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からくり道中浪漫譚―白詰草異聞―  作者: ロマリアス
白虎編

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白虎編 第十七話 【道を塞ぐもの】


 夢の中で、明里(あかり)は何度も仁虎を叱った。

 いつも違う場所で。いつも違う言葉で。

 けれど今になって思えば、あれはすべて、同じことを伝えようとしていたのかもしれない。

     ◇

「明里ちゃん、四つ葉です!」

 幼い奏代が、白詰草の群れへ両膝をついていた。小さな指で摘み上げた葉を、得意げに明里へ差し出す。

 明里は隣へしゃがみ込み、その葉を覗き込んだ。

「三つ葉ですよ」

「いえ、ほら。ここに小さいのがもう一枚」

 奏代(かなよ)が葉を傾ける。

 大きな三枚の葉の陰に隠れるように、まだ生まれたばかりの小さな葉があった。

「本当ですね」

「きっと、いいことがありますよ」

「では、半分ずつにしましょうか」

「葉っぱをですか?」

「いいことを、です」

 奏代はしばらく考えた後、嬉しそうに笑った。

「はい!」

 その笑顔を見て、明里も静かに微笑んだ。

 二人は幼い頃から、いつも一緒だった。

 明里が薬を持って町を歩けば、奏代は食べ物を入れた籠を抱えて隣を歩いた。

 病に伏した者がいれば、明里は容体を尋ねる。家族を亡くした者がいれば、奏代は温かい汁物を作る。

 何をすべきかを考えるのが明里だった。その場で誰が一人になっているかに気づくのが奏代だった。

 二人が町を歩くようになると、やがて人々は明里の名を知るようになった。

「明里様」

 道端で老婆が手を合わせる。

 明里は困ったように眉を下げた。

「どうか、お顔を上げてください」

「明里様のお薬で、孫の熱が下がりまして」

「薬を作ったのは薬師の先生です。私は運んだだけですよ」

「それでも、明里様が来てくださらなければ、あの子は助かりませんでした」

 老婆は何度も頭を下げた。

 少し離れた場所で、奏代が苦笑する。

「また明里様と呼ばれていますね」

「何度申し上げても、やめてくださらないのです」

「嫌なのですか?」

 明里は少し考えた。

「困りはします」

「では、もう少し強くお断りすれば」

「ですが、あの方々が安心なさるのであれば、無理に否定する必要もないでしょう」

 明里は老婆の背を見送った。

「私の名前が、少しでも心を落ち着かせるものになるのでしたら、それも役目なのだと思います」

「明里ちゃんらしいです」

「そうでしょうか」

「はい。とても」

 奏代は笑い、明里の荷物を半分持った。

     ◇

 その頃の仁虎は、町で最も関わり合いになりたくない男として知られていた。

 気に入らないものは壊す。目障りな相手は殴る。自分が正しいかどうかなど、考えたこともなかった。

 そんな仁虎でさえ、明里という名は聞いたことがあった。

 病人へ薬を運び、困窮する者の相談に乗り、身分の分け隔てなく人を助けて回る女。年寄りの中には「明里様」と呼び、手を合わせる者までいるという。

 仁虎には、よく分からなかった。

 善人を名乗る者など、大抵は人目のある場所でしか善い顔をしない。明里という女も、似たようなものだろうと思っていた。

 その日、仁虎は路地裏で三人の男を地面へ転がしていた。

 路地の隅には、幼い子どもを抱いた女が座り込んでいる。

 男たちは、病に伏した夫の借金を理由に、女から薬代まで巻き上げようとしていた。

「返せ」

 仁虎は倒れた男の胸ぐらを掴み上げた。

「な、何をだよ……」

「あの女から取った金だ」

「借りたもんを返してもらってるだけだ!」

「だったら、立てねえ病人から直接取れ」

「そんなことしたら死んじまうだろ!」

 仁虎の目が細くなる。

「分かってんじゃねえか」

 拳が男の顔へ叩き込まれた。

 男は地面へ転がった。仁虎はその腹を蹴り、さらに殴ろうと腕を振り上げる。

「やめてください!」

 背後から声が飛んだ。

 仁虎は振り向いた。

 路地の入り口に、二人の女が立っていた。

 一人は食べ物の入った籠を抱えている。もう一人は薬箱を手にし、その娘を庇うように半歩前へ出ていた。

 派手な装いではない。

 だが、仁虎にはすぐに分かった。

 町の者たちが口を揃えて語る女。

「……お前が明里か」

 女はわずかに目を見開いた。

「はい」

