第11話 開幕巨人戦
2026年3月27日/東京ドーム
夕方6時。
虎吉(51)は、テレビの前に正座していた。
阪神のユニフォームを着込み、タオルを肩にかけ、
手には“勝利のラジオ”を握りしめている。
美津子(妻)は呆れ顔で言う。
「アンタ……正座してテレビ見る人、今どきおらんよ」
虎吉は真剣な目で返す。
「開幕戦はな……“儀式”なんや。
正座で見な、阪神に失礼や」
遥香(娘)はポテチを食べながら笑う。
「パパ、去年も同じこと言ってたで」
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■ 試合開始
アナウンサー
「さあ、2026年プロ野球開幕戦!
阪神タイガース対読売ジャイアンツ!」
虎吉
「よっしゃああああああああああああああああああああ!」
美津子
「うるさい」
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■ 1回裏、キャベッジの先頭打者ホームラン
テレビ
「打ったー!レフトスタンドへ大きな当たり!
キャベッジ、先頭打者ホームラン!」
虎吉
「…………」
遥香
「パパ、固まった」
虎吉
「いや……ええ……これは想定内や……
阪神はな、初物に弱いんや……伝統芸や……」
美津子
「伝統芸言うな」
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■ さらに併殺崩れで2失点
テレビ
「ショートゴロ!……あっと、中野弾いた!
その間に三塁ランナーがホームイン!」
虎吉
「中野ォォォォォォォォォォォ!」
遥香
「パパ、落ち着いて」
虎吉
「落ち着けるかい!
開幕戦の1回で2点ビハインドやぞ!」
美津子
「まだ1回やん」
虎吉
「1回が大事なんや!
人生も野球も“立ち上がり”が命や!」
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■ 4回表、大山の犠牲フライで1点返す
テレビ
「大山、センターへ!犠牲フライには十分!」
虎吉
「よっしゃあああああああああああああああああああ!」
遥香
「パパ、復活早いな」
虎吉
「大山はな……“仕事人”なんや……
派手やないけど、確実に点を取る……
これが阪神の4番や……!」
美津子
「さっきまで泣きそうやったのに」
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■ 4回裏、ダルベックのバックスクリーン弾
テレビ
「打ったー!センター深い!
バックスクリーン直撃のホームラン!」
虎吉
「…………」
遥香
「パパ、また固まった」
虎吉
「……なんで巨人の助っ人は毎年バケモンなんや……
阪神にも一人くらい分けてくれや……」
美津子
「そんな制度ないわ」
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■ 6回、竹丸に三者凡退
テレビ
「竹丸、6回1失点の好投!」
虎吉
「なんやこのルーキー……
阪神キラーの匂いしかしない……」
遥香
「パパ、初物に弱いのは阪神の伝統芸やろ?」
虎吉
「言うな……今日は刺さる……」
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■ 9回表、田中瑛斗に抑えられ試合終了
テレビ
「試合終了!巨人が開幕戦を制しました!」
虎吉
「………………」
美津子
「アンタ、息してる?」
虎吉
「……阪神はな……
開幕戦負けても優勝できるんや……
2023年もそうやった……
つまりこれは……
“優勝フラグ”や……!」
遥香
「ポジティブすぎるやろ」
虎吉
「阪神ファンはな……
ポジティブやないと生きていけんのや……!」
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■ 試合後、虎吉の総括
虎吉
「村上は悪くない。
立ち上がりだけや。
竹丸はええ投手や。
でもな……阪神はここから強くなる。
テルも翔太も、絶対上がってくる。
今年も阪神と一緒に生きるで……!」
美津子
「はいはい、今年も始まったね」
遥香
「パパの“阪神の一年”が」
虎吉は胸を張った。
「そらそうよ。
阪神がある限り、ワシは幸せや」
阪神 1 – 3 巨人
勝:竹丸(巨人)
負:村上(阪神)
S:田中瑛斗(巨人)
本塁打:キャベッジ(巨人)、ダルベック(巨人)




