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戦闘スキル無しの元・狂戦士 ~案内人は最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第4章:過去と未来の遊戯盤

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83. 空白の使い道

 大阪へと向かう当日、オグリ家騎士団の面々は庭へと集まっていた。


「たしか、集合時間は12時だったよな?」

「局長からはそう聞いてるわ。 改めて確認しとく?」


 悠馬は管理局への集合時間を、専属の望海に確認する。


「そうだな……万が一って事もあるし、一応頼む」

「わかったわ。 メール入れとくわね」


 望海はスマホを取り出し、府後へと確認のメールを送信する。


「さて、今から大阪へ向かう訳だが、全員準備はいいか?」


 悠馬は全員の顔を見る。


「もちろんです! 大阪グルメを守る為に頑張ります!」

 純白の甲冑姿のアリスは、アホ毛をピンと立たせて、両手で握りこぶしを作る。


「ライフラインの元栓、ご近所様への挨拶回り、食材の管理等。 もろもろ滞りなく完了しております」

 ノーラはいつものメイド服に身を包み、報告とともにカーテシーを優雅に披露する。


「ガハハッ! どこへ行こうとやる事は同じ! 民を守り、悪を成敗するのみ!」

 修復が完了した大剣を担ぎ、ドレイヴンはいつもの調子で笑う。


「可視化された結界と、断絶された土地なんて最高の研究材料じゃないか」

 ヴァレンタインは妖艶な笑みを浮かべ、まだ見ぬ未知への事象に心踊らせる。


 土地の一部が現世うつしよと隔離され、ダンジョンと化してしまった大阪。


 力及ばない探索者の救出、忽然と消えてしまった一般人。

 その原因を究明し、解決するべく、オグリ家騎士団は管理局へと向かう。


「みんな大丈夫そうだな。 では……ゴホンッ!」


 なぜか一拍置く悠馬、その変な間に全員が首をかしげる。


「――オグリ家騎士団出陣だ!」


 悠馬は握り拳を天に掲げ、自信満々に声を張る。

 しかし返ってきた反応は、悠馬の想像したそれでは無かった。


「悠馬お兄さん……なんか残念リーダーっぽいです」

「うわっ、コイツ噛まないように、溜めを作りやがったわ」

「ユーマよ……戦前の口上というのは、何というか、もっと……はぁ」

「もはや、掛ける言葉も見当たらないね」

「…………」


「噛まないようにしただけなのに、みんな酷くないか!? というか、ノーラは何か言ってくれよ! 無言って一番ダメージくるぞ!」


 いつも通り、なんとも締まらないオグリ家騎士団。

 しかし、それこそが一番大事なのかも知れない。



 ――――


「さて、そろそろ着くな。 望海、このまま地下駐車場に向かっていいのか?」


 まもなく管理局までという所で、悠馬は望海に駐車位置を確認する。


「そ、そうね。 それで大丈夫だと思うわ……」

「どうした? 気分でも悪いのか?」


 返事をする望海の顔は暗く見える。

 急な変貌ぶりに、アリスが心配そうに声を掛ける。


「望海さん、どうしたんですか? お腹痛いんですか?」

「……いえ。 大丈夫よ……ただ」


 言い淀む望海をよそに、車は地下駐車場へと到着する。

 全員が車外に出たタイミングで、いつものように府後が現れる。


 いつもと違うのは、府後が走って迎えに来たという事だ。


「はぁっ、はぁっ――小栗様! どうしたのですか!?」


「どうしたのって、今日は大阪に向かう日だろ?」


 府後の問いに対し、悠馬は「何言ってんだコイツ」といった態度で返事する。


「それはその通りですが、集合時間は14時です。 先ほど、高梨君に改めてそう返信しましたが……」


「えっ!?」


 悠馬達は驚きつつ、望海を見る。

 全員の視線を浴び、望海は居心地悪そうに答える。


「ど、どうやら……14時、そう2時と12時を間違えちゃったみたい……」


「お前……それで急に顔色悪くなったってのか?」


「えへっ。 ごめんね?」


 ぺろっと舌を出し、自身の拳で頭を叩く仕草で謝罪の言葉を紡ぐ。

 その姿に全員が思考を止めると同時に、徐々に怒りが込みあがってくる。


「なによ! ちゃんと謝ってるじゃない! 人間なんだし間違えることだってあるわ! みんな楽しそうだったし、言いだしにくかったのよ!」


「コイツ――開き直りやがった」

「望海さん……さすがにそれはちょっと……」


「アリスちゃんまで……本当にごめんなさい」


 アリスに残念がられた事でダメージを受けたのか、望海は目に見えてしおらしくなる。


「ガハハッ! ノゾミ殿も反省しておるし、遅れるよりは良いではないか?」

「御屋形様の仰る通りです。 それより約2時間という時間を、有意義に過ごす方法を考えた方が建設的かと」


「まぁ、……それもそうだな」


 ドレイヴンとノーラの提案により、悠馬は留飲を下げる。

 ともあれ突然訪れた2時間の空白、どうしようかと考えていると、ヴァレンタインが口を開く。


「――時間が出来たのなら、ダンジョンに行こうじゃないか」


 ヴァレンタインの突然の提案に対し、悠馬は疑問を投げかける。


「なんで今からダンジョンなんだ? 昼飯でも食ってゆっくりすればいいだろ」

「そうです! まだお昼ご飯食べてません、お腹空きました!」


「食事なんて、大阪への移動中に済ませばいいじゃないか。 いいから、私に考えがあるからさっさと行くよ」


 取り付く島もなく、ヴァレンタインは車内へと戻っていく。

 全員は頭に「?」マークを表示させたまま、しぶしぶといった様子で車に乗り込む。


「望海、あんたはここで待ってな。 2時間以内に戻ってくるから、移動中に食べられる食事の準備をしてなさい」

「はっ、はい!」


「さて、行きましょうか――特級ダンジョンへ」


 怪しく微笑むヴァレンタイン。

 大阪行きを目前にしての特級ダイブ、一体何を意味しているのか。


 悩んでも仕方ないと、悠馬は特級ダンジョン『虚無の門』へとハンドルを握る。

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