 それから仁虎の顔を見て、静かに続ける。

「あなたが、仁虎さんですね」

「知ってんのか」

「お名前は、かねてより」

「ろくな話じゃねえだろ」

「それは、ご想像にお任せします」

 後ろの奏代が、明里の袖をそっと引いた。

「明里ちゃん……」

 明里の指先は震えていた。

 仁虎の評判を知っているのだ。怖くないはずがない。それでも逃げずに、仁虎を真っ直ぐ見ていた。

「その方を離してください」

「こいつらが何をしてたか知ってんのか」

「拝見しておりました」

「なら黙ってろ」

「できません」

 明里は即座に答えた。

「この方々がしたことは、決して許されることではありません」

「だったら邪魔すんな」

「ですが、悪いことをした方なら、何をしてもよいのですか」

「少なくとも、俺はそう思ってる」

「私は、そうは思いません」

 仁虎は男の胸ぐらを掴んだまま、明里を睨んだ。

「こいつを放せば、また同じことをする」

「ですから、奪ったお金を返していただき、二度と同じことができないよう、町の方々にも事情を知らせます」

「甘えな」

「そうかもしれません」

 明里は一歩近づいた。

 奏代が息を呑む。

「ですが、あなたがこの方を動けなくなるまで殴ったところで、あちらの親子の暮らしが良くなるわけではありません」

 仁虎は路地の隅を見る。

 女は子どもを抱き締めながら、怯えた目でこちらを見ていた。

「助けたんじゃねえ」

 仁虎が言った。

「こいつらが気に入らなかっただけだ」

「そうですか」

 明里は否定しなかった。

「それでも、あの方々が助かったことに変わりはありません」

「善人扱いする気か」

「いいえ」

 明里は静かに答えた。

「あなたは今、とても危険な方です」

「正直だな」

「嘘を申し上げる理由がありませんので」

 仁虎は鼻を鳴らした。

「その方を離してください」

「断る」

「では、離してくださるまで、ここにおります」

「怖くねえのか」

 明里は少しだけ間を置いた。

「怖いですよ」

 素直な答えだった。

「ですが、怖いから黙るのは、もっと嫌です」

 仁虎は明里を見た。

 虚勢ではない。怯えていることを隠そうともしていない。その上で、ここに立っている。

 仁虎は今まで、恐怖を見せながら自分から目を逸らさない人間を知らなかった。

 しばらく、二人は睨み合った。

 やがて仁虎は、男の胸ぐらから手を離した。

「金を返せ」

 男は震える手で懐から金を取り出した。

 仁虎はそれを奪い、親子の前へ投げる。

「二度とこいつらに近づくな」

 三人の男は、転がるように路地から逃げていった。

 明里はその背を見送り、それから仁虎へ向き直る。

「ありがとうございます」

「礼を言うな」

「では、次はもう少し早く手を止めてください」

「それは約束できねえ」

「そうですか」

 明里は小さく息を吐いた。

「では、次もお止めします」

「勝手にしろ」

「はい。そういたします」

 明里は、ほんの少しだけ笑った。

 仁虎はその顔を見て、なぜか目を逸らした。

 その日、仁虎は初めて、町の噂に聞く「明里様」ではなく、明里という一人の女を見た。

 そして明里もまた、町の者たちが恐れる乱暴者ではなく、仁虎という一人の男を見た。

 それが、二人が初めて言葉を交わした日だった。

     ◇

 それから仁虎は、何度も明里に叱られることになった。

 長屋の立ち退きを迫る役人を追い払った時。労働者を殴った親方を、半死半生にした時。明里を偽善者と笑った男を、町の外まで追い回した時。

「私の名を理由にしないでくださいと、最初に申し上げましたよね」

「覚えてねえ」

「嘘ですね」

「証拠があんのか」

「私の顔を見て、目を逸らしました」

 仁虎は舌打ちした。

「二度としないでください」

「それは約束できねえ」

「では、次も叱ります」

「好きにしろ」

「はい。そういたします」

 毎回、同じやり取りだった。

 それでも仁虎は、少しずつ変わった。

 殴る前に明里の顔が浮かぶようになった。壊す前に、その後を考えるようになった。

 自分が邪魔だと思ったものと、本当に誰かの道を塞いでいるものが、必ずしも同じではないと知った。

 明里は仁虎を善人だとは言わなかった。隠れた優しさがあるとも言わなかった。

 ただ、したことの結果を見なさいと言った。

 壊したのなら、直しなさい。

 傷つけたのなら、責任を取りなさい。

 誰かのためだと言うのなら、その誰かの意思を聞きなさい。

