第十四話 「願いの暴走、その先にあるもの」
これは、“魔法少女”の物語。
世界は一度、大きな戦いを越えた。
人々は平穏を取り戻し、日常は何事もなかったかのように続いている。
けれど、その裏側で。
世界には、誰にも知られない“ほころび”が生まれていた。
それは、いつから存在していたのかもわからない。
気づいたときには、そこにあった。
“エラー”——
そう呼ばれるそれは、形を持たず、理由もなく、人を襲う。
まるで世界そのものが、壊れ始めているかのように。
そして、その脅威に対抗できるのは——
異界から来た存在、“フェルル”と契約した少女たちだけ。
力を手にした少女たちは、“魔法少女”として戦う。
誰かを守るために。
日常を守るために。
あるいは——
自分自身のために。
まだ、誰も知らない。
これは、逃げることしかできなかった一人の少女が、
世界の“バグ”に向き合う物語。
放課後――
街は、いつも通りの風景のはずだった。
だが。
「……おかしい」
クロエが足を止める。
「空間の歪み……複数」
しずくが周囲を見渡す。
「でもエラーは出てない……?」
そのとき。
――ドクン。
ましろの胸が、強く脈打つ。
「……なに、これ……」
空気が、重い。
まるで“感情”そのものが、溢れているような。
ソラが、ゆっくりと目を細める。
「……来るよ」
次の瞬間。
街の中心部――
ドォォンッ!!
地面が割れ、巨大な“何か”が現れた。
それは、今までのエラーとは比べ物にならない。
巨大で、不安定で――
まるで“塊”のような存在。
「なにあれ……!」
クロエが端末を見る。
「エラーじゃない……」
「……願い、そのもの」
ソラの表情が、強張る。
「あれは……誰かの願いが暴走した存在」
その巨体から、声のようなノイズが漏れる。
『……叶えて……』
『……幸せに……なりたい……』
『……どうして……叶わないの……』
ましろの胸が締め付けられる。
「……苦しんでる……」
しずくが構える。
「でも、放っといたら街がヤバいよ!」
ヤミも前に出る。
「壊すしかないでしょ」
だが――
ソラは、動かなかった。
「……ソラさん?」
ソラは、その存在を見つめていた。
悲しそうに。
「……あれは、“願い”なの」
「誰かが、本気で望んだもの」
「それを……壊すなんて……」
その言葉に、空気が止まる。
「でも!!」
ましろが叫ぶ。
「このままだと、誰かが傷つきます!」
ソラは、目を閉じる。
その手の中で――
“あの光”が、強く脈打つ。
「……願いは、叶えるもの」
「それが、私の力」
だが次の瞬間。
光が――歪む。
「っ……!」
ソラが苦しそうに顔を歪める。
「ダメだよソラ!」
ヤミが叫ぶ。
「それ使ったら……また歪みが増える!」
ソラの手が、震える。
「……でも……!」
「このままじゃ……あの子は……」
ましろは、その姿を見て。
一歩、前に出る。
「……私がやります」
「え……?」
「壊すんじゃなくて……」
「救う方法、探します」
クロエが目を細める。
「……不可能に近い」
「でも!」
ましろの声は、強かった。
「願いが原因なら……」
「その人の気持ちに、届けばいいんです!」
静寂。
しずくが、ふっと笑う。
「……いいね、それ!」
「やってみようよ!」
ヤミはため息をつく。
「……無茶」
でも。
「嫌いじゃない」
ソラは、ましろを見る。
そして――
ゆっくりと、頷いた。
「……お願い」
「みんなで、あの願いを――」
「救おう」
次の瞬間。
巨大な存在が、暴れ出す。
「来るよ!!」
しずくが飛び出す。
クロエが指示を出す。
ヤミが道を切り開く。
そして――
ましろは、光をまといながら。
“願いの中心”へと向かう。
(届いて……!)
その奥にいる、“誰か”へ。
戦いは、最終局面へ――
ここまで読んでくれてありがとうございます
次回最終回。次回もお楽しみに




