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戦闘スキル無しの元・狂戦士 ~案内人は最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第4章:過去と未来の遊戯盤

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94. 生ける伝説と語られし伝説

「ゲホッ、ゴホッ……! 砂埃が凄いな、ここまで届くとは」


 ドレイヴンが放った『レガリア・ギロチン』の余波は、200メートル離れた悠馬達にも届いていた。

 辺りには砂埃が舞い上がり、視界を遮る。


 そんな状況にも関わらず、悠馬達の足は止まらない。

 砂埃をかき分け、ドレイヴンのいる場所へと到着する。


「おう! 待っておったぞ!」


 大剣を肩に掲げ、ドレイヴンは「ガハハッ」と笑う。

 砂埃が落ち着いた地面には、直径数十メートルはある巨大なクレーターが出来ていた。


「相変わらずドルの攻撃は規格外だな」

「さすがお父様です! 次は私がドーンってやります!」

「お館様お見事でございました」


「そうであろう! 我ながら見事な一撃であった! ガハハッ! ――ん、あやつは?」


 賛美を受け、上機嫌のドレイヴンの視界にある人物が映る。


「ハァッ……ハァッ。やっと追いついた……なんなんだアンタら! 速度もだが、なんだあの攻撃は! そっちのオッサン飛んでなかったか!?」


「おっ、速水くん。やっと来たか、って何か疲れてる? 別に休んでていいんだぞ」

「説明無しかよ……ふざけんな! 探索者最速は俺なんだ!」

「おーおー若いねぇ。その調子で頑張ってくれ」


 速水は言い返そうにも呼吸が乱れ、思考が安定しない、今はただ押し黙るしかなかった。


「で、悠馬。立ち止まってていいのかい?」

「ヴィ。――気づかないか?」


 悠馬は西の方角をゆっくりと見据える。

 視線に誘われるかのように、全員が同じ方向を向く。

 

「もちろんだよ……いるね」

「あぁ。距離にして3、いや4キロってところか」


「悠馬お兄さん! ボスがいるんですね!」

「ここからは少し速度を落として進む。接敵したら次の指示を出す」


 全員がコクリと頷く。


「よし、出来るだけ注意して進むぞ」


 目標へと向かいオグリ家騎士団は再度加速する。


「くそがっ! 休むヒマ無しかよ……。いいぜ、やってやるよ!――待てコラァァァ!」



 ――――


「全員止まれ!」


 悠馬の言葉に全員が足を止める。


「……あれがボスか」


 悠馬の視線の先には大きな建物がある、そのすぐ横には大阪湾。

 そして大きな広場の中心にボスはいた。


「大きな虎さんです! 白くてキレイです!」

「ホワイトタイガー……では、無いようですね。サイズが違いすぎます」


 ノーラの言う通り通常の虎のサイズではなかった。

 全長10メートルはあるだろうか、その巨体を丸め今は休んでいるようにも見える。


「――白虎。西方を守護するといわれている神獣だ」

「ユーマ、お主アレを知っておるのか?」


「知ってるというか、伝説の生き物ってやつだ。見るのは初めてだな」


 白虎まで300メートル。

 悠馬達はその姿を視界に収めたまま距離を縮めていく。


「伝説のって言う割には……何というか、覇気がないね」

「たしかに……ヴィの言う通りだな。寝てるとか?」


 ヴァレンタインの言葉通り、白虎からは殺気が感じられない。

 それどころか、巨大な猫が丸まって寝ているようにしか見えない。


「うぅ~、モフモフしたいです」

「アリスお嬢様。その意見に同意しますが今は堪えて下さい。あれは敵です」


 アリスは両手をわしわしと動かし、もどかしそうに白虎を見つめている。

 注意しているノーラも目が輝き、頬が赤みがかっている。

 

「お前ら……ボス戦なんだからもっと緊張感を持ってくれよ」


「で、どうするんだい? 距離と敵も判明したし、一度戻るのかい?」

「そうだな……一度皆と合流して情報を共有しようか」


 悠馬はヴァレンタインの提案に乗ることにした。

 一度安全地帯へと戻ろうとしたその時――。


「何を言っとる! 敵が目の前におるんだぞ、ちょっと待っておれ!」


「ドル! 何言って――」


 ドレイヴンは大剣を大上段に掲げ、白虎へと突進する。

 悠馬の制止が間に合うはずもなく、ドレイヴンは白虎へと肉薄していた。


 ドレイヴンの殺気に当てられたのか、白虎が目を覚ます。

 

 次の瞬間、肺をひっくり返すような、凄まじい咆哮が周囲の空間を爆裂させる。


 ――オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!

 

 物理的な衝撃波を伴ったその咆哮は、近くの建物の窓ガラスを木端微塵に粉砕し、空気すらも振動しているようだ。

 その衝撃波をものともせず、ドレイヴンは更に加速する。

 

 「寝起き早々すまんな! ――また寝てもらうぞ!」


 大上段の構えのままドレイヴンは空高く飛び上がる。

 そしてその勢いのまま大剣を大きく振り抜くと、白虎の咆哮にも負けない衝撃が走る。


 ――ドォォォォォォォォンッ!!


 ドレイヴンの一撃で地面のコンクリートが割れ、一部が海へと飲み込まれていく。


「マジか……。皆に何て説明したらいいんだ……」


 ボス見つけました。そして倒しました。

 そんな説明を余儀なくされた悠馬は、額に手を当て空を仰ぐ。


「ガハハッ! この調子で残りの3体もブチのめしてくれる!!」


「お父様ずるいです! 次は私にやらせて下さい!」

「お館様にかかれば神獣など、畜生以下同然でございます」


「ノーラ! それは言っちゃダメだ、絶対にどっかから怒られる!」


「相変わらずうるさい連中だね。で、帰るのかい?」

「……そうだな。こうなった以上は仕方ない、皆には俺が説明するよ」


 ――――


「ハァッ……ハァッ。まだか、まだ追いつかないってのか」


 悠馬達が進んだであろう方角から聞こえた衝撃音。

 その音を頼りに速水は走り続けていた。


「あれが特級か……いつか俺だって」


 その時、速水の正面から悠馬たちがこちらへ向かって走って来るのが見えた。


「おい! あんたらボスはいたのか!?」


「おぉ! 速水くん。 う~ん何というか、ボスはいた……かな?」

「いたかな?って何だよ! それにさっきの衝撃音は……」


「――倒した」

「えっ!?」


「だから! ボスは『いた』んだけど、もう倒したから今は『いない』んだよ」


「……マジかよ」

「それがマジなんだよなぁ。とりあえず今は戻ってるところ、速水くんも早く戻って来いよ!」


「……これが特級パーティーってやつかよ」


 全力疾走で元来た道を駆け抜ける悠馬たちの背中を、速水は呆然と眺めていた。

 

 ――と、その時。

 

「どうしたユーマよ! 突然止まるでない!」


 悠馬は急ブレーキを掛け急に立ち止まり、後方へと振り返る。


 

「――どういう事だ」

 

 その視線は、先程まで白虎のいた方角を捉えていた。

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