71. パーティー分けと消えた5万円
「なんだ、ここは……この全てが店だというのか」
ジャージ姿のドレイヴンが、駐車場に向かう車内で驚愕している。
「ここが……『この世の全てが揃う』って場所だね――楽しみじゃないか」
「いやいや、ヴァレンタインさん。 そこまでは言ってねぇよ、でも楽しめるとは思うぜ」
悠馬はバックミラーで他のメンバーを見ると、アリスは目をキラキラさせてアホ毛を旋回させている。
そして、3列目のシートで望海とノーラが怪しげな会合を開いていた。
「……何話してんだか」
――――
駐車場に車を止め、全員が車外へと降りる。
「さて、望海が泊まることに関しての買い物とかもあるだろうし、二手に分かれようか」
悠馬がメンバー分けを発表する。
悠馬、アリス、ヴァレンタインのA班。
望海、ノーラ、ドレイヴンのB班。
「悠馬様。 なぜこのような振り分けにしたのかお伺いしても?」
アリスと別になることに不満があるのか、ノーラは悠馬へ詰め寄る。
「ん? まず、連絡取れないと困るから俺と望海は別。 こっちは力仕事があるから、ドレイヴンさん欲しいけどナンパ避けで俺とドレイヴンさん別、なので代わりにアリス。 そんな感じだな」
「なるほど。 しかし……力仕事であれば――」
「あと、常識枠で俺とノーラは別。 って感じだな」
悠馬からの思わぬ評価にノーラは戸惑う。
「そ、それならば納得いたしましょう。 臨時パーティーの要として動くことをお約束いたします」
「お、おう。 頼むわ……あとこれ予算な」
悠馬は予備の財布ごと、5万円をノーラに渡す。
「敷地内にユニ◯ロとかもあるし、ジャージ以外のみんなの部屋着とか、調理道具なんかも買ってくれて構わない。 じゃあ30分後に車に集合な、遅れそうなら連絡くれ」
「わかったわ。 ドレイヴンさん、ノーラさん行くわよ」
そう言って、B班は歩き出す……シャンプー、トリートメントコーナーへと向かって。
「さっそく、どこ行ってんだか……」
「で、悠馬。 私たちは何を買うんだい?」
「そうだな、広すぎるし店員さんに聞くか」
悠馬が探しているのは強度があり、持ち運びしやすく、車に載せやすい、中身が見えない『箱』
可能ならば鍵が掛けられるものがベストだ。
店員におすすめされたのは――。
「うん、これなら大丈夫そうだな」
「キラキラして綺麗です!」
「これは何ていう素材だい? 軽いけど強度もありそうだ」
眼の前にはアルミ製コンテナが並んでいる。
ロック部分に南京錠タイプの鍵が掛けられるタイプだ。
「150Lサイズだから大きめの素材も入るだろ。 じゃあこれを6個、それとダイヤル式の高級南京錠も6個お願いします」
悠馬に注文を告げられた店員は、在庫を取りにバックヤードへと走る。
「悠馬お兄さん。 ダイヤル式南京錠ってなんですか?」
「南京錠ってのは鍵だな。 ここのロック部分につけるんだ、ダイヤル式ってのは数字を揃えないと開かないタイプの鍵だな」
「へぇ、それで毎回数字を変更することで、他人には開けられない……と」
「ヴァレンタインさん、その通りだ。 単なる鍵だと複製される可能性もあるからな」
「でも、局の連中がやろうと思えば、解錠は可能だろう?」
「うーん。 たしかにそうなんだが、ここまでやって開けてくるなら仕方ないかな。 そもそも、素材売却自体が信用で成り立ってるようなもんだし」
その時、店員が商品を揃え現れる。
そのままレジへ行き会計を済ませ、車でB班を待つ。
――――
「ごっめーん! もしかして待たせたかしら?」
「望海様、定刻通りです。 問題ないかと」
手ぶらで現れた2人の後ろから、買い物袋を抱え、顔が見えないドレイヴンが続く。
「がははっ! 荷物は軽いがかさ張るな! 前が全く見えん!」
「ノーラ! お前メイドが手伝わなくてどうすんだよ!」
悠馬はドレイヴンに駆け寄りながら、ノーラに指摘する。
「ユーマ、よいのだ! ワシが自分で持つと言ったのだ、気にするでない!」
納得がいかない状況ながらも、本人が了承しているならと車のドアを開ける。
――――
「ギリギリ、座れるって感じだな」
荷物で溢れかえっている車内、何人かは座りながら買い物袋を抱えることになるだろう。
「そうね。 で、悠馬これから晩御飯の買い出しでもするの?」
「これ以上荷物が増えるのは避けたいし……お前の専属祝いも兼ねて外食するか」
悠馬の一言にオグリ家騎士団から勝ち鬨があがる。
――――
「……私のお祝いってフードコートでやるつもりなの?」
悠馬が向かったのは同じ敷地内にある、フードコートである。
「ん? 不満か? ここなら何でもあるぞ、全部美味しいし問題ないだろ」
悠馬の言う通りだった、ここにはK◯C、焼き鳥◯源、ゴー◯ーカ◯ー、石◯きビ◯ンパ、ペッ〇ーランチなど。
まさに、食の楽園であった。
その証拠に――。
「悠馬お兄さん! かれぇです! かれぇの匂いがします!」
「この香りは、先日諦めることを余儀なくされた唐揚げ! さらに肉を串に焼いているとは……なんという逸品!」
「ユーマよ! この白いおっさんの店からいい匂いがしておる! 早く食おうではないか!」
「鉄板で肉を焼くとは……わかってるじゃないか。 さぁ、悠馬。 さっさと金を払う準備をしな」
各々が、好みの店の前で騒ぎ立てている。
「何なの? これがオグリ家騎士団だっての?」
「そうだぞ、飯は皆共通の楽しみだからな。 望海と俺しか金持ってないから、さっさと支払いに行くぞ。 さっきのお釣りで足りるだろう」
「……わよ」
「ん?なんだ?」
「だから、ないわよ! 全部使ったもの!」
開き直ったような顔をして、望海は空っぽの財布を広げる。
「まじか! 5万円全部使ったってのか? どんな買い物してんだよ!」
「はぁ? 仕方ないじゃない! それにこれは必要経費よ。 文句言わないで追加しなさいよ、早くしないと団員たちが泣くわよ」
しぶしぶ、悠馬は追加投資をし全員の支払いを済ませる。
「ホームセンターで5万って……今日は出費が重なるな」
せめても抵抗だろうか、悠馬は『はなまる◯どん』へと歩みを進める。




