間にも関係する。


戸を開けたままにしないか、見張る必要もある。


外から余計な物を持ち込まないかも確認しなければならない。


人間は自分が待たれていると思いたがる。


実際には管理されているのである。



※第10話「昼間から遊び歩く人間」は全三回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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