二:目覚めと、金属の異形
午前十時半。
「……んぁ……よく寝たぁ……」
ソラは、こたつの中からだらしなく這い出してきた。
全身の関節をポキポキと鳴らし、豪快なあくびを一発。
ミカンを二個食べたせいで、地味に尿意があった。
(……ふぅ。トイレ行って、二度寝するか。今日はどこで寝ようかな。暖炉の前もいいけど、ベッドのシーツも捨てがたい……)
パジャマのズボンを履き直そうと立ち上がったソラは、そこで完全に凍りついた。
「……は?」
寝室の中央。
昨日までソラが愛用していた、温もりと適度なヘタリが心地よかった愛用の木製キングサイズベッドが、跡形もなく消え去っていた。
代わりに鎮座していたのは――。
無数の油圧パイプ、チカチカと点滅する極彩色のインジケーターランプ、脈動する半透明のチューブ、そして天井から何本も垂れ下がる不気味な多関節アームを備えた、まるでマッドサイエンティストの人体実験台のような銀色の巨躯だった。
「な……何これ……?」
ソラは引き攣った顔で後退りした。
「え? 拷問器具? なんで僕の部屋に、古代の処刑台が置いてあるの……?」
恐る恐る近づいてみると、枕元とおぼしき場所には、金属プレートに誇らしげに刻まれた文字があった。
【全自動怠惰ベッド『涅槃Mark-IV』】
『横たわるだけで、貴方の人生の煩わしい活動はすべて終了します』
「終了するって何!? 命が終了するの!?」
ソラが音のない悲鳴を上げた、その瞬間。
シュバッッ!!
寝室の影から、満面の笑みを浮かべたエレノアとセレスティーナが滑り込んできた。
「おはようございます、マスター! 機巧都市連合の全面降伏に伴う賠償品として、最新鋭の全自動ベッドを導入いたしました!」
「マスターの崇高なる省エネ生活をサポートするため、食事、読書、体位変換のすべてを機械が代行いたしますわ!」
「えっ……? いや、僕、普通のベッドがいいんだけど……」
「ご謙遜を!」
エレノアがソラの肩を優しく(逃げ場のない力で)押し込んだ。
「マスターはこれまで、ミカンの皮を剥く、湯呑みを引き寄せるなど、不要な筋肉運動を強いられておられました。その心労を察し、ガリレオ総統が命がけで組み上げた結晶です! さあ、どうぞお試しください!」
「ちょっ……タンマ! 靴下脱いでから――うわあああっ!?」
押し込まれるようにして、ソラは銀色のシートの上へと仰向けに倒れ込んだ。




