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第10話 旅人、成長補正の秘密を知る


「……ん」


ユウマはゆっくりと目を開けた。


見慣れた天井。


「ここ……宿屋か」


身体を起こそうとすると――


「やっと起きた!」


「うわっ!」


突然、リリアの声が聞こえた。


ベッドの横に立っている。


「リリア……?」


「調子に乗りすぎよ!」


「……はい?」


「いきなり五十本も作って、そのうえ二百本、三百本とか言って……」


リリアは頬を膨らませて怒っている。


怒っているのだが――


見た目が小さな少女なので、どうにも怖くない。


むしろ、ちょっと可愛らしい。


「……ごめんごめん」


「もう!」


リリアはさらに頬を膨らませた。


「心配したんだから」


「悪かったって」


ユウマは苦笑する。


すると、リリアは少し表情を緩めた。


「朝食、できているわよ」


「朝食?」


「そう」


リリアは扉のほうを見る。


「あと、ギルドにも行くから準備して」


「分かった」


ユウマはベッドから降りた。


そしてふと思う。


――なんか、年上というより母親みたいだな。


もちろん、口には出さなかった。


「じゃあ、行こうか」


「ええ」


二人は宿を出た。


――冒険者ギルド。


中に入ると、ギルド長がすぐに気づいた。


「おお、ユウマ!」


「おはようございます」


「身体は大丈夫か?」


「もう平気です」


「そうか」


ギルド長は安心したように頷く。


「さっそくだが、明日にでもハーン地方のミスギ村へ向かってほしい」


「明日ですか?」


「ああ」


ギルド長は真剣な表情になる。


「まだ疫病に苦しんでいる村人がいる」


「分かりました」


「それと――」


ギルド長は後ろを振り返った。


「今回は護衛を一人つける」


そこには、昨日ユウマに声をかけてきたガタイの良い戦士が立っていた。


「俺が行く」


「この人が?」


「ああ」


ギルド長が説明する。


「ミスギ村までの道は安全とは言い切れない。念のためだ」


「よろしくお願いします」


ユウマが頭を下げる。


戦士も頷いた。


「こちらこそ」


その後、ユウマは上級デトックスポーションを五十本受け取った。


「これを届ければいいんですね」


「ああ」


「分かりました」


「今日は準備をして、明日に備えてくれ」


「はい」


――午後。


出発まで少し時間があった。


「ねえ、ユウマ」


リリアが言った。


「どうした?」


「森へ行かない?」


「また薬草?」


「違うわ」


リリアは笑う。


「焚き火用の薪を拾いに行きましょう」


「薪か」


「旅をするなら必要でしょう?」


「確かに」


二人は森へ向かった。


薪になりそうな枝を拾っていく。


「これくらいあれば十分かな」


「そうね」


ユウマは少し太い枝を見つける。


「これは薪にするか」


短剣を取り出す。


「えいっ」


パキッ。


枝が割れる。


「おお」


「何を感心しているの?」


「いや、短剣って薪割りにも使えるんだなって」


「……」


リリアは呆れた顔をした。


「それ、本来の使い方じゃないと思うわ」


「まあ、使えればいいんじゃないか?」


ユウマは笑った。


薪をまとめ、収納袋へ入れる。


そして宿へ戻った。


夕食を終え、部屋で休んでいると――


ユウマはふと思った。


「そういえば……」


しばらくステータスを見ていない。


「ステータスオープン」


目の前にステータスが浮かび上がる。


「……やっぱり」


レベルは変わっていない。


【Lv1】


「まだレベル1か」


少し残念に思いながら、ステータスを確認する。


「……ん?」


ユウマは目をこする。


【筋力 15】


「……あれ?」


以前は――


【筋力 8】


だったはずだ。


「増えてる?」


さらに見る。


【魔力 56】


「……え?」


以前は――


【魔力 2】


だった。


「なんで?」


レベルは上がっていない。


なのに、ステータスの数字だけが大きく変わっている。


「筋力は……」


ユウマは今日のことを思い出す。


「薪割り?」


そして――


「魔力は……ポーション作り?」


その瞬間。


どこからともなく、声が聞こえた。


――ほっほっほ。


「……え?」


――気がついたみたいだな。


「この声……」


ユウマは驚いた。


「神様?」


――そうじゃ。


あのとき、白い空間で会った神。


ユウマは思わず立ち上がる。


「どうして?」


――まあまあ、細かいことは気にするでない。


「いや、気になりますよ」


――ほっほっほ。


神様は楽しそうに笑った。


――お主には、成長補正をプレゼントしたからの。


「成長補正?」


――レベルが上がらなくても、日々の経験によって、ちょびっとだけステータスの数字が上昇するオマケじゃよ。


「……」


ユウマはステータスを見る。


【筋力 15】


【魔力 56】


「ちょびっと……?」


――お主の場合、普通の人より少し成長しやすいだけじゃ。


「いや、魔力2から56って……」


――まあ、そのうち慣れるじゃろ。


「慣れるのかな……」


――それでは――


「神様?」


声が遠ざかっていく。


「ちょっと待って!」


――ほっほっほ。また何かあったらの。


「神様……」


静かになった。


ユウマはしばらくステータスを眺めていた。


「……成長補正、か」


自分がなぜ少しずつ強くなっているのか。


その理由を、初めて知った。


コンコン。


「ユウマ?」


扉が開く。


リリアが顔を出した。


「まだ起きているの?」


「ああ」


「明日も早いんだから、もう寝ましょう」


「そうだな」


ユウマはステータスを閉じた。


「おやすみ、リリア」


「おやすみなさい」


明日は――


ハーン地方、ミスギ村への旅が始まる。


二人はそれぞれのベッドに入り、静かに眠りについた。


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