閑話 2 名古屋の夜 前編
13話で名古屋の観覧車に乗ったあとの出来事です。
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味噌カツに観覧車と、名古屋を満喫した3人。
「悠馬お兄さん。 次はどこへ行くんですか?」
「どこも行かねぇよ。 ホテルで休んで明日に備えるぞ」
「えぇ~。 あの光り輝く場所に行ってみたいです!」
そう言ってアリスは、名古屋の歓楽街のひとつでもある、錦地区を指さす。
「あそこは、女子供が行くような場所じゃねぇよ」
「しかし、悠馬様。 あちらの女性は見事なドレスアップ姿で、美しい照明のお店へ入っておりますが」
ノーラの目に映るのは、見事なまでの『名古屋巻き』を施し、美しいドレスを身にまとった、紛うことなき正統派の『名古屋嬢』。
「うわ~、キレイです。 私もあんなお洋服着てみたいです!」
「あれは働く側の人間だからいいの。 俺達が着てんのは『しま◯ら』! 浮きすぎて話にならん」
そうこうしている内に、予約していたビジネスホテルへと到着する。
受付を済ませ、エレベーターで部屋のある階へと向かう。
「これが鍵な。 無くしたら余計な金がかかるから、絶対に無くすなよ」
エレベーター内で、悠馬はツインの部屋のカードキーをノーラに手渡す。
「これが鍵ですか……相変わらず凄まじいテクノロジーですね」
「私も使いたいです! 悠馬お兄さん、私にも下さい!」
カードキーが不思議アイテムに見えたのだろう、アリスは子供のように悠馬へとねだる。
「1枚しかないから無理、あとお前無くしそうだし。 ノーラ、使い方は分かるか?」
「先ほど、利用方法の指南書を拝見しました。 特に問題ないかと」
「ならいっか。 あと外に出る時は……って、このまま寝るから大丈夫か。 なにかあったら俺の部屋に来てくれ」
「かしこまりました。 では、明日の朝食の時間に受付でお待ちしております」
「おう、じゃあゆっくり寝ろよ」
部屋のある階へ到着し、エレベーター前で2手に分かれる。
部屋の前に到着したノーラは、迷いなくカードキーをかざし中へと入る。
カードキーを壁の機械に差し込むと、明かりが灯った。
「ノーラいいなー。 わたしも『ピッ』ってやりたいです」
「まだ言ってるのですか? 出る時はそのままで良いみたいですし、もう使う事はありませんよ」
「ちょっとだけ出て『ピッ』ってやってもいいですか? 1回だけ! ねっ?」
「だめです。 あそこからカードを抜くと部屋の明かりが消えます。 アリスお嬢様は、遊びの為に従者を暗闇に放置するのですか?」
「むぅ~。 ノーラのケチ、いじわる!」
アホ毛を萎れさせ、アリスは涙目で従者へ辛辣な言葉を投げる。
「はぁ……。 悠馬様の仰った『子供』とは、アリスお嬢様の事で間違い無いようですね」
ぶつくさと文句を言いながら、アリスはシャワーを浴び、続いてノーラもシャワーへと向かう。
シャワーを浴びたノーラが部屋に戻った時、アリスは何故か外着に着替えていた。
「アリスお嬢様。 部屋着を準備していたはずですが」
「ふっふっふっ、良いことを思いつきました。 聞きたいですか?」
仁王立ちでドヤ顔を決めるアリス、アホ毛がビンビンに立っている。
「不安しか無いですね……聞きたくありません」
「ふっふっふっ、そこまで言うなら……って! いま聞きたくないって、言いませんでしたか!?」
「はい、言いました。 どうせ碌でもないことかと存じます」
「存じないで! ノーラぁ、いいから聞いてくださいぃ~」
すがるようにノーラの足元へとすり寄るアリス、『主従関係とは』と思い悩むノーラは、その姿に絆される。
「わかりました。聞きますから、ちゃんと座って下さい」
「やった! ノーラ好きです!」
ベッドに腰を掛け、アリスは名案 (?)を語りだす。
「ノーラは夜の街を歩きたくないですか? まだ、眠くないはずです」
「そうですね……時刻は21時、ダンジョンに入ったとはいえ眠くはないですね」
「でしょ? そこで外出です! 外に出れば楽しいこともあるはずですし、眠くなるかも! それに」
「それに?」
「帰って来た時にわたしが『ピッ』って出来ます! どうですか完璧です! エッヘン!」
ベッドの上に立ち、2度目の仁王立ちを決めるアリス。
「やはり、禄でも無いことでしたね。アリスお嬢様はカードキーを使いたいだけでしょう?」
「ギクッ!」
「しかし、外出することには賛成です。 まだ見たい場所もありますし」
「でしょ! ノーラ、外に行きましょう!」
「わかりました。 では着替えるので少しお待ちください」
「やった!」
思わずガッツポーズをするアリスを横目に、ノーラはしま◯らルックへと着替える。




