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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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68. 悪魔の契約と栄光への橋

 主のいなくなった部屋で、一同は円を描くように座る。

 重めの空気の中、ヴァレンタインが口火を切る。

 

「さて、改めて話をしようじゃないか」

 

「この際、カメラがどうとかは詮索しない。 今更だし、あんた何も知らないんだろう?」


「――仰る通りです。 私より上の、もしくはそれ以上。 管理局本部が動いている可能性があります」


「府後さん。 それじゃあ、管理局では話も出来ないじゃないか」


 悠馬は当然の質問を投げかける。


「ですので、ヴァレンタイン様はダンジョンへと来たのですね?」


「その通りだよノーラ。 府後、あんたさっきまでの攻略みてどう思った?」


「私はデータでしか見ていなかったので、正直半信半疑でした。 ただ、あれを見てしまうと信じるしかありません」


「だと、思ったよ。どうせ、望海と結託して何か不正でもしてるか疑ったって所じゃないか?」


「……その通りです。 ですので、素材など持っているはずないと」


「なにっ! だから、アンタ俺たちが手ぶらでも何も言わなかったってのか!?」


 図星を突かれ、特級パーティーリーダーに詰められ、府後は小さく「……はい」と繰り返すだけだった。


「府後、その上で聞きなさい。 ――そこの脳筋親子!」


「なんだ!ワシらの事か?」

「ほぇ?」


 話し合いに飽きたのか、重めの空気に耐えられなかったのか。

 知らない内に、打ち込み稽古をしているドレイヴンとアリスに声を掛ける。


「あんたらここに来るまでの道中、どの位の力でやった?」


「そうだな……いいとこ1割ではないか? のう、アリスよ」

「そうですね! そこの、眼鏡お兄さんが歩くの遅いので時間かかりました。 ただ、力加減はお父様の言う通りかと」


「な、なんと! あれで1割」


 驚く府後をよそに、ヴァレンタインは続けて悠馬に声を掛ける。


「悠馬。 あんたらが本気出したら、ここまで何分で来れる?」


「時間か……無視できるのは無視しつつ、殲滅前提の全速力なら20分かからないと思うぞ」


 悠馬の計算は全武力を駆使し、全員が全速力で最適解を駆け抜けた際のものだ。


「聞いたかい? これがオグリ家騎士団だよ、あんたが手綱を握れる相手じゃない。 わかったかい?」


 府後はコクコクと、壊れたおもちゃのように首を縦に振る。


「さて、それを踏まえて交渉といこうか」


 ヴァレンタインは真面目なトーンで府後に向き合う。


「あんた『ら』の意見は受け付けない。 ――よく聞きな」


 

 ヴァレンタインが提示した内容とは――。


 ・望海をオグリ家騎士団専属にする事。常に何があっても対応できる状態を維持。


 ・素材の受け渡しは全て望海を通す事。素材に関し詮索の類全てを許可しない。


 ・金銭のやり取りはパーティー共有の口座で行う事。


 ・今後、話し合いが必要な場合は、オグリ家騎士団主導で場所を用意する事。呼び出し等には一切従わない。


 ・上記が守られよう契約書にサインをする事。


「――以上だ。 異論は認めないよ」


 府後は少し考えたあと、口を開く。


「2つ目までは私の権限で即、実行可能です。 3つめに関しては、管理局員のみが使用できる口座があるので、それを――」


「却下だね。 それじゃあ、懐事情が筒抜けになるじゃないか」


 ヴァレンタインは府後の言葉を遮る。


「し、しかし売却するとなれば金銭の支払いが発生します。これは、どうやっても履歴が残りますので……」


 ヴァレンタインは顎に手をあて、打開策を探す。


「府後さん、口座についての話を続けてくれないか」


「は、はい。 管理局は国が管理しているので、通常の金融機関と違い預金保障の上限がありません。 あと、全金融機関を24時間無料で使えます」


「あとは?」


「あとは……1つの口座にアクセスできるカードを複数発行できます。 ですので、パーティーメンバー全員に1枚ずつというのも可能です」


「なるほど……税金の類はどうなっている?」


「税金は素材売却時に全て徴収されます。 それには贈与税や相続税も含まれます。 故に、振り込まれた資産に関して後から税金がかかるような事はありません。 あっ、消費税とかは掛かりますが」


