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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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閑話 1 ふたりだけの渡航

 4章開始前に「そういえば閑話って書いたことないな」と思ったので、今日から3話ほど閑話を差し込むことにしました。


 アリスとノーラが日本に転移するまでのお話です。

 順番的には1話の前、エピソードゼロ的なやつです。

 ――ローレライ帝国 ガードルド辺境伯領。


 死の森に隣接するガードルド地方では年に一度、騎士団総動員にて掃討作戦が行われている。

 今日は、約一カ月に及ぶ掃討作戦の最終日だった。


「おはようノーラ! 見てください、めっちゃ良い天気です!」

 

 朝日を受け、金色の髪を光り輝かせながら、アリスリア・フォン・ガードルドは振り返った。

 

 ガードルド辺境伯の一人娘にして、騎士団副団長――その肩書きに反して、声はやけに軽い。


「そうですね。アリスお嬢様」

 

 メイド服に身を包み軽くお辞儀をしながら返事をする女性。

 黒髪ポニーテールに長方形の銀縁メガネが映える、アリスリア専属メイドのノーラ。


「もう! 今日は掃討作戦の日なのですから、副団長と呼んでください!」

「失礼しましたアリスリア副団長。それよりも宜しいのですか? 集合時間まであとわずかですが」

 

「なんと大丈夫なのです! この窓から飛び降りれば集合場所の庭は目の前、頭いいでしょ? 褒めてくれていいんですよ! エッヘン!」

「頭の良い方は『エッヘン』なんて言葉は、口にしないと思うのですが……」

 

「なにか異論でもあるのかしら、ふふん」

「いえいえ、それよりもそのお召し物のまま、この3階から飛び降りるおつもりで?」

 

「あっ!」


 アリスは自分の格好を今一度見る。

 副団長以上の階級に下賜される銀白色のプラチナフルプレートに両手剣、そして家紋の入った純白のマントとフル装備だったのだ。

 

「城を抜け出し町に出るときとは違い、その恰好で飛び降りますと誰もがアリスリア副団長と気付くことでしょう。団員ならまだしも、団長や旦那様に見つかった日には、一体どのような叱責が待っているのやら」

 

 ドヤ顔のアリスの顔が、徐々に真っ青になっていく。

 

「もー! もっと早く教えてくれればいいじゃないですか! ノーラのばかぁぁ――」

 

「ですので何度も確認したではありませんか、そのたび『今日は秘策があるの』と言って……あぁ、もう聞こえてませんね」


 金髪とマント、そして頭頂部のアホ毛をなびかせながら、泣き顔で集合場所へ疾走するアリスを見ながらノーラはつぶやく。


 

 ――辺境伯邸 裏庭。


 

「はぁっ、はぁっ……なんとか間に合ったようですね。このままそーっと列に加われば……っと」

「おやぁ~、息を切らしながらこそこそとしておるのは、アリスリアお嬢様では御座いませんかなぁ」

 

「んげっ!団長!」


 アリスに声をかけたのは、ガードルド騎士団団長を務める、マグノリア騎士団長その人である。

 

 基本的な装備はアリスと変わらないが、細部に施された黄金の装飾が、2メートル越えの体躯も合わさって存在感を増している。

 

「大事な掃討作戦最終日に遅刻とは、なんと嘆かわしい……」

 

「いや、マグノリア団長!これには深い訳がございま――」

「やかましい! 副団長ともあろうものが、遅刻のうえに言い訳とは何事か! しかも、お主が並ぶのは一般団員の列ではなく前方であろう!」

 

「ひぇっ!申し訳ありません!」

「分かったのであれば、早くこっちへ来るのである!」

 

 首根っこをつかまれたアリスは、ずるずると引きずられながら列の前列へと連行される。


 団員と従者を前にマグノリア団長が口を開く。

 

「さて、皆のものよ。 死の森魔物掃討作戦も本日をもって終了! 午後からは慰労会を開催する予定である!」

 慰労会という言葉に団員達がざわめく。

 

 「それに伴い本日は料理人はじめ従者の方々も同行する、自分の周辺だけではなく、従者の方へ危険が迫らぬよう心して作戦に挑むように!」

 

「「おおぉ――――――!!」」


 団長の喝も入り団員たちの熱も最高潮となり、その熱量のまま作戦を完遂すべく黒の森へ。


 

 特に大きな事故もないまま、掃討作戦は無事終了。

 慰労会の準備をする従者たちと、休憩する騎士団員たちの中に、アリスとノーラもいた。

 

「あれ?ノーラどうしたのですか?」

 

