92. 集結する戦力
「お前は――」
「せや、ワシがバーニングオクトパスの――」
「細目のゾンビ野郎!」
「たこ焼きゾンビさんです!」
「槍ゾンビであるな!」
「男のくせにウルサイたこ焼き……あとゾンビ」
「…………」
「ちょいまてーや! 全員が違う悪口いうなや! ツッコミが間に合わんやろがい! 優しいのはメイドのねーちゃんだけやぁ」
オグリ家騎士団総出の悪口に、木森はツッコむ事も出来ず唯一無言だったノーラに泣きつく。
「いえ。 いま口を開けば、最も辛辣な言葉を吐いてしまいそうだったので沈黙したまでです」
「なんでやぁ~、ワシの拠り所はどこにあんねん」
ノーラのトドメに木森は四つん這いになり、地面に伏する事となった。
「効果はばつぐんのようですね」
木森の態度にノーラは気を良くしたのか、人差し指でメガネをクイッと上げ微笑む。
「皆そう言ってやるなよ、悠馬も戦力が増えるのは歓迎だろ?」
「すまん、悪ふざけが過ぎた。 だがまぁ淳の言う通りだな、ゾ――木森。力を貸してくれ」
「いま、自分ゾンビ言いそうになったやろ。 って――まぁええわ、任されたるわ」
そう言って両者は握手をする。
これで残す方角は1箇所――。
「さてと、あと1チームは欲しい所だけど……」
「それならワシの知っとるチームがあっちにおる、声かけてこよか?」
「それは助かるが、実力は問題ないのか?」
「それなら問題あらへん。ワシらと同じ特級パーティーや、実力は折り紙付きやで!」
「そうか、なら頼む。因みにパーティー名が――『バーニングライク』とかじゃ無いよな?」
「なんでわかったんや! アイツら関東で有名なんか!?」
悠馬は「やっぱりか」と額に手を当てる。
「悠馬お兄さん、なんで名前分かったんですか?」
「アリスお嬢様。大阪グルメの代表格といえば、たこ焼きと――お好み焼きです」
ノーラの説明にアリスを除く、その場にいる全員が吹き出す。
「ちょ、自分ら感じ悪いで! ワシら兄弟パーティーなんや、相方を笑うとか失礼やろ!」
吹き出す面々、怒る木森、そしてピンときてないアリス。
相変わらず騒がしい集団に、周囲は何があったとどよめいている。
「チッ! もうえぇわ、とりあえず声かけてくるから、お利口さんで待っとるんやで! どっかいくなよ、ってフリちゃうからな!」
ぶつくさと文句を言いながらも、木森はバーニングライクの居る方へと歩き出す。
木森の去った後、悠馬達は軽いブリーフィングを行う事にした。
――――
「上手く行けば特級パーティーが4チームか。これなら問題なく調査できそうだな」
「ん? 悠馬達も特級パーティーなのか?」
「淳、俺達をなめんなよ。って、特級になったのは最近なんだけどな」
「それでも凄いじゃない! 良いメンバー達なのね」
「あぁ、俺には勿体ないくらいだよ」
そう言って、メンバーを見る悠馬の目は優しさを宿していた。
「悠馬やっぱり変わったみたいね。もちろんいい方向に!」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」
「してユーマよ。これからどうするのだ?」
「そうだな。とりあえずは各パーティーで東西南北の一箇所を担当し、直線的に調査を行う」
「なんで直線的なんだい? 調査なら弧を描くように動いた方が、情報量は増えるはずだよ」
「ヴィの言う通りだ。だが、今回は3日と時間がない。それに情報通りだと外周まで数十キロあるはずだ」
「なるほど。悠馬様はボスと接敵するまでの距離を知りたい。と」
ノーラの説明に悠馬はコクリと頷く。
「そうだ。闇雲に周囲を探すより、まずは目的地までの距離と時間を図る。それで戦闘や移動に費やせる時間を算出し、戦略を練ろうと思う」
「たしかに悠馬の案が一番かもしれないな。昔から戦略やらはお前の担当だったし、そこは任せるよ。案内人さん、いや――『さすリー』さん」
「お前……聞いてたのか」
「あんな大声だしてりゃ嫌でも聞こえるったもんよ、なぁ優紀」
「そうね。アリスちゃん声ってすごくキレイだから、遠くまでよく聞こえるのよ、知らなかったの?」
「えっ! 私の声キレイですか!」
「えぇ。とてもキレイで可愛らしいわよ、まるで鈴が鳴ってるみたい」
両手を自分の頬にあて、照れるアリス。
そして、アリスの急旋回するアホ毛を眺める優紀との間に、ノーラが割って入る。
「ノーラさん? 一体どうし――」
ノーラは優紀の手を両手でガシッと掴む。
「優紀様。アリスお嬢様は可愛い、そう仰るのですね?」
「そ、そうね。とても可愛いと思うわ」
「有難う存じます。ようこそ『アリスお嬢様同好会~日本支部~』へ、こちら会員証となっております」
ノーラは素早い動きでカード型の会員証を優紀へ手渡す。
「えっと……ナンバー2? 他にも誰か居るのかしら……」
「もちろんです。 メンバーには望海様が名を連ねていらっしゃいます」
「望海って、管理局の?」
「その認識で間違いないかと」
そんな会があったのかと悠馬が呆れていると、木森が戻って来る。
「おーい! おまっとさんやで! 約束通り相方連れてきたわ」
木森の後ろにはもう1つの集団が着いてきていた。
先頭を歩くのは、木森と同じ様な革鎧を着た女性のようだ。
「なんでアンタが偉そうにしてんねん! どーも『バーニングライク』のリーダー、火神鶴ていいます。よろしゅーに」
火神は薙刀を肩に乗せ、悠馬に手を差し出す。
「宜しく頼む。すごく個性的な髪型だな」
悠馬の言う通り、火神は右サイドを刈り上げており、オールバックにした髪は3色で染められていた。
「おお! これの良さが解るか! これな色に意味があんねん、まず赤なんやけど――」
「い、いや! その話は今はいいよ! 時間無いし今度聞かせてもらう事にするよ」
「そうか? 残念やな……」
しょんぼりする火神を他所に、悠馬はその場の全員に向かって話し始める。
「これで4チーム揃ったな。さて――攻略を始めようか」




