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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第4章:過去と未来の遊戯盤

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81. 本質を見抜く者が指し示す先

 アリスと望海を街へと送り届けた後、悠馬はドレイヴンとダンジョンへと向かっていた。


「して、ユーマよ。 どこへ案内してくれるのだ?」


「そうだなぁ……。 ないとは思うけど、怪我されても困るし上級でもいいか?」


「ふむ。 特級ではないのが残念ではあるが、そこは任せることとしよう」


 しばし、悩んだ末に悠馬が案内したのは……。


 

 ――――


 ここは千葉市内にある、上級ダンジョン『牙の回廊』。


 街中にあるとはいえ、新宿ダンジョンと比べると違和感も少なく感じる。


「ほぅ……ここが今日入るダンジョンというわけか」


「そうだ、30階層まである。 因みに、アリスとノーラの3人で入ったこともあるぞ」


 悠馬の言葉に、ドレイヴンは反応を示す。


「……その時はどこまで行ったのだ?」


「一応、攻略したぞ。 時間はたしか……3時間とかだったかな」

 

「そうであるか! ならばワシは1時間で攻略してみせよう! ガハハッ!」


「1時間て……でも、ほんとにやりそうなんだよなぁ……」


 悠馬はポリポリと頭を掻きながら、声高らかに笑うドレイヴンを見る。


「じゃあ、俺は一旦家に帰ってから、迎えの準備とかするよ」


「むっ? 1時間で戻ってこれるのであろうな?」


「それは無理だ。 アリス達の買い物も時間かかると思うし、どうせなら何周かしたらどうだ?」


「それでも構わんが、待つ時はどうすればいいのだ?」


 悠馬はポケットからメモ紙を取り出し、ドレイヴンに見せる。


「これは俺の電話番号だ。 飽きた時に、ここへ連絡してくれたらいいよ」


「連絡しろと言ってもだな、ワシはそのスマホとやらを持っておらんぞ」


「大丈夫だって。 その辺の探索者に、ドレイヴンさんの探索者証をみせたら、スマホ貸してくれるはずだ」


「それならば大丈夫か! では、ユーマよ行ってくる!」


 言い終わるよりも速く、ドレイヴンは土煙を上げながら、ダンジョンへと消えていく。


「……ったく。 マジで台風みたいな人だな」


 ――――


 レンタカー屋へとハンドルを切る悠馬、ひどく静かな車内をバックミラー越しに見つめる。


「誰も居ないと静かなもんだな。 って当たり前か」


 1ヶ月ほど前までは、1人で行動するのが当たり前だった。

 その為、自分以外の声がしないことに違和感など無かった。


 ただ、今は違う。


 何でも無い日常に、自分以外の声や体温があることが当たり前になっていたのだ。

 少し感傷的になっていたのだろう。


 悠馬は目的地とは違う場所へと、ハンドルを切り直す。


 ――――


 成田山◯勝寺。


 「懐かしいな……」


 悠馬は成田山◯勝寺の境内にいた。

 平日の昼間ということもあり、人はまばらだ。

 

 ここ成田山◯勝寺は、幼い頃祖父と一緒に訪れることが多かった場所の1つでもある。


「さて、まずは……」


 悠馬は昔教わった通りに、手水舎(てみずや)で手と口を(きよ)め、香閣(こうかく)で心のお(きよ)めを行う。


 その後、大本堂にて一礼、合掌をし賽銭箱の前へと進む。


「小銭がいるな……っと。 そういえば、お賽銭の語呂って色々あるけど、結局はコイツに落ち着くよな」


 悠馬は財布から5円玉を取り出すと、賽銭箱に投げ込む。


 ゆっくりと、合掌をし祈る。


 目を明け、静かに一礼した時、背後から声がかかる。


「もしや、印南様のお孫さんではありませんかな?」


 声に気づき悠馬が振り返ると、そこには法衣ほうえを纏った、寺の住職が立っていた。


 昔の記憶を辿りながら、悠馬は軽く頭を下げる。


 ――――


 阿弥陀堂横の階段にて、2人は言葉を交わす。

 

「懐かしいですな。 昔はよく印南様と来られておりました」


「ははっ……。 よく俺ってわかりましたね、最後に来たのって中学生の頃だったかと」


「人間と言うものは、姿形が変わろうとも、本質は決して変わることはございません」


「なるほど……」


「わたくしは、その本質を読み解き、道を示す修行を行っております。 ゆえに貴方様を見つけることが出来ました」


「はぁ……なんか凄いですね」


「『人となりを見る』これは、当たり前の事のようで、なかなかに難しい。 修行とはかくあるべきと、日々精進しておる次第です」


 齢70を超えるであろう、住職から出た言葉に悠馬は衝撃を受ける。


「失礼ながら結構なお年かと思います。 それでもまだ足りないと」


「そうですね。 我々の修行に終わりはありません、ただ……」


「ただ?」


 住職はゆっくりと瞼を閉じ、両手を合わせる。


「終わらせる事はいつでも出来るのです。 終わりがない、と思うことこそが生に繋がり、同じく臨終に近づくのかも知れません」


 そう言って住職は目を明け、優しく微笑む。


「難しいですね」


「そうですね、人生とは難しいものです」


 そう言って2人は小さく微笑み合う。


 その時、悠馬の記憶がふと蘇る。


「そういえば……。 昔、ここに来た時祖父と何処かに行ってませんでした?」


 記憶を辿った悠馬に見えたのは、祖父である征大郎と、住職がどこかに消える後ろ姿だった。

 当時は気にも止めて無かったが、成人した今なら分かる。


 一般人と住職が、毎回連れ立って何処かへ行く異質さが。


「俺は、巫女のお姉さんにお菓子がもらえる時間だと喜んでいたが、あれは何処へ行ってたんですか?」


 悠馬の問いに、住職は目を閉じ空を仰ぐ。


「その問いにお答えするには、良い時期やも知れません……。 悠馬様、こちらへ」


 住職は悠馬の顔を真正面に捉え、真剣な眼差しで見つめる。

 そして、促すように背中を見せ、敷地の奥へと歩む。


 悠馬は、その異様な雰囲気に『ゴクリ』と喉をならしつつも、住職の数歩後を踏みしめるように歩きはじめる。


 その先にあるのは――。

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