 仁虎にとって、それはどんな拳よりも厄介だった。

 だが、不思議と逃げようとは思わなかった。

     ◇

 明里と奏代の周囲には、少しずつ人が集まり始めていた。

 薬師。職人。商人。元武士。警邏隊に居場所を失った者。誰かを助けたいが、何をすればよいか分からない者。

 明里は人々の話を聞き、何が必要かを考え、役目を決めた。

 奏代は皆が食べられるように鍋を用意し、疲れた者へ座る場所を作った。

 仁虎は崩れた橋を直し、荷を運び、時には話の通じない相手を睨みつけた。

「俺だけ雑じゃねえか」

「仁虎さんにしかできないお役目ですよ」

 明里が言う。

「便利に使ってるだけだろ」

「はい」

「否定しろ」

 奏代が吹き出した。

「明里ちゃん、少し仁虎さんの扱いに慣れてきましたね」

「慣れたくはありませんでした」

「聞こえてんぞ」

 それでも仁虎は、頼まれれば来た。

 文句を言いながら荷を運び、橋を直し、道を開けた。

 やがて彼らは、自分たちを白詰草同盟と呼ぶようになった。

 踏まれても、また起き上がる。一人では小さな葉でも、寄り添えば地面を覆う。

 明里が掲げた理想を、奏代が暮らしへ変え、仁虎たちが支えた。

     ◇

 ある冬、南区の蒸気工場で火災が起きた。

 機関の配管が破裂し、作業場へ熱気と煙が満ちた。

 明里と奏代は、負傷者の救護へ向かった。

 仁虎は逃げ遅れた作業員を外へ運び出した。

 崩れた通路の奥で、明里が一人の男の脚へ添え木を当てていた。

「明里、出るぞ」

「この方を先に」

「歩けねえだろ」

「ですから、肩をお貸しください」

 仁虎は男を背負い上げた。

 その時、天井から瓦礫が落ち、通路を塞いだ。

 仁虎は壁へ拳を当てる。

「壊せますか」

「壊せる」

「その先に人はいませんか」

 仁虎は耳を澄ませた。

 壁の向こうから、助けを求める声が聞こえた。

「いるな」

「では、そちらを先に」

「お前はどうする」

「ここで待ちます」

「煙が回ってる」

「分かっています」

 明里の顔にも、不安が浮かんでいた。

「ですが、仁虎さんなら戻ってきてくださいます」

 仁虎は明里を見た。

「勝手に決めんな」

「違います」

 明里は静かに答えた。

「信じているのです」

 仁虎は舌打ちし、負傷者を背負ったまま別の通路へ向かった。

 取り残された者たちを外へ運び、すぐに引き返す。

 崩れた壁を慎重に取り除く。

 やがて開いた隙間の向こうに、埃まみれの明里が座り込んでいるのが見えた。

「明里」

 仁虎が呼ぶ。

 明里は顔を上げた。

「仁虎さん……」

 その声を聞くなり、仁虎は残った瓦礫を押し退け、明里のもとへ入った。

「怪我は」

「大きなものは、ないと思います」

「立てるか」

「はい」

 明里は壁へ手をつき、立ち上がろうとした。

 だが、膝から力が抜ける。

 仁虎がその身体を抱き留めた。

「どこが大丈夫だ」

「申し訳ありません」

「謝るくらいなら、最初から無茶すんじゃねえ」

「それは、仁虎さんにだけは言われたくありません」

 弱々しいながらも、いつもの調子で返された。

 仁虎は言い返そうとして、やめた。

 腕の中の明里が、かすかに震えていたからだ。

「……怖かったか」

「はい」

 明里は誤魔化さなかった。

「とても、怖かったです」

「なら、何で残った」

「あの方を置いてはいけませんでした」

「そうじゃねえ」

 仁虎は明里を見下ろした。

「俺が戻らなかったら、どうするつもりだった」

「戻ってきてくださると思っていました」

「だから、勝手に決めんな」

「ですから、決めたのではありません」

 明里の手が、仁虎の着物を掴んだ。

「……信じたんだろ、俺を」

 仁虎は頭を掻きながら、そう言った。

 明里は黙って仁虎に微笑んだ。

「少しだけ、このままでいていただけますか」

「お前が、そんなこと言うのか」

「私も、たまには誰かに支えてほしいのです」

 仁虎は明里を抱く腕へ、少しだけ力を込めた。

 明里が初めて、自分の弱さを仁虎へ預けた日だった。

 そして仁虎が初めて、誰かの意思を信じて戻った日だった。

     ◇

 その縁談が持ち込まれたのは、それからしばらく後だった。

 相手は東風国(こちこく)の名家、坂東家。

 坂東製鉄を擁し、鉄道や蒸気機関の発展によって急速に勢力を広げていた家だった。

 相手の名は、坂東掌一郎(ばんどうしょういちろう)

