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戦闘スキル無しの元・狂戦士 ~案内人は最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第4章:過去と未来の遊戯盤

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85. 戦場前の戦場

 「そういえば、皆はヘリコプターを知ってるのか?」


 屋上へと向かうエレベーター内で、悠馬は皆に問いかける。

 誰一人として疑問を投げてこないことを不思議に思ったのだろう。


「知ってますよ! こないだテレビでみました! エッヘン!」

「そっか、それならいいんだが」


 先日アリスたちは、ドクターヘリが登場するニュース番組を観ていた。

 事前知識はあるが故に疑問も無ければ、不安もないといった所だろう。


「それならばワシも見ていたぞ! 侮るでない!」

 

「……ちなみに、見たのはどんな形だったんだ?」


 悠馬の質問に、ノーラが毅然とした態度で返答する。


「球体の小尾に長めの柱、そして上部には回転する羽根……それがヘリコプターかと」


「あぁ……そうゆう事か」


「なにさ、何か問題でもあるってのかい?」


 ヴァレンタインの言葉に少しの怒気を感じつつ、悠馬は口を開く。


「いや、何というか……見れば分かるか」


 しばらくするとエレベーターが屋上へ到着する、その時アリス達の目に飛び込んで来たのは――。



 ――――


 

「な……なんですか、アレは」

「ユーマよ! あんな物が空を飛ぶわけなかろう!」


「だよねぇ……やっぱ、こうなるか」


 アリス達の目の前にあるのは『大型輸送ヘリコプター チ◯ーク』。

 鮮やかな迷彩柄に身を包む、最高速度250km/hオーバーの化物ヘリだ。


「悠馬お兄さん! フェリーはまだ分かります! でも、アレがここに居る全員を乗せて空に浮かぶなんて――ありえません!」

「……ワシは、馬で行く。 おい!だれぞ馬を用意するのだ!」

「お館様。 私も同行させて頂きます」


 まさに阿鼻叫喚だった。

 そんな中、ヴァレンタインだけは落ち着いた様子で、チ◯ークを見つめている。


「ヴァレンタインさんは大丈夫っぽいな。 それともあれか? 好奇心のほうが上回ってる感じ?」


「……いい」

 

「えっ?」


「いいわぁ、なんてエロさなの……胴長で丸みの帯びたフォルム、さらに羽根が2枚も交互にイヤらしく交わってるなんて――スケベを具現化しているようなモノだわ!」


 ヴァレンタインは頬を紅潮させながら、内股のまま身体をクネクネと捩らせている。

 その姿に周囲の男性探索者達は釘付けになる。


「ヴァレンタインさん! ストップストップ! なんか変なこと言ってるし、周囲に悪影響が出始めてるって!」

「悠馬お兄さん! 車で行きましょうよぉ」

「馬だ! 早く馬を持って参れ!」

「いいわぁ~、ずっと見ていたい……でも、アレの体内に私が入るという背徳感も……たまらないわねぇ」


 萎れたアホ毛で悠馬の腕を掴むアリス、叫ぶドレイヴン、クネるヴァレンタイン。

 出発前から収集がつかなくなっていた。


「なんなんだ一体! ノーラ! 黙ってないで手伝ってくれ!」


 悠馬は無理矢理機内へと3人を押し込もうと奮闘しているが、全員が自由に動き回るため、なかなか上手く行かない。


「悠馬様。 今より望海様に預けた鍵を持ってまいります」

 メガネをクイッと上げたかと思うと、ノーラは元来た道へと走りさそうとする。


「待てって! これ以上レンジを広げないでくれ! 対応出来なくなっちまう!――って、だから行くなって!」



 ――――


 

「うぅ……。 私は大阪グルメを食べることなく、天に召されてしまうのですね……グスッ」

「体内までこんなに無機質でスケベだなんて、最ッ高!」

「……」

 

 職員達に助けを借りつつ、なんとか全員を機内に乗せることは出来たものの、相変わらず騒がしい。

 ドレイヴンに至っては、あぐらをかいたまま、地蔵のように目をつぶって黙りこくっている。


「はぁ……行く前から疲れるっての。 ノーラはもう落ち着いた感じか?」

「……私は覚悟を決めたまでです」


 そう言いながら、ゆっくりと立ち上がるノーラ。


「覚悟?」

「はい。 浮上を阻止するため、今より――御者を殺します」


 投げナイフを両手に装着し、ノーラは歩き出す、その表情はまさに覚悟を決めた者のそれだ。


「なんだその物騒な覚悟は! いいから黙って座ってなさい!」


 全員を無理矢理イスに座らせ、ベルトを締める。

 悠馬は職員へ謝罪しつつ、問題ないことを告げる。


「望海から軽食もらってんだ、機体が安定したら皆で食べよう。 そうしたら、少しは落ち着くだろ?」


 全員覚悟を決めたのか、浮上後は落ち着いた様子だった。

 サンドイッチ等の軽食をつまみながら、目的地へと進む機内での時間を過ごす。


 

 約2時間で目的地の大阪へと到着した一同。

 後部のハッチバックから、続々と探索者が降りていく中にオグリ家騎士団もいた。


「やっと着いたか、2時間とはいえ座りっぱなしってのは身体にくるな」


 悠馬は固まった全身をほぐすかのように伸びをしている。


「お父様! 地面です!」

「そうだな! もう恐れる事など無いというもの! ガハハッ!」

「あぁ……もうお別れなのかい、残念だよ」


「みんなにいいニュースと、悪いニュースがあるけど聞くか?」


 悠馬はいたずらを思いついた子供の様な顔をして、全員に振り返る。


「悠馬様……まさかとは思いますが」


 悠馬はニヤリと口角を上げつつ答える。


「帰りもアレに乗って帰るに決まってんだろ!」


 またも泣きそうになるアリス。

 絶句するドレイヴン。

 投げナイフを構えるノーラ。

 そして、紅潮するヴァレンタイン。


 その姿をニヤつきながら見ていたら、府後が探索者達の前に立ち説明を始める。


「今より目的地の難波に向かいます。 そこで全国から招集された者たちと合流、その後――状況開始です」


 その場にいるもの全員に緊張が走る。

 地上のダンジョン化という、誰も遭遇したことのない現象への挑戦。


 だが、緊張だけではない。

 得てして探索者とは好奇心が高い、さらに上級ホルダーともなれば人並み以上だろう。


 それは、特級ホルダーであるオグリ家騎士団も例外ではない。

 先程までは打って変わって、全員が戦闘モードとなる。


 颯爽とバスへと乗り込む悠馬達の顔は、まさに戦士そのものだった。


 ――いざ戦場の地、難波へ。

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