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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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76. 深層の先に待ち受けるもの

 大太刀の剣筋が、待ち構える場所へと、吸い込まれるように直進する悠馬。


「悠馬お兄さん危ない!」

「ユーマ!止まるのだ!」


 誰もが『斬られる』と、思ったその時――。


 大太刀が一瞬加速する。


 自分の意思ではなかったのだろう、赤武士は加速した大太刀に引っ張られ、バランスを崩す。


 悠馬は大太刀に向け【琥珀色の矢印】を起動。


 一気に加速させたのだ。

 

 大太刀が通り過ぎ、安全地帯となった場所を悠馬は通り抜け、赤武士の懐に入り込む。


 バランスを崩しながらも、赤武士は反撃を試みる。


 大太刀を手放し、空いた右手で裏拳を放った。


 だが、そこに悠馬の姿はない。


『なぬっ!?』


 消えたように見えた悠馬は、その場でしゃがみ込み、後ろ回し足払いで赤武士の機動力を奪う。


 背中から倒れた赤武士へ馬乗りになり、喉元へ短剣を突きつける。


「終わりだ」


 武士と案内人のいくさは終結した。

 


「あれは、ワシとやりあった時に見せた技だな……」


「そうです! お父様は悠馬お兄さんに転ばされたんです! あの『ぶしさん』と同じです!」


「へぇ……そいつは、面白い絵だね」


「ぬっ! アリスよ!余計なことを言うでない!」


「でも、本当の事じゃないですか! お父様! 嘘はいけません、嘘は!」


 アホ毛をピンッと立てて、アリスはドレイヴンに詰め寄る。


「ぬぅ……。 ともあれ、決着はついたようだな」

 

 ――――


 喉元に短剣を突きつけられたまま、赤武士は悠馬へ問う。


『なぜ、首を取らない……決着はついておるぞ』


「何ていうかな、あんた人間臭いんだよ」


『人間臭い……だと?」


「あぁ、そうだ。魔物って感じがしない。……あと、聞きたいこともまだあるし。 ……それに、マグロ食ってないんだろ? じゃあ、武士は死なねぇよ」


 悠馬はゆっくりと立ち上がり、ポリポリと頭を掻きながら、赤武士へと手を差し伸べる。


『ふふっ……なかなか面白いやつよ。 して、聞きたいこととは何だ』


 悠馬の手を取り、その場に立ち上がった赤武士は、憑き物がとれたような目をしていた。


「そうだな、あんた名前は?」


『名は……忘れた。 ここへ来た後、われの中から昔のことが、少しづつ消えていくような感覚がある』


「……そうか。 他に覚えてることはないのか? ここへ来る直前のことや、信長公の事とかでもいい」


『あれはたしか……三河国長篠城へと向かっている途中。 突然、目の前が真っ白に……』


「三河国長篠城だと……。 と、いうことは長篠の戦いか……相手は武田軍。 違うか?」


『おぬしの言う通りだ。 我軍は武田騎馬軍に対抗するため、火縄銃を持って進軍しておった』


「やっぱりか、なら1575年。 450年以上経過している事になるな……なにか変だ」


『どうした、何か気になるか?』


「いや、後でまとめて話す。 続けてくれ」


『うむ。 その白い空間で、お館様が仰ったのだ、一言『ここを守れ』と、そして気づいた時にはここにおった』


「それで100年以上。……いや、150年ここを守り続けていると」


『その通りだ。 ただ、日々薄れゆく記憶の中ではあるが、心に引っかかりがあるのだ』


「引っかかり? それは何だ」


『われに命を下した際の……あれは、お館様ではなかったのかもしれん……と』


 大太刀を拾い上げ、思い出すかのように、ゆっくりと目を閉じる赤武士。


 そこに、いつの間にか近くにいたヴァレンタインが問いかける。

 

「なぜ、そう思うんだい?」


『あの時のお館様の甲冑には「織田木瓜おだもっこう」の家紋がなかったのだ。 代わりにあったのは……たしか『鷲』と『杖』のような』


「『鷲』と『杖』だって!? それは一体どういう――」


 ヴァレンタインが驚きの表情を浮かべる。


 続けて、問いを投げようとするも、遮るように悠馬が叫ぶ。


「――ヤバい! 全員、後方に飛べ!」


 言うや否や、悠馬は【琥珀色の矢印】を起動し、全員を無理矢理動かす。


 自らの跳躍と、悠馬の【琥珀色の矢印】によって、高速で後方に飛ぶ四人。


 強引な着地後、全員の目に写ったのは。


 ――空間の断裂。


 それは、巨大な骸骨が現れた時のものに酷似していた。


 日本組にとっては白。

 帝国組にとっては黒。


 まさに、悪夢の象徴とも言える断裂が目の前にあった。


「なんだこれは……まさか、また骸骨が出てくるってのか」

「悠馬お兄さん! あれはあの時の!」


「幾度来ようが同じ事! 等しく切り刻んでくれる!」

「やれやれ……懲りないやつだね」


 全員の額に冷や汗が滴る。


 その時、悠馬が異変に気付く。


「そうだ! あの武士は!」


 断裂は赤武士がいた場所に顕現している。


 そして、そこに赤武士の姿はない、その代わり二つの影が断裂の後ろから現れる。



「いやー。 あいつ変な事言いかけたからびっくりしたよ」

「その通りでございます。 黙って門番をやっておればいいものを……」


 現れたのは、白いローブを羽織った少年と、執事服を身にまとった壮年の男性。


 いつから居たのか、どこから現れたのか。


 悠馬たちが、そんな疑問を持つ間もなく、二人はこちらに向け歩を進める。


 少年は、赤武士が居たであろう場所に落ちている『赤い石』を拾い上げ、悠馬たちを見る。


「お兄さん達、強いんだね。 まさかこいつが倒されるとは思わなかったよ」


 少年は『赤い石』を放り上げ、受け止め、また弾ませ弄んでいた。


 「……誰だ。 あいつをどこにやった」


 悠馬は絞り上げるような声で問いかける。


「あいつって、あの赤いヤツの事かな? ねぇ、どこいったの?」


 少年は隣の執事へと問いを回す。


「そうですね……もともと死んでおります故、次元の狭間にでも消えたのでしょう」


「だって。 じいの断裂エグいよね、ウケる」


 執事の返答を受け、少年は軽く笑う。


「次元の狭間だと……!?」


 その時、横から影が飛び出す。


 影は真っ直ぐに少年へと向かい、大剣を振りかぶる。


 ――ガキンッ!


 硬い金属同士がぶつかり合うような音が響き渡る。


「ドルッ!」


 飛び出して来たのはドレイヴンだ。


 振りかざした大剣は、少年の眼前でギリギリと音を立て、空中で静止していた。

 

「子供とは思えぬその魔圧! 見た目通りの年齢ではなかろう!」


「おじさん……空気読めないって、言われない?」


 静止する大剣を前に少年は、軽口を叩きつつ執事へと目配せする。


 その瞬間、ドレイヴンの大剣は「カランッ」と音をたて、中心から切っ先が地面に落ちる。


「なんと!」


「失礼……。 我が主を傷つけられるのを、黙認するほど耄碌しておりませんゆえ」


 先ほど見た断裂が、ドレイヴンの大剣を真っ二つにする。


「主に対し、これ以上無礼を働くようであれば、私がご相手いたしましょう」


 全身からほとばしる魔圧が、ドレイヴンを圧倒する。


「なるほど……されば、お主から先に葬るとしようか」


 切っ先を失った大剣を執事に向け、ドレイヴンは極限の戦闘体制へと移行する。

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