 坂東家の嫡男でありながら、若くして多くの事業を任される人物だという。

 話を聞いた明里の両親は、驚き、喜んだ。

「明里。こんな話は二度とないぞ」

「坂東家へ嫁げば、お前はもっと大勢の人を助けられる」

「この町だけで終わる器ではないと、皆が言っているのだ」

 明里は両親の言葉を静かに聞いた。

「ありがたいお話です」

「なら」

「ですが、お断りいたします」

 両親は言葉を失った。

 町の者たちも騒いだ。

 仁虎は何も言わなかった。

 言えば、自分の望みだけで明里の道を塞ぐ気がした。

 だが、明里が東風国へ行く姿を想像するたび、胸の奥が焼けるように痛んだ。

 数日後、掌一郎本人が皇都を訪れた。

 若いながら落ち着いた佇まいを持ち、言葉にも人を惹きつける力があった。

 彼は明里を前にしても、家柄を笠に着なかった。

「あなたほどの方が、この街だけに留まる必要はないと思っています」

 掌一郎は率直に言った。

「東風国には、あなたの力を必要としている者が大勢いる。我が家の名と力を使えば、ここで十人を救う間に、百人を救えるでしょう」

「そうかもしれません」

 明里は否定しなかった。

「それでも、私はこの街におります」

「理由を伺っても?」

「私は、この街だけに留まっているのではありません」

 明里は窓の外を見た。

 長屋の屋根。工場の煙突。往来を行き交う人々。

「ここにいる方々と、生きているのです」

「その方々のために、より大きな力を得る道もある」

「それは、坂東様が私のためにお選びになった道です」

 掌一郎は黙った。

「自由の風を尊ぶ国の方が、私の意思をお尋ねにならないのですか」

 責める口調ではなかった。

 だからこそ、その言葉は深く届いた。

 掌一郎はしばらく明里を見つめた後、静かに頭を下げた。

「失礼しました」

「いいえ」

「では改めて、お尋ねします。あなたは、何を望んでおられるのですか」

 明里は答えた。

「自分で選んだ場所で、自分の大切な方々と生きることを」

     ◇

 掌一郎が明里の家を辞した後、門の外には仁虎が立っていた。

「明里殿が縁談を断った理由は、あなたか?」

 掌一郎が尋ねる。

「知らねえ」

 仁虎は壁へ背を預けたまま答えた。

「本人に聞け」

「止めなかったのか」

「俺が決めることじゃねえ」

 掌一郎は仁虎を見た。

「あなたは、明里殿に東風国へ行ってほしいのか」

「行ってほしくねえ」

 仁虎は即座に答えた。

「だが、俺のために残れとは言えねえ」

「なぜだ」

「明里の道は、明里が決める」

 掌一郎はしばらく黙っていた。

「あなたが縁談を妨げた男ではないことは、分かった」

「初めからそう言ってんだろ」

「それでも、念のため確かめたかった」

 掌一郎はわずかに笑った。

「失礼した」

「分かりゃいい」

「明里殿の意思は尊重する」

 それだけ言い残し、掌一郎はその場を去った。

 縁談の後、彼は海外へ渡った。

 坂東家の事業を異国へ広げるためだった。

 その名が東西の新聞を賑わせるようになるのは、それから数年後のことである。

     ◇

 その夜、明里は仁虎を呼び出した。

「縁談をお断りしました」

「聞いた」

「何も言ってくださらないのですね」

「俺が決めることじゃねえ」

「そうですね」

 明里はしばらく黙った。

「ですが、私は仁虎さんのお気持ちを聞きたいのです」

「聞いてどうする」

「私が決めるために必要です」

 仁虎は拳を握った。

「行ってほしくねえ」

 明里が目を上げる。

「ここにいてほしい」

「はい」

「俺の隣にいろと言いてえ」

 声がかすれた。

「だが、お前の道まで俺が決めたくねえ」

 明里は静かに笑った。

「では、私が決めます」

 一歩、仁虎へ近づく。

「私は、仁虎さんの隣にいたいです」

 仁虎は何も言えなかった。

 明里がその大きな手へ、自分の手を重ねた。

「私の選んだ道です」

     ◇

 二人は結ばれた。

 豪華な式ではなかった。

 白詰草同盟の者たちと、町の人々に囲まれた小さな祝言だった。

 奏代は朝から泣いていた。

「まだ始まってもいないのに、なぜ泣いているのですか」

「明里ちゃんが、お嫁に行ってしまうからです」

「同じ町ですよ」

「それでもです」

「では、毎日会いに来てください」

「はい」

「毎日は来るな」

 仁虎が言う。

「仁虎さん」

「冗談だ」

「向いていませんよ」

 皆が笑った。

 やがて明里の腹に、新しい命が宿った。

     ◇

