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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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64. 継承とふたつの過去

「入院ですか……どういったご病気だったのですか?」

 

 ノーラの問いかけに悠馬は声のトーンが下がる。


「……原因不明だとよ。 医者が言うには『生命力が下がってきているが、老衰より進行が速い』って事しか分からんかったらしい。 まぁ、80歳超えてたし、俺もある程度の覚悟はしてた」

 

「そんな事が……ヴァレンタインさんなら何かわかるんじゃないのですか?」


 狼狽えるアリスに、悠馬は優しく声をかける。

 

「アリス、昔の話なんだ。 それに日本の医療は世界的に見ても上位に位置する、それで不明ならばどうする事も出来ない」

 

「そうなんですね……」


 アホ毛が萎れてしまったアリスの頭を、悠馬が優しく撫でる。


「じいちゃんは、徐々に衰弱していったよ。 まさに、目に見えて、ってやつだ……そんなある日」



 ――――


 

「悠馬よ、こっちへ来てくれんか」

 

 病院のベッドの上で、征大郎は悠馬を呼ぶ。

 その声はか細く、庭で大声を上げていた姿はそこにはない。

 

「じいちゃん、どうしたんだ? 水でも飲むか?」


 悠馬は言われるがまま征大郎へと近づく。

 その時、征大郎は悠馬の手をそっと握った。


「悠馬よく聞くんじゃ、お前はいつか誰かを導くことになるじゃろう。その為の土台作りは終わっておる」


「なに言ってんだじいちゃん。 意味がよくわかんないんだが?」


「もともとは娘に渡すつもりだったが、そんな間もなくアイツは逝ってしまったからな。 だから悠馬、お前が受け取るんじゃ……!」


「さっきから何いってんだよ。 ちゃんと説明してくれよ!」


 悠馬の手を握る征大郎の手に、だんだんと力が込められる。


「いいか、大事な時、絶対に間違うのではないぞ。 戦い、守り、導く。 その全てを全力でやるんじゃ、それがきっとお主の人生を変える」


「だから何なんだよ……って! じいちゃん痛いっ!」


 悠馬の中に、握られた手を通じて『何か』が入ってくる感覚がする。

 優しく、心地よい温度の『何か』は、次第に悠馬の身体を包み込む。


「悠馬よ。 ――抱えきれない程の幸せが、お前に降り注ぐことを近くで見守っておるぞ」

 

 一瞬、光が病室を包む。

 

「なっ!」


 光は直ぐに落ち着いた。


 その時、悠馬の目の前にいたのは――力なくベッドに横たわる、征大郎の姿だった。


「じいちゃん? ――じいちゃん? うわぁぁーーん」



 ――――



「ガキみてぇに泣いたよ、それを聞いた医者たちが飛んできて……臨終を告げられた。 その時スキル名は分かったんだが、使い方は不明だった」


「……悠馬様、お婆様はご存命だったのですか?」


「その時点ではな。 ただ葬式も終わった後くらいから、ばあちゃんも見るからに元気がなくなっていった。 ――数か月後には後を追う様に亡くなったよ」


「伴侶が旅立つと、残された者も短命になる。 愛が深い間柄であればあるほど顕著とは聞くね、こっちの世界でも同じとは……世界は違えど習性は同じ。 『人』ってのは、不思議な生き物だね……」


 ヴァレンタインの呟きに再び空気が沈む。

 話の歩みを促す様に、ノーラが悠馬へ問いかける。


「……悠馬様はなぜ、探索者になられたのですか?」


「祖父母が亡くなってから、急に脱力感がでてな。 有体にいえば、ふさぎ込んで家に引きこもってたんだ。 じいちゃんの最後の言葉も忘れて……それこそ年単位でだ」


「悠馬お兄さんにそんな事が……」

 

「そんな時に、声を掛けてきたのが……幼馴染の3人だ」


「以前、フェリーで話してくださった方々ですね」

 

「そうだ。 あいつらに説得されて、探索者になりパーティーを組んだ。 ……そこからは2人に話した通りだ」


「ワシとヴァレンタインはその話知らんぞ、教えてくれ!」

「そうね。 あたしも聞きたいわ」

 

 過去話に興味を持ったのか、転移『後発組』の2人は悠馬に話を促す。

 

「更に長くなるからダメだ。 暇なときにでも、そこの2人から聞いてくれ」


 悠馬は顎でアリスとノーラを指す。

 

「そういう事だから、ヴァレンタインさんの言った『自我』ってのと、最近のスキルの変化が引っ掛かるんだよ」


 話し終えると悠馬はヴァレンタインへと目線を向ける。

 ヴァレンタインは目を閉じ、考え込むように腕を組んでいる。


「とりあえず、情報が多すぎる。 あんたの話を踏まえたうえで、いくつか質問を考えてみるから時間を頂戴。 返答から見えてくるものもきっとある。――だから今日はここまで良くないかしら?」


 ヴァレンタインは呆れたようにうなだれる。

 

「それもそうだな、続きは今度だ。 ……そうそう、ヴァレンタインさん。 明日は朝一で素材を見てくれないか?」


「そうだ! ノゾミ殿に約束したのでな! ヴァレンタインよ頼むぞ」


「はいはい、わかったわ。 素材見るなら明るい方がいいし、今日はもう寝ましょう」


 ヴァレンタインの言葉に、今日は解散となった。


 それぞれ、客間、居間の寝床へと移動する。


 ――――


 時計がてっぺんを指した後も、消えない明かりがキッチンにあった。

 昼光色の柔らかな光の下で、悠馬は普段飲まない酒を口に運んでいた。


「じいちゃん、ばあちゃん……久しぶりに2人の事を話したら、少し寂しくなっちまった」


 テーブルの上には祖父母の遺影が飾られている。

 まるで会話するような声色で、悠馬は2人に話しかける。


 テーブルにはアルバムが開かれている。


 庭で朝稽古をしていた時の写真。

 みんなで裏山へピクニックに行った時の写真。


 どれも幸せそうな顔で溢れている。


「これは俺が引き取られて直ぐの頃か。 ……泣き虫だったって、じいちゃんよく言ってたな」


 悠馬が感傷にふけっていると、ゆっくりとキッチンの扉がひらく。


「ユーマよ、こっそり晩酌とはズルいのではないか?」


 ひそひそ声で扉を開けたのはドレイヴンだ。

 酒の匂いにつられたのか、悠馬を心配したのか定かではない。

 

 ただ、……悠馬の心は、少し軽くなった気がした。

 

「まったく……また2人に怒られるぞ」

「ちょっとであれば大丈夫だ。もう寝ておるしバレる事もない……それに1人は寂しいであろう?」


 ドレイヴンは顎を搔きながら、明後日の方向を見る。

 

「……ふっ、ちょっと待ってろ。」


 そう言って悠馬は、グラスを取りに立ち上がる。

 その時、テーブルの上の写真にドレイヴンが気付く。


「この方々が、今日話しておった祖父母であるな。 どれどれ……」


 写真を手にしたドレイヴンは、思わず息をのむ。


「ユーマ……これは一体」

「そいつか? それは写真と言ってな、目に映る瞬間を切り取る……一瞬で出来る、絵みたいなもんだよ」


「……そ、そうか、それは素晴らしいな。 是非ともアリス達の姿も残したいものだ」

「そいつはいいな。 どこかで時間作って皆で写真撮ろうか、きっといい思い出になる」


 日も変わり、闇がより深くなる頃。

 2つのグラスが、優しく音を鳴らす。

 

 そのグラスが写すのは、過去を懐かしむ男の姿か。

 

 それとも……過去の英雄を思い出す男の姿か。

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