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晴れ渡る空の下。
冴え冴えと澄み渡る空にはひとつの雲すらなく、冬の訪れを感じさせる冷たい風が吹いている。
秋には赤や黄色に色付いていた木々はその葉を落とし、落ち葉がひゅう、と踊るように飛ばされていった。
「レミーエ、寒くはないか?」
ぼんやりと窓の外を眺める私の手をそっととったエリオットがその大きな手で私の手を包み、温めてくれる。
じわりとうつる手の熱に温かい気持ちになり、頬が緩む。
私はすぐ隣にある広い肩に、そっと頭を預けた。
「エリオット。ルメリカまではあとどれくらいかしら?」
「そうだな……あと2日もあれば王都だ。着いたら忙しくなるぞ」
エリオットが悪戯っぽく笑うのに、私もつられて笑みを浮かべた。
私は今、ルメリカに向かう街道の途上を行く馬車に乗っている。
エリオットがお兄様を連れて戻ってきた日から、一ヶ月間、彼は毎日私にプロポーズをした。
最初は固辞していた私だが、最後には根負けした。
一ヶ月も意地を張り続けるのはかなり辛かった。……だって、私もエリオットのことが好きなのだから。
諦めずに毎日愛を告げるエリオットに対する気持ちは私の中でどんどん膨れ上がり、最早抑えることは出来なくなってしまった。
彼の求婚に、私が『はい』と答えた時のエリオットは見ものだった。
今日、彼に求婚されたらそれに応えよう。そう思って私はその日、エリオットを待っていた。
緊張し、ドキドキと飛び跳ねる心臓を意識しながらも、いつも通りの自分を心掛けて私はアンジェの淹れてくれた紅茶を飲む。
「……いい香りね」
アンジェの紅茶を淹れる腕は日に日に上達し、私は最近、彼女の紅茶を飲むのをとても楽しみにしている。
「ありがとうございます。今日のお菓子は私が作らさせて頂きました。良かったらお召し上がりくださいませ」
上品かつ控えめに微笑む彼女は、随分と宿の仕事に慣れてすっかり一人前だ。仕事に熱心に打ち込むアンジェは宿の女将からの信頼も随分厚くなり、実の娘のように可愛がられているのがわかって私もとても嬉しい。
「……とても美味しいわ!あなたはお菓子作りも上手なのね。素晴らしいわ」
「ありがとうございます!」
えへ、とはにかむアンジェには最早、前のような暗い陰はない。
二人で微笑み合っていると、ノックの音が響いた。
きた……!
時間はちょうど三時。
いつもエリオットが訪れる時間だ。
私は姿勢を正し、緊張に震える指先をキュッと握りあわせた。
「レミーエ様、エリオット様がお越しです。お通ししてもよろしいでしょうか」
アンジェの声に頷きを返すと、扉が開かれた。
「レミーエ、なにを笑っているんだい?」
くすりと漏れた私の声を耳聡くひろったエリオットは、抱き寄せた私の顔を覗き込む。
「あなたがプロポーズしてくれた時のことを思い出していたの。私が『はい』と答えた時のあなたの顔ったら……」
「……あれは!仕方ないじゃないか。……それくらい嬉しかったんだよ」
そう言うとエリオットと私は、お互いを見つめ合ってふわりと笑った。
あの時みたいな滝のような涙と鼻水は無かったけれど、とても幸せな笑みだった。
悪役令嬢レミーエ様のその後
完
ここまでお読み下さりありがとうございました。
レミーエ様のお話はこれでおしまいです。
もしかしたらそのうちおまけ話があるかもしれませんが、一旦は完結致します。
ありがとうございました!