 出産の日、仁虎は部屋の外を何度も往復した。

 柱へ拳を置きかけ、そのたびに手を引っ込める。

 戸が少し開き、奏代が顔を出す。

「仁虎さん」

「何だ」

「壊さないでくださいね」

「分かってる」

「明里ちゃんが部屋から出てきた時に、家がなくなっていたら困ります」

「分かってるっつってんだろ」

 長い夜だった。

 敵なら倒せる。瓦礫ならどかせる。火事なら飛び込める。

 だが、明里の苦しむ声を聞きながら、仁虎には何もできなかった。

 やがて、赤子の泣き声が響いた。

 戸が開く。

 奏代の目には涙が浮かんでいた。

「女の子ですよ」

 仁虎は部屋へ入った。

 寝台には、疲れ切った明里が横たわっている。その腕の中に、小さな命がいた。

「こちらへ」

 明里に呼ばれ、仁虎は近づいた。

 産婆から赤子を渡される。

 大きな腕の中で、あまりにも小さかった。

「……軽すぎる」

「どんどん重くなりますよ」

「早くそうなってもらわねえと」

「どうしてですか?」

「くしゃみしただけで壊れちまいそうだ」

 仁虎の手が震えていた。

 人を殴り、物を壊し、血にまみれてきた手だった。

 明里はその手へ、自分の手を重ねた。

「大丈夫です」

「何がだ」

「その手は、壊すことしかできない手ではありません」

 赤子の小さな指が、仁虎の指を握った。

 仁虎は息を止めた。

「今、俺を見た」

「まだよく見えていませんよ」

 奏代が笑う。

「見た」

「そういうことにしておきましょう」

 明里は赤子を見つめた。

「亜呂と名づけたいと思っています」

「亜呂」

「私たちの次に生まれ、この世へ新しい調べを加える子です」

「俺たちと同じ道を歩かせるのか」

「いいえ」

 明里は首を振った。

「この子自身の道を歩いてほしいのです」

 仁虎は腕の中の亜呂を見た。

「俺が守る」

「はい。守ってください」

 明里は優しく言った。

     ◇

 亜呂はよく笑う子に育った。

 転べば泣いた。虫を見つければ追いかけた。仁虎の肩へ登ろうとして、明里に止められた。

「父上は山ではありませんよ」

「山より大きい」

 幼い亜呂が言う。

「誰が山だ」

「父上」

 明里が笑った。

 亜呂は母の真似をするのが好きだった。

 怪我をした子がいれば、草を摘んで傷へ当てようとした。泣いている者がいれば、頭を撫でた。

「よしよし、怖かったね。もう大丈夫らよ」

 舌足らずな声でそう言いながら、自分まで泣きそうになる。

「誰に教わった」

 仁虎が尋ねる。

「母上」

「そうか」

 明里は少し照れたように笑った。

 穏やかな日々だった。

 長く続くと、誰もが思っていた。

     ◇

 異変が起きたのは、亜呂が六つになった年だった。

 皇都南部で、大地が鳴った。

 天礎石を用いた新たな蒸気設備の試運転中、地下で何かが弾けた。

 地面に亀裂が走り、建物が沈み、地下から白い霧と怪異が溢れた。

 当時、それを地脈崩壊と呼ぶ者はいなかった。

 ただの事故。蒸気機関の暴走。地盤の崩落。

 人々はそう考えた。

 明里と奏代は、負傷者の救護へ向かった。

 亜呂は救護所として使われていた寺へ預けられた。

「ここから出てはいけませんよ」

 明里は亜呂の目を見て言った。

「はい、母上」

「必ず戻ります」

 亜呂は頷いた。

 だが、その直後に大きな余震が起きた。

 寺の中は混乱に包まれた。

 泣き出す子ども。負傷者を運ぶ大人。名を呼び合う声。

 その中で、一人の幼い男の子が母親を探して外へ飛び出した。

「待って!」

 亜呂は反射的にその後を追った。

 寺の者が気づいた時には、二人の姿はなかった。

     ◇

「仁虎さん!」

 崩れた道の向こうから、奏代が走ってくる。

「亜呂ちゃんが寺からいなくなりました!」

 仁虎の顔色が変わった。

 亜呂は、泣いていた子どもを追って崩れかけた建物へ入っていた。

 明里が先に見つけた。

「亜呂!」

「母上……!」

 天井が軋む。

 床の亀裂から、白い霧が噴き上がった。

 明里は亜呂と男の子を抱き寄せ、出口へ向かう。

 その時、建物全体が傾いた。

 大きな梁が落ち、退路を塞ぐ。

「明里!」

 仁虎の声だった。

 崩れた通りの向こうから、仁虎が走ってくる。

 あと少しだった。ほんの数歩。

 だが、二人の間に新たな亀裂が走った。

 その下では、避難する人々が細い橋を渡っていた。

 仁虎が力任せに踏み越えれば、周囲の地盤ごと崩れる。

「来ないでください!」

 明里が叫んだ。

