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戦闘スキル無しの元・狂戦士 ~案内人は最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第4章:過去と未来の遊戯盤

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82. 小さな箱と大きな影響

「これは……小屋ですか?」


 住職に案内され、到着した先にあったのは小さな小屋だった。

 一軒家の庭先にあるような物置程度の大きさで、観音開きの扉が見える。

 

 観音開きの扉には、花を咲かせた木の彫刻があるが、その木の種類までは悠馬には分からない。

 というよりも、そもそも現存する木なのかも怪しい……そう思わせるほどに、異質な雰囲気を醸し出している。


「中へ入りましょう」


 住職は扉をゆっくりと開け、悠馬を中へと招き入れる。

 促されるように、小屋の中に入った悠馬の視界に、1体の石像が映る。

 

「祖父は、この石像を見に来ていたのですか?」


 大きさは180cm程だろうか、美しい女性が大きめの布を身に纏っている。

 古代ローマの男性の服装に似ているようだ。


「元々は、印南様がお持ちになられた像です。 それを私が保管、管理しておりました」


「じいちゃんが持って来た……と。 そもそも、何の像なんですか?」

 

「申し訳ございませんが、私には分かりかねます。 ただ、お持ちになられた時に感じたのです」


「感じたとは?」


「『この石像には、この場所が相応しい』……と。 直感的なものでした」


「……そうですか」


 悠馬は、再び石像へと視線を移す。

 小屋の中には、石像の他に何もなく、右の壁に小さな採光用の窓があるだけだ。


 ただそこにあるだけ……。

 なのに、何とも言えない存在感と神々しさを放っている。


 石像を見つめる悠馬に、住職が声をかける。

 

「悠馬様、これを」


 住職は小さな木箱を悠馬に手渡す。

 

「これは何ですか? 木箱?」


「悠馬様が成人した後、1人でこの場所に来ることがあれば、渡すように、印南様から言付かっておりました」


「じいちゃんが? 中身はいったい……」


 木箱は軽く、手のひらに収まるサイズだ。

 悠馬は木箱を開けようと力を込めるが、木箱が開く様子は一切ない。


「中身に関して私は一切知らされておりません。 ただ、渡すようにとだけ」


「そうですか。 そもそも祖父とはどういった関係なんですか?」


 悠馬が不思議に思うのも当然のことだった。

 

 寺が一般人が持ち込んだ石像を受け取り、管理するなど聞いたことがない。

 更には、孫に対しての伝言まで請け負っている。


「私と印南様は旧知の仲でした。 ただの知り合いというわけでもなく、私にとっては恩人にあたる方です」


「恩人ですか……内容を伺っても?」


「申し訳ございません……それにはお答え出来かねます」


 住職は、申し訳なさそうな表情で一礼した後、再び悠馬を見つめる。


「いえ、こちらこそ不躾な質問でした。 配慮が足りず申し訳なかったです」


 少し気まずい雰囲気を誤魔化すように、悠馬はポリポリと頭を掻く。

 すると、悠馬の動きに住職が軽く笑う。


「その頭を掻くクセは、昔から変わりませんね」


「そ、そうですか……」


 悠馬はやや照れながら、頭ではなく顔を掻いた。



 ――――


 

 小屋を出た2人は、そのまま寺の出入り口まで来ていた。

 

「また、来てもいいですか?」


「ええ、もちろんです。 お待ちしております」


 両者は互いにゆっくりと会釈し、その場を離れる。


 悠馬の手には小さな木箱が握られている、今だ開く気配のない木箱。


 その中身を気にしつつも、悠馬は駐車場へと向かう。



 ――――


 レンタカーを返却し、自宅へと到着した悠馬に望海から着信が入る。


「おいおい、少しはゆっくりさせてくれよ」


 面倒くさそうに通話ボタンを押し、耳へと当てる。


『悠馬いまどこ?』


「ちょうど家に着いたとこだよ」


『ナイスなタイミングね! 今すぐ迎えに来て!』


 言い終えると同時に、望海は通話を終わらせる。


「おいっ――って、どこに行きゃいいんだよ」


 その時、悠馬のスマホにメールが届く。

 メールを開いてみると『ココ!』というメッセージと共に、マップが表示される。

 そして何故か、アリスと望海が映っている写真が添付されていた。


 流行りの飲み物らしきものを持ち、満面の笑顔で自撮りしている2人。

 幸せそうな写真に毒気を抜かれた悠馬は、家の中に入ることもなくキャンピングカーへと向かう。


「ったく。 あんなの見せられたら、黙って行くしかないねぇだろ」


 新車特有の香りがする車内で、悠馬は面倒くさそうに呟く。

 しかし、その口角は上がっているように見えた。



 ――――


 望海とアリスを迎えに行く途中で、知らない番号から着信が入る。

 電話に出るとどうやら、ドレイヴンが他の探索者からスマホを借りて、こちらへ掛けてきているようだ。


 その後、2人を回収しそのままドレイヴンを迎えに行く。


「さてと、ドレイヴンさんはどこに居るんだ」


 ダンジョン入口付近にいると言っていたドレイヴンを、3人で車内から探していると人だかりを発見する。

 その人だかりが左右に分かれたかと思うと、奥からこちらに歩いてくるドレイヴンの姿が。


「……モーゼかよ」


 呆れた表情のまま待っていると、周囲から『アニキ! ありがとうございました!』とか、『兄さん! 次はいつ来ますか?』といった声が聞こえる。


 その声に応対するかの様に、ドレイヴンは人だかりに向かって両手を振る。

 そして、空気を振動させるような大声で演説を始める。


「お主らと次いつ会えるかはわからん! だがしかし、ワシは常にお主らを見ておる! 故に慢心することなく鍛錬に励むのだ!」


 演説を受け、観衆から大声が上がる。

 まるで、戰場に向かう前のような熱気が周囲を包む。


「ガハハッ!! では、さらばだ!」


 歓声に包まれながら、ドレイヴンは車内へと入ってくる。


「お父様さすがです! たった1日で民の心を掴むとは!」


 アリスはアホ毛を振り回しながら、父の偉業を称える。

 

「なに、ワシにしたら容易い事よ! ガハハッ!」


 娘からの賛美にドレイヴンの機嫌は最高潮のようだ。


「なにやったらあんな風になるんだよ……」


 大量の買い物袋と、大勢の声援に包まれながら、悠馬は自宅へと向かい車を発進させる。

 

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