第8話 虎吉、開幕まで一週間でそわそわが限界突破
朝の食卓。
虎吉(51)は新聞を広げ、阪神のキャンプ情報を食い入るように読んでいた。
「ふむ……テルの調子ええな……翔太も振れてる……
これは開幕カード、勝ち越し確定やな……」
妻・美津子がコーヒーを置きながら言う。
「アンタ、開幕までまだ一週間あるんやで。
そんな毎日予想して飽きへんの?」
虎吉は真剣に答える。
「飽きるわけないやろ。
開幕一週間前は“阪神ファンの正月”や」
娘・遥香が呆れた顔で言う。
「パパ、正月何回来るん」
虎吉は胸を張る。
「阪神がある限り、毎年何回でも来るんや」
工場でも虎吉は落ち着かない
若手の山根が声をかける。
「社長、今日の納品どうします?」
虎吉はスマホで阪神ニュースを見ながら答える。
「テルの調整具合次第や」
山根「仕事の話してください」
虎吉「仕事も阪神も同じや。
“準備がすべて”や」
山根「いや違います」
開幕スタメン予想で家族会議が始まる
夜、リビング。
虎吉はホワイトボードを持ち出し、家族を集めた。
「よし、開幕巨人戦のスタメン予想会議を始めるで」
美津子「誰も頼んでへん」
遥香「パパ、ホワイトボード買ったん?」
虎吉「阪神のためなら安いもんや」
虎吉は書き始める。
1番 近本
2番 中野
3番 森下翔太
4番 佐藤輝明
5番 大山
6番 前川
7番 木浪
8番 坂本
虎吉は満足げに言う。
「これや。
これが“優勝への道”や
開幕投手はビジターやから村上やろな。」
美津子「アンタの願望やろ」
遥香「てかパパ、毎年同じこと言ってる」
虎吉「毎年言うてええんや。
阪神ファンは“希望を語る生き物”や」
【開幕一週間前の虎吉の特徴】
仕事中に阪神の曲を流す
夕飯中に選手の調子を語る
風呂で岡田監督の名言をつぶやく
寝る前に2023年の日本一動画を見る
朝起きて横田慎太郎の本を読む
そしてまた泣く
美津子「アンタ、情緒どうなってんの」
虎吉「阪神ファンはな……
開幕前が一番忙しいんや」
遥香「何が忙しいん」
虎吉「期待と不安で心が忙しいんや」
最後はしんみり
虎吉はテレビの前で、2023年の優勝パレード映像を見ながらつぶやく。
「開幕したら、また一年が始まるんやな……
今年も阪神と一緒に生きていくで……
大山、チカ、たっくん、テル、翔太……頼むで……」
美津子はそっと言う。
「アンタ、ほんま幸せそうやな」
虎吉は照れくさそうに笑った。
「そらそうよ。
阪神がある限り、ワシは幸せや」