「どうやら薪が足りなくなりそうなので少し集めに行こうかと」

 籠を小脇にかかえたノーラへと、アリスが声をかける。


「ふむふむ、掃討作戦が終わったとはいえ1人じゃ危ないと思います。 ですので、私が護衛として付いていきます!」

「それはありがとうございます。お疲れのところ申し訳ありませんが、お願い出来ますでしょうか」

 

「お任せください! 何が出てきてもだいじょーぶです! なんてったってガードルド流閃技の使い手なんですから。エッヘン!」

 鼻息荒く、大きく胸をはるアリスを見て、ノーラはため息交じりに返事する。


「言いたい事は色々ありますが、今はよしましょう。宜しくお願いします、アリスリア副団長殿」

「そうと決まれば早く行きましょう! さぁ行きましょう!」


 ――――

 

「ふぅ、これだけあれば足りそうですね。お嬢様はどちらに……」

 

 小枝で溢れる籠を抱えつつ、ノーラはアリスの姿をキョロキョロと探す。

 その時、少し離れた場所からアリスの声がしてきた。

 

「ノーラ! ちょっとこっち来てくださーい!」

「はぁ、護衛が離れてどうするのですか……」

 

 相変わらず、奔放なアリスに呆れつつも、ノーラは声のした方へと向かう。

 

「どうされましたアリスリア副団長?」

「もう! 今は2人だけなんですから副団長はやめてください! って、それよりこれを何だと思います?」

 

 そういってアリスが指さしたのは、小高い丘に面した小さな洞窟だった。

 入口は狭いものの、なんとか人一人であれば入れるほどの大きさだ。

 

「これは洞窟でしょうか? 生き物が住むには大きくも、小さくもあり何とも絶妙なサイズかと」

 

「こんな目立つのに変です、初めて見ました」

 

「たしかに、私も聞いたことがありません」


 死の森には、討伐作戦を始め、過去に何度も来ている。

 それゆえに、始めて発見した洞窟に、関心よりも不安感が募る。


「何はともあれ、今は慰労会が先です。 この件は、マグノリア団長に報告してから……って、アリスお嬢様!?」

 

 ノーラが横を見ると、先程まであったアリスの姿が見当たらない。

 目の前の洞窟をみると、アリスは既に中へと入っていた。

 

「よっこいしょっ……へぇ、意外に中は広いんですね」

「アリスお嬢様お待ちくださいっ」

 

 入口から十メートルも進まないうちに開けた空間へ出た2人。

 天井は高く、やや明るい、どこからか光が入ってきているのだろうか。


「うーん、見た感じ鉱石も、お宝もないみたいです……残念」

 

「全く、満足しましたか?それでしたら皆のもとへ戻りましょう。 慰労会は始まっていると思いますよ」

 

「いけない! 早く戻らないと、私の大好きなブラックボアの丸焼きが取られてしまいます!」

 

「相変わらず食い意地のはったご令嬢ですこ……」

「美味しいは正義なのです!って、ノーラどうしたんです?いきなり考え込んで」

 

 言葉の途中で、急に洞窟上部を見つめ無言になるノーラを、アリスは不思議そうに見つめる。


「いえ、この洞窟の入口があった場所は少し小高い丘くらいだったはずです。にも関わらずここの天井は遥か上にあります、入口からそう遠くないのにあり得るのでしょうか?」

 

「言われてみれば……変ですね」

 

 2人は、あまりに高すぎる洞窟の天井を見つめる。

 ぼんやりと何かが見えるそれは――模様のようで、だが紋章のようでもあった。


「ノーラあれは何でしょうか? 何か模様が見えませんか?」

 

「あれは……紋章? いえ、魔法陣……のようにも――っ!?」

 

 一瞬の静寂の後、張り詰めた空気が洞窟内を支配する。

 その刹那、洞窟の天井から眩いばかりの光が溢れ出ると同時に、耳を貫くような高圧的な音が2人を襲う。


「何っ! ノーラ大丈夫ですか!」

「はい! すぐ近くにおります。アリスお嬢様は大丈夫でしょうか!」

 

「私は大丈夫です! 何かあったらいけないです、私の近くに来てください!」

「はい只今っ……!」

 

 眩い光の中、かすかに目を開け位置を確認し、互いに手を伸ばし始める。

 その間にも段々と光と音は強さを増し、わずかに目を開けることすら困難になりかけたその時。


 ――突然光が弾ける様に散った。


 僅かな浮遊感を感じ、2人がゆっくりと目を開ける。

 その目に映ったのは、身の丈ほどある大きな棍棒だった。


 回避は間に合わない――。


 そう考えたアリスは、隣にいたノーラを庇うように抱きかかえた。

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