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冷たいダイヤモンド、温かな薔薇

 そのダイヤモンドの指輪が贈られたのは、麗らかな午後の日のことだった。窓は空けられていて心地良い風が寝室に吹き込んだ。レースのカーテンが揺れる。

「アマーリエ、つけてみてくれないか」

 その言葉にアマーリエの笑みが引きつる。見るからに大きな輝くばかりの眩いダイヤモンド。その危ういまでの美しさに、アマーリエは息を呑む。

 エルヴィスの真剣な眼差しにまけて、その指輪を嵌めた。とても美しい指輪だった。そしてずしりと指に重い。

「気に入ったかい?」

「ええ、とても。ありがとうございます。でも本当にもういらないですからね……!」

 その時、クラウスが部屋に駆け込んできた。手には赤い薔薇の花をいっぱいに持っている。

「お母さま! これハンスと摘んだの。お母さまにあげる……!」

 そう言って花束をアマーリエに差し出してにこりと笑った。アマーリエも翡翠色の瞳を細めて微笑むと、指輪を嵌めてる手をクラウスに伸ばした。

「その石……」

「ああ、いま、お父さまからいただいたのよ。クラウス?」

 クラウスは迷うように、エルヴィスとアマーリエを交互に見つめた。そして瞳を伏せる。

「僕、その石……なんだか嫌い」

「クラウス?」

 クラウスはアマーリエの隣に花束を置くと、ばたばたと部屋を出ていった。

 アマーリエは手元に視線を落とす。アマーリエはひとつ息を吐くと、その指輪を抜き取り、アンネに渡す。そして少し申し訳なさそうにエルヴィスに微笑みかけた。

「クラウスが嫌なものは身につけていられません。ごめんなさい、エルヴィスさま」

「……仕方ないな。アンネ、その宝石をしまっておいてくれ」

「畏まりました」

 アンネが指輪をアマーリエの宝石箱へと丁寧にしまった。

 エルヴィスはアマーリエの少し膨らんできたお腹にそっと手を置いた。優しい眼差しで見つめる。

「つわりは、苦しくないか」

「あまり重いものはまだ食べられませんね。果物が食べたいです」

「すぐに手配しよう」

 エルヴィスはそう言うと、アマーリエの頬に口づけをする。アマーリエは少し赤くなりながらも、その口づけを受け取った。アンネは見ないふりをする。

やわらかな風が吹く。ローゼンブルグ邸には優しい時間が流れていた。

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