↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/30

第23話 魔王の決断


 魔王城。


 セシリアは、魔王ゼルヴァートの前で膝をついた。


「魔王様、ご報告があります」


「申してみよ」


「大森林でスタンピードが発生しました。大量の魔物がハーン地方へ向かっています」


「ついに起きたか……」


 ゼルヴァートは険しい表情を浮かべた。


「さらに、ハーン領主は自分たちの被害を避けるため、オゴ地方のモロヤ村を犠牲にしようとしているようです」


「民を見捨てるというのか」


 ゼルヴァートは深いため息をついた。


「魔族も魔獣や魔物には長年悩まされてきた。人間たちも同じはずなのだがな……」


「それと、人間の中には、魔物の大量発生を魔王軍の仕業だと考えている者もいるようです」


「何だと?」


 ゼルヴァートは眉をひそめた。


「我々が魔物を操っているというのか。まったく、困ったものだ」


 しばらく考えたあと、ゼルヴァートは立ち上がった。


「まずは大森林の状況を調べる。ダークエルフたちを呼べ」


「はっ!」


     ◇◇◇


 しばらくして、調査に向かっていたダークエルフたちが魔王城へ戻ってきた。


「魔王様、ご報告いたします」


「聞かせてくれ」


「結界の外では、魔獣や魔物が増え続けています。大森林の奥には、強力な魔獣や魔物が現れているようです」


「それで、弱い魔物が森から出てきているのか」


「はい。このままでは、さらに多くの魔物が人間の領地へ流れ込む恐れがあります」


「報告ご苦労だった」


 ダークエルフたちを下がらせると、ゼルヴァートは頭を抱えた。


「さて、どうしたものか……」


 そのとき、部屋にいたエルフの長老が口を開いた。


「魔王よ。ひとつ提案がある」


「聞かせてくれ、長老」


「この機会に、魔族が人間に敵意を持っていないことを示してはどうだろうか。魔物の討伐に協力すれば、誤解を解くきっかけになるかもしれぬ」


「なるほど……」


 ゼルヴァートはダークエルフたちに目を向けた。


「お前たちはどう考える?」


 ダークエルフの一人が一歩前に出た。


「まずは魔族領側から、大森林の魔獣や魔物を討伐します。そのうえで、セシリア殿にモロヤ村へ向かっていただき、人間側の状況を確認してもらうのはいかがでしょうか」


「ふむ」


「我々も別の方向から魔物を追い込み、人間側と挟み撃ちにできれば、被害を抑えられるはずです」


 ゼルヴァートは静かにうなずいた。


「よし、その方針で進めよう」


 そして、セシリアへ向き直った。


「セシリアよ。まずは冒険者ギルドへ、この手紙を届けてくれ。その後、モロヤ村へ向かい、人々に被害が出ないよう支援するのだ」


「承知しました、魔王様」


「長老、助言に感謝する」


「民を守るのは、我らの務めであろう」


 長老は穏やかに答えた。


 ゼルヴァートは部屋に控える兵士たちへ命じた。


「ダークエルフ族、リザード族、オーガ族に伝えよ。大森林の魔物討伐に備え、戦闘準備を整えるのだ!」


「はっ!」


 兵士たちが一斉に駆け出した。


     ◇◇◇


 魔王城の外では、次々と魔族たちが集まり始めていた。


 ダークエルフたちは弓や装備を整え、リザード族は武器を手に取り、オーガ族は大きな盾や武器を担いでいる。


 久しぶりの大規模な戦闘準備に、魔族たちの表情は明るかった。


「大森林の魔物を討伐するのか!」


「腕が鳴るな!」


「よし、今度こそ思い知らせてやる!」


 あちこちから威勢のいい声が上がる。


 ゼルヴァートは城の窓から、その様子を見つめていた。


「戦うためではなく、守るために力を使う……か」


 静かに呟き、拳を握る。


「人間たちが我々をどう思おうと、目の前で苦しむ民を見捨てるわけにはいかぬ」


 魔族領は、久しぶりの戦いに向けて動き出した。


 その目的は、人間との争いではない。


 大森林の魔物を討伐し、モロヤ村の人々を守ること。


 そして、魔族と人間が手を取り合う未来への、小さな一歩を踏み出すことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。