「黙ってろ!」

 仁虎は止まらない。

「仁虎さん、橋を!」

「お前が先だ!」

「まだ皆さんが渡っています!」

「知るか!」

「仁虎さん!」

 明里の声が、強く響いた。

「私を信じてください!」

 かつて、工場で同じ言葉を聞いた。

 あの時、仁虎は戻った。そして、間に合った。

 仁虎の足が止まる。

 その一瞬の間にも、橋は大きく沈んでいく。

 仁虎は歯を食いしばり、崩れかけた橋脚へ飛びついた。

 両腕で支える。

「早く渡れ!」

 人々が走る。

 一人。二人。三人。

 最後の者が渡り終える。

 仁虎は橋脚を放り出し、明里たちへ走った。

 間に合う。

 今度も、間に合うはずだった。

 明里は先に男の子を押し出した。

 仁虎の腕が、その小さな身体を受け止める。

 次に、亜呂を抱きしめる。

「亜呂」

「母上……」

「大丈夫です」

 天井が崩れ始めた。

「父上のところへ」

 明里は亜呂を押し出した。

 仁虎がその身体を受け止める。

 もう一方の手が、明里へ伸びる。

 指先が触れた。

 あと少しだった。

 ほんの少し。

 次の瞬間、梁と石が明里の上へ崩れ落ちた。

「明里――!」

     ◇

 明里は、まだ生きていた。

 全身に重い傷を負いながらも、瓦礫の下から救い出された。

 仁虎は血に濡れた明里を抱え、何度も名前を呼んだ。

「明里。目を開けろ」

 明里の瞼がわずかに動く。

「……亜呂は?」

「無事だ」

「男の子は……」

「あいつも生きてる」

 明里は小さく息を吐いた。

「よかった……」

「喋るな」

「はい」

「すぐ治してやる」

「はい」

 仁虎は、明里が助かると信じた。

 信じなければならなかった。

 だが、傷を塞いでも熱が下がらなかった。

 地脈から噴き出した白い霧を吸い込んだためか、明里の身体は内側から弱っていった。

 医師にも、薬師にも、原因が分からなかった。

 次の日、明里は目を覚ました。

 枕元へ亜呂が来る。

「母上、痛い?」

「少しだけ」

「亜呂が、ふうってしてあげます」

 亜呂が傷の近くへ息を吹きかける。

 明里は笑った。

「ありがとうございます。少し楽になりました」

 二日目、医師は仁虎へ、もう助からないと告げた。

「何でもいい!」

 仁虎は医師の胸ぐらを掴みかけ、途中で手を止めた。

「薬でも機械でも東風国からでも持ってこい!」

「仁虎さん」

 明里が呼ぶ。

「黙ってろ」

「こちらへ来てください」

「寝てろ」

「仁虎さん」

 仁虎は寝台の横へ座った。

 明里が、その手を取る。

「この手に、亜呂を預けてよかった」

「預けるな」

 仁虎は俯いた。

「お前も一緒に育てろ」

「……はい」

「はいじゃねえ」

 明里は弱々しく笑った。

 三日目の明け方。

 奏代が眠った亜呂を抱いていた。

 仁虎は明里の手を握っていた。

「仁虎さん」

「いる」

「亜呂を、守ってください」

「分かってる」

「ですが、あの子の道まで決めないでください」

 仁虎は答えなかった。

「この子が進むと決めた時は、信じてあげてください」

「……難しい」

「そうですか」

 明里は微笑んだ。

「では、少しずつで」

 それから奏代を見る。

「奏ちゃん」

「はい」

「仁虎さんと亜呂を、お願いします」

「嫌です」

 奏代の声が震えた。

「自分でお願いします」

「……そうですね」

「明里ちゃんが言ってください」

「はい」

 明里は、仁虎の手を握ったまま目を閉じた。

 東の空が白み始めていた。

 鳥の声が聞こえた。

「明里」

 返事はなかった。

「明里」

 仁虎は何度も呼んだ。

 けれど、明里のいない最初の朝は、何事もなかったように始まった。

     ◇

 仁虎は泣かなかった。

 葬儀の手配をした。亜呂へ食事を与えた。白詰草同盟へ指示を出した。町の復旧にも出た。

 皆は、仁虎は強いと言った。

 だが、葬儀が終わり、町が日常へ戻り始めると、仁虎は家へ帰らなくなった。

 酒場へ入り浸り、事故に関係した者を探し、殴った。

 役人。工事の責任者。採掘業者。

 誰かを責めなければ、自分を責め続けるしかなかった。

 昔の無法者へ戻ったように見えた。

 だが、昔とは違った。

 昔は、気に入らないから壊した。

 今は、自分を壊すために暴れていた。

 ある夜、仁虎は傷だらけで家へ戻った。

 戸口には奏代が立っていた。

「どけ」

「どきません」

「俺に構うな」

「いつまで明里ちゃんを言い訳にするつもりですか!」