「そうか……じゃあ、その口座を作ろう。 ヴァレンタインさんもそれでいいだろ?」


 悠馬は何かを含ませるように、ヴァレンタインに声を掛ける。


「……ん。 あんたがそういうなら構わないよ」


 意図を感じ取ったのか、ヴァレンタインは提案を受ける。


「で、残りはどうだい?」


「そう、ですね。 特に問題はありません……ただ」


「ただ、なんだい? この期に及んで何か不満でも?」


 ヴァレンタインの視線が、再び府後を貫く。


「い、いえ。 不満とかではないんですが……ダンジョンはもうやめて頂けると……あははっ」


 油汗をハンカチで拭いながら、府後はもう懲り懲りといった表情を浮かべる。


「ふふっ! わかったよ、次からダンジョンは無しにしようか」


 2人のやりとりに空気が少しだけ和らぐ。


「あとはサインだね。 ノーラ、あれを持ってきな」


「はい。 ヴァレンタイン様こちらに」


 ノーラは用意されていた紙を2枚取り出す。

 

 1枚は白紙、そしてもう1枚は、帝国文字であろう象形文字のような文字で書かれている。


「これは一体……」


「あたしらの国の文字だよ。 今から内容を口頭でいうから、あんたが筆記するんだ。って内容が信じられないか」


「正直申しますと……この用紙の文字は読めませんし、怖いというのが本音ではあります」

 

「どうしたもんかね……」


「ヴァレンタイン様。 口頭での契約魔法は如何でしょうか? この場所なら可能かと」


「おぉ! ノーラやるね! その手があったか、たしかにここの魔素量なら出来そうだ」


「ヴァレンタインさん、契約魔法って?」


 理解できてない悠馬は、当然の疑問を口にする。


「口頭での約束事を、魔力を使って紡ぐことで契約に昇華させる魔法だよ」


「そんな事ができるのか! 相変わらず魔法すげぇな」


「だけど、内容を反故にした場合……」


 ヴァレンタインは府後を見つめる。


「待ってるのは――死だ」


「「えっ」」


 重すぎるペナルティに悠馬と府後は、同時に声を上げる。


「そんな、私は悪魔に魂を握られてしまったという事でしょうか」


 またも府後の顔が青く染まっていく。


「そんな顔するんじゃないよ。 今回の話、あんたにも利益があるじゃないか」


「利益……ですか?」


「これからあんたは特級素材が持ち込まれる支部のトップだ、評価も上がるし待遇もよくなる。 それに、国内最強クラスの武力があんたの管理範囲内に存在する事実。 これは階層構造である管理局という組織内にとって、発言力の大きさにも繋がる。 違うかい?」


「い、いえ。 その通りです! これで私にも出世のチャンスが! そして、今まで特級ダンジョンがありつつも、攻略が進まないという事で、私を見下してきた連中に一泡吹かせる事が出来る!なんというチャンスだ!まさに僥倖!」


 今までの鬱憤が希望に変わったのか、府後は堰を切ったように言葉を吐き出す。


「さぁ! ヴァレンタイン様、今すぐ契約を! オグリ家騎士団に栄光あれ!」


「あ、あぁ。 ――あんた何か変わったね」


 府後の勢いに押されながらも、ヴァレンタインは契約魔法の詠唱を始める。


 府後が契約するのは、栄光を約束する天使か。

 それとも、地獄の沼へと案内する悪魔か。


 契約詠唱しながら、ヴァレンタインは怪しく口角を上げる。

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