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第5話 薬草も売れたし、野宿は避けられそうだ

上質な薬草を大量に採取し、ギルドで売ったユウマ。


思っていた以上にお金になった。


「これなら……今日は野宿しなくて済みそうだな」


ユウマは少し安心した。


異世界に来てから、まだ一日も経っていない。


さすがに初日から野宿というのは避けたかった。


ユウマは村の中を歩き、宿屋を探した。


しばらくすると、一軒の宿屋を見つけた。


木造の建物。


一階には食堂があり、二階が宿泊部屋になっている。


「おお……」


思わず声が出る。


まさに、想像していた異世界の宿屋だった。


中に入ると、カウンターに女性が立っていた。


「いらっしゃい。泊まりかい?」


「はい。今夜、一泊お願いできますか?」


「もちろん。食事付きでいいかい?」


「お願いします」


「じゃあ、銀貨一枚だよ」


ユウマは料金を払い、鍵を受け取った。


「二階の部屋だよ。夜は一階の食堂が酒場になるから、ちょっとうるさいかもしれないけどね」


女店主は笑った。


「ゆっくり休んでおいで」


「ありがとうございます」


部屋に荷物を置いたユウマは、一階の食堂へ戻った。


そして、ふと思う。


「そういえば……」


異世界に来てから、初めての食事だった。


メニューを眺めていると、見慣れた名前が目に入った。


「唐揚げ……?」


思わず注文する。


しばらくして、皿が運ばれてきた。


「はいよ。カエルの足だよ」


「……え?」


ユウマの動きが止まった。


「カエル……?」


「そうだよ」


女店主が不思議そうに答える。


ユウマは恐る恐る皿を見る。


見た目は、どう見ても唐揚げだった。


しかし、カエルの足。


「……これ、唐揚げじゃないんですか?」


「だから、カエルの足だって」


そのやり取りを聞いていた周りの客たちが、一斉に笑い出した。


「はははは!」


「兄ちゃん、カエルの足も知らないのか!」


「都会から来たのか?」


ユウマは少し驚いた。


けれど――


「……ははっ」


つられて笑ってしまった。


なんだか、久しぶりだった。


こんなふうに、知らない人たちと笑ったのは。


ユウマはカエルの足を一口食べてみた。


「……うまい」


「だろ?」


女店主が満足そうに笑った。


食事を終え、部屋へ戻ったユウマ。


ベッドに腰を下ろす。


「旅に出るなら……薬草も必要だよな」


今日採取した薬草のことを思い出す。


そして、何気なくステータスを開いた。


「ステータスオープン」


いつものように、目の前にステータス画面が浮かび上がる。


その中に、見慣れない表示があった。


【薬草+空き瓶】


「……なんだ、これ?」


ユウマは首をかしげた。


「薬草と……空き瓶?」


何に使うのかは分からない。


「薬草採取のついでに、空き瓶も探してみるか」


しかし、今は持っていない。


「明日、買いに行こう」


そう呟くと、ユウマはベッドに横になった。


――翌朝。


ユウマは宿を出る前に、ギルドへ向かった。


「おはようございます」


「おはようございます、ユウマさん」


受付の女性が笑顔で迎える。


昨日売った薬草のことを話すと、思わぬ言葉が返ってきた。


「上質な薬草なら、まだまだ引き取れますよ」


「本当ですか?」


「はい。薬師の方からも需要がありますから」


ユウマは少し考えた。


大量に売れば、また目立ってしまうかもしれない。


「じゃあ……今日はこのくらいで」


ユウマは、目立ちすぎない程度の量だけを売ることにした。


残った薬草は、自分で使うことにした。


そして宿へ戻る前に、村の店で空き瓶をいくつか購入した。


「これで試してみるか」


部屋に戻ると、ユウマは薬草と空き瓶を机の上に並べた。


「……」


何も起きない。


「……」


やっぱり何も起きない。


「どうすればいいんだ?」


しばらく考えたあと、ユウマはステータスを開いた。


「ステータスオープン」


そして、昨日見つけた表示に触れる。


【薬草+空き瓶】


「……これか?」


ユウマがタッチした瞬間――


パァァァッ!


眩い光が部屋を包んだ。


「うわっ!」


ユウマは思わず目を閉じる。


やがて光が収まる。


恐る恐る目を開けると――


空き瓶の中に、透き通った青白い液体が入っていた。


「……なんだ、これ?」


ユウマは瓶を持ち上げる。


「鑑定」


【上質なポーション】


「……ポーション?」


ユウマは首をかしげた。


この世界では、ポーション自体は珍しいものではない。


だが――


◊◊上質なポーション◊◊


それは通常のポーションの倍近い効果を持つと言われている。


軽い傷や疲労だけではなく、通常のポーションでは治しきれない状態異常にも効果がある。


場合によっては、危険な状態に陥った者を救うことさえある。


そんなポーションは、当然ながら非常に高価だった。


しかし――


「これ……薬草と空き瓶で作れるのか」


ユウマは、そんなことも知らない。


自分が今、とんでもないものを作り出したことにも。


ただ、


「旅に出るなら、ポーションは持ってたほうがいいよな」


そう言って、瓶を眺めるだけだった。


――このときユウマはまだ知らなかった。


この一本のポーションが、やがて彼の人生を大きく変えることを。


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