 奏代の声が、屋敷へ響いた。

 仁虎の目が鋭くなる。

「……何だと」

「明里ちゃんが亡くなったから、誰を傷つけてもよいのですか」

「お前に何が分かる」

 乾いた音がした。

 奏代の手が、仁虎の頬を打っていた。

 打った方の手が、赤く震えている。

「分かります!」

 奏代の目から涙が溢れた。

「私も、明里ちゃんを失ったんです!」

 仁虎が黙る。

「私だって帰ってきてほしい!」

「……」

「誰の食事も作りたくありません。誰の世話もしたくありません。何も考えず、ずっと泣いていたいです!」

 奏代は手で涙を拭った。

「でも、亜呂ちゃんは毎晩、戸口であなたを待っているんです」

「……」

「お母さんが帰ってこないのに、お父さんまで帰ってこないんです!」

 仁虎は、屋敷の奥を見た。

「明里ちゃんの代わりになれとは言いません」

 奏代の声が弱くなる。

「明里ちゃんを忘れろとも言いません」

 一歩、仁虎へ近づく。

「ただ、亜呂ちゃんのお父さんまで死なないでください」

 廊下の奥から、小さな足音がした。

「父上……?」

 亜呂が立っていた。

 眠そうな目で仁虎を見ている。

「父上、おかえりなさい」

 仁虎の膝から力が抜けた。

 床へ膝をつく。

 亜呂の小さな身体を抱きしめた。

 初めは、声を出すまいとしていた。

 だが、抑えきれなかった。

 明里を失ってから初めて、仁虎は泣いた。

 大きな肩が震える。

 亜呂は驚いたように父を見た。

 仁虎が泣く姿など、初めて見たのだろう。

 やがて、小さな手が仁虎の頭へ伸びた。

「よしよし、怖かったね」

 亜呂は背伸びをしながら、必死に父の頭を撫でようとする。

「もう大丈夫らよ」

 仁虎は、その言葉を知っていた。

 亜呂が泣いている子どもへ、何度もそうしている姿を見てきた。明里に教わったのだと、本人の口からも聞いていた。

 だが、その小さな手が自分へ向けられたのは、初めてだった。

 明里から亜呂へ渡されたものが、今度は自分へ返ってきた。

 仁虎は、人に頭を撫でられた記憶がなかった。

 慰められたこともなかった。

 頭を押さえつけられれば、その腕をへし折ってきた。

 そんな男が、幼い娘の手の下で、声を上げて泣いた。

 奏代は口元を手で覆った。

 けれど、こみ上げる涙も嗚咽も、止めることはできなかった。

     ◇

 それからしばらくして、仁虎は再び町へ出るようになった。

 以前のように、酒場で喧嘩をするためではない。

 崩れた家を直し、荷を運び、行き場を失った者のために空き家を探した。

 言葉の通じない相手には、以前と変わらぬ顔で睨みを利かせた。

 ただし、拳を振るう前に、一度だけ立ち止まるようになった。

 昔から仁虎の周囲をうろついていた男たちも、いつの間にか戻ってきていた。

 喧嘩っ早い者。仕事が長続きしない者。家族から見放された者。町のどこにも居場所を持たない者たちだった。

 明里が生きていた頃、彼らは仁虎に言われるまま、白詰草同盟の荷運びや復旧作業を手伝っていた。

 仁虎が荒れてからも、完全に離れていった者は少なかった。

 ある朝、仁虎が屋敷を出ると、門の前に十人ほどの男たちが座り込んでいた。

「何してやがる」

 仁虎が低い声で言う。

 男たちは一斉に顔を上げた。

「待ってました」

「何をだ」

「親分が戻ってくるのを」

「誰が親分だ」

「じゃあ、兄貴で」

「気色悪い」

「だったら組長でどうです」

 仁虎は眉間へ深い皺を寄せた。

「勝手なこと言ってんじゃねえ」

「でも、俺たちはあんたについていくしかありませんから」

「好きでついてきたんだろうが」

「はい」

「だったら、俺のせいにすんな」

 男たちは笑った。

 仁虎は一人ずつ顔を見た。

 どいつもこいつも、昔の自分と大差のない顔をしている。

 力はある。だが、使い方を知らない。どこへ行けばよいのかも分からず、気に入らないものを壊すことだけを覚えた者たちだった。

「先に言っとくぞ」

 男たちの笑いが止まる。

「喧嘩がしてえだけの奴は失せろ」

 誰も動かなかった。

「弱え奴から金を取るな。女子供に手ぇ出すな」

 男たちは黙って聞いている。

「食えねえ奴がいたら食わせろ。寝る場所がねえ奴がいたら連れてこい」

「どこへです」

「奏代のところだ」

「また叱られますよ」

「俺も一緒に叱られてやる」

 誰かが吹き出した。

 仁虎が睨むと、男は慌てて口を閉じた。

「それから」

 仁虎は続けた。

「壊したら直せ」

