五:背中の痒みと、謎の板材
同じ刻。
帝都ヴァルハイト公爵邸の最上階寝室。
「……ふぅ。やっと痒くなくなった」
ソラは、手にした枯れ枝を暖炉の薪入れへポイと投げ捨てた。
カラン……と軽い音がして、枝は燃え盛る炎の中へと落ちていく。
背中の痒みはすっかり治まり、肩甲骨のコリも嘘のようにスッキリしていた。
(……あー、気持ちよかった。やっぱり背中を掻くには木の枝が一番だな。
適度なささくれが最高だった。もうちょっと長ければ満点だったけど)
ソラは満足げに伸びをすると、絨毯の上にゴロリと寝転がった。
床は相変わらず硬いが、背中の不快感が消えただけで、睡眠の質は格段に上がりそうだった。
(さて……エレノアたち、遅いな。まあ、ベッドの木材なんてその辺の木こりから適当に買えばいいのに、なんであんな遠くまで行ったんだろ。
帰ってきたら、あったかいココアでも淹れてもらおう……zzz)
ソラは再び目を閉じ、心地よい微睡みの中へと意識を沈めていった。
――その数時間後。
部屋の扉がバァァァンッと跳ね開かれ、
「マスター! 樹海の始祖たる世界樹の芯材を、完全無傷で調達してまいりました!」
「エルフ族の最高織物師百名が、マスターの敷布団を縫うために公爵邸の庭に野営地を設営いたしましたわ!」
と、黄金に輝く巨大な木板を抱えたエレノアとセレスティーナが乱入してくることになるのだが……。
(……え? なんで木が光ってんの? なんで庭に尖った耳の人たちがいっぱいテント張ってんの……?)
目を覚ましたソラが、またしても激しい胃痛とともに頭を抱えることになるのは、言うまでもないことであった。




