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第24話 一文無しからの再出発

「……はぁ。なんで私、当面の路銀も下ろさずに出発しちゃったんだろう……」


 王都を目指してリガルドを出発してから数日。どこまでも続く土の街道を歩きながら、ニーナは重いため息をつき、がっくりと肩を落とした。

 その後ろを、宗一が笑いながらついてくる。

「まあ、仕方ないさ。散歩だと思えば悪くない日和だ」


 昨日、街道沿いの宿に泊まり、そのまま次の町まで馬車で向かうつもりだった。しかし路銀がない。無一文。仕方なく馬車を諦め、歩くことにした。


「まあいいわ。どのみち今日の夕方には次の街に着くはずだし」

 ニーナはパンッと両頬を叩いて気を取り直した。

「そこでババーンとお金を引き出して、今夜は高級な宿で美味しいものをたらふく食べてやるんだから!」




 街についた。街というよりは規模の大きな村と言ったほうが正しいかもしれない。活気はあるが石造りの建物は少なく、素朴な農村の風景が広がっている。


「さーて、まずはギルドで路銀を下ろさないとね。……あれ?」

 メインストリートを歩きながら、ニーナがきょろきょろと周囲を見回す。


「どうした?」

「おかしいわね。ギルドの支部って普通、街の入り口近くの一番目立つ場所にあるはずなんだけど……」

 通りすがりの村人に声をかけた。

「すみません、冒険者ギルドはどこですか?」

「ん? ギルド? お嬢ちゃんたち冒険者かい。あいにくだけど、この街にギルドはないよ」

「……え?」

「ここは農業と宿場だけの街だからねえ。冒険者が立ち寄ることはあっても、支部なんて立派なものはないんだ」

 村人が去っていく。しばらくの沈黙。


「どうすんのよ、宗さん!宿にも泊まれないよ!」

 ニーナが宗一の羽織の袖をブンブンと引っ張った。されるがままになっていた宗一の袂から、銀貨が一枚飛び出した。

 これで今夜の安宿くらいは確保できる。


 翌朝。

 宿の女将に事情を話すと、「それならちょうどいい」と農家の名前をいくつか教えてくれた。収穫前で人手が足りない家が、この時期は必ずあるという。


 最初に声をかけた農家は、腰を痛めた旦那を抱える老夫婦だった。刈り取った麦を束ねて積む仕事が残っているという。日当は銀貨三枚。

「やります」ニーナは即答した。


 仕事は単純だが体力がいった。宗一は黙々とやっていた。麦束を手に取って、揃えて、縛って、積む。一連の動作に無駄がない。農家の老夫人がちらちらと横目で見ていた。

「あのお兄さん、元農家かねえ」

「違います」とニーナは答えた。「なんか、ああいう人なんです」


 昼前には片付いた。老夫婦は約束の銀貨三枚に加えて、昼飯まで出してくれた。豆のスープと、柔らかいパン。

「美味い」と宗一が言った。

 ニーナも認めた。「……美味しいわね」


 銀貨三枚。馬車賃に一枚、残り二枚で宿と夕飯。なんとかなる。


 午後には馬車を捕まえて、二人は村を出た。


 荷台の上は思ったより揺れた。隣で宗一が目を閉じている。寝ているのか起きているのか、判断がつかない。街道の先に、夕日が落ちかけていた。空が広い。

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