 男たちの中から、小さな声が上がる。

「明里様みてえですね」

 仁虎の目が鋭くなる。

「何か言ったか」

「何も」

 しばらく沈黙が続いた。

 やがて、年長の男が口を開いた。

「で、俺たちは何と名乗ればいいんです」

「知らねえ」

「名がないと仕事を頼まれた時に困ります」

「勝手につけろ」

「では、仁虎組で」

「ふざけんな」

「もう決まりました」

「決めてねえ」

 その日のうちに、町では仁虎組という名が広まり始めた。

 仁虎本人が認めたわけではない。

 だが、否定しに行くには、頼まれる仕事が多すぎた。

 道を塞いだ瓦礫を片づける。荷車の通れない橋を直す。悪質な貸金業者から町人を守る。行方不明になった子どもを探す。祭りの日には露店の揉め事を収める。

 仁虎組は、任侠の看板を掲げながら、いつしか皇都の裏側を支える者たちとなった。

 仁虎は組長と呼ばれるたびに嫌そうな顔をした。

 それでも、自分のもとへ集まった者を追い払うことはなかった。

 明里のように、人を正しい場所へ導くことはできない。

 だが、力の使い方を知らない者へ、役目を与えることならできた。

 かつて明里が仁虎へしたように。

     ◇

 奏代が奏々世と名を改めたのは、その頃だった。

 最初の奏は、自分。もう一つの奏は、隣にいた明里。

 世は、二人が少しでも穏やかにしたいと願った、人の暮らす世界。

 奏々世は旅籠を開いた。

 名は、ひぐらし。

 日が暮れた時、人が帰る場所を失わないように。

 食べ、休み、傷を癒やし、また歩き出せるように。

 それは明里の墓ではなかった。

 明里が望んだものを、日々の暮らしの中で生かし続ける場所だった。

 仁虎組の者たちは、ひぐらしの修繕や荷運びを手伝った。

 壊れた戸を直し、井戸を掘り、裏庭へ薪を積んだ。

「置き方が乱雑です」

 奏々世が言う。

「燃えりゃ同じだろ」

 仁虎が答える。

「倒れて誰かが怪我をしたら、同じではありません」

「お前、明里に似てきたな」

「そうでしょうか」

「ああ。面倒なところがな」

「では、きちんと積み直してください」

「俺がやんのかよ」

「組長なのですから」

「誰が組長だ」

 仁虎組の男たちは、少し離れた場所で笑いを堪えていた。

 奏々世は帰る場所を作った。

 仁虎は、その場所を守る者たちをまとめた。

 二人は違うやり方で、明里のいない日々を生きていった。

 仁虎と亜呂も、ひぐらしで何度も食事をした。

 奏々世は仁虎を叱り、亜呂の髪を結い、帰ってきた者へ「おかえりなさい」と言った。

 日が暮れても、帰る場所は残っていた。

     ◇

 仁虎は、屋敷の寝間で目を覚ました。

 見慣れた天井だった。

 しばらく、何も考えられずに見つめていた。

 頬に冷たいものが触れている。

 手を伸ばすと、枕が濡れていた。

 眠りながら、泣いていたらしい。

「……まったく」

 仁虎は低く息を吐いた。

「なんて夢だ」

 身を起こし、深く息を吸う。

 これまでの人生を、夢の中でもう一度生きたような感覚だった。

 明里と出会った。何度も止められた。明里を信じて戻った。明里が自分の道を選ぶ姿を見た。亜呂が生まれた。明里を失った。小さな手に頭を撫でられた。自分のもとへ集まった者たちに、役目を与えた。

 忘れたことなどなかった。

 だが、思い出さずに生きることには、随分と慣れてしまっていたらしい。

 仁虎は濡れた枕を見つめた。

 夢の中で、明里は何度も同じことを言っていた。

 ――悪いことをした方なら、何をしてもよいのですか。

 ――信じているのです。

 ――私の選んだ道です。

 ――この子自身の道を歩いてほしいのです。

 ――あの子の道まで決めないでください。

 言葉は違っていた。

 だが、今なら分かる。

 仁虎が道を決めるのではない。

 進むと決めた者の前に立つものを、退ける。

「……そういうことかよ」

 仁虎は背へ手を回した。

 白虎の依代紋が、微かに熱を帯びている。

 明里の声が、遠い夢の底から聞こえた気がした。

「遅えんだよ」

 誰に言うでもなく呟く。

 障子の向こうでは、朝の光が庭を白く染め始めていた。

 明里のいない朝を、幾度迎えてきただろう。

 それでも今日も、朝は来る。

 仁虎は立ち上がった。

 背中の紋が、もう一度だけ脈打つ。

 ――進む者の道を塞ぐ障害を、取り除く。

 今度は、その言葉が消えることはなかった。


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