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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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63. 違える常識と暖かい過去

 静まり返った居間で、悠馬は言葉を続ける。


「この世界において、スキルというのは『初めてダンジョンに入った時に自然発生する』のが普通というか、一般的なんだ」


「たしかにそれは、管理局のホームページで見たね。 それ用のダンジョンツアーみたいなものがあると」


「ヴァレンタインさんの言う通りだ。 お試しで入ってスキルの有無を測定し、探索者になれるかの分水嶺がそこにはある。 スキルが発生した者は『スキル名』や『使い方』が、何となく分かるみたいだ」


「悠馬様はそれではない……と」


「そうだ、俺の『道標ガイドポスト』は、祖父から継承されたものだ」


 悠馬は、自身が異端であるという非難を覚悟で、一同に向け暴露した。


 だが、それぞれから発せられた反応は、想像していたものと違っていた。


「ふむ、帝国では聞く話だな」


「そうなのか!?」


 ドレイヴンの思わぬ反応に、悠馬は驚きを隠せない。


「帝国では約8割ほどの人が魔法を使用できる。 もちろん生活魔法でとどまる者もいれば、戦闘に使用できるレベルまで昇華する者もいる。 と、いうのが帝国の常識だ」


「御屋形様の仰る通りです。 こちらの世界とは違い、逆に『スキル』を持つ者が少ないのが帝国です」


「それが、残りの2割と……そういう訳か?」


「その通りね。 特別な血筋にある者たちが『スキル』を継承し、皇帝からの密命を遵守、もしくは戦場へ赴く。 そういった貴族が一定数存在しているって事」


「でも、悠馬お兄さんは帝国の人ではないですよね? ご家族の方が帝国の人? ん?」


 アリスは自分の言葉に混乱する。


「悠馬。 継承の件も含め、全部話してもらおうかしら」


 ヴァレンタインは、興味半分、知識欲半分といった顔で話を促す。

 

「あぁ、元よりそのつもりだ。 長くなるから覚悟してくれよ」


 

 ――――


 

 今から30年前 1995年


 1人の高年の男性が、墓の前に立っていた。

 その腕には、生まれたばかりの赤子が抱かれている。


 男性の名前は、印南いんなみ 征大郎せいたろう

 

「親より先に逝くとは、この親不孝もんがっ」

 

 印南は現在65歳、ただその見た目は若々しく、40代と言われても不思議はなかった。

 

「えんっ、えんっ……うっ、……ああああああんっ! んぎゃあああ!!」


 突然鳴り響く赤子の鳴き声。

 印南は穏やかな表情を浮かべ、語りかける。


「おうおう、お腹がすいたのか? バカ娘がおらんから母乳はやれんが、帰って婆さんにミルクを貰おうかの」


「ふぇっ、ふぇ……ぐずっ……」


「おっ! まるで言葉が通じておるようじゃ、さぁ家へ帰ろうか……悠馬」


 

 ――――


 

「俺の両親は、生まれたばかりの俺を残して、交通事故でこの世を去った。 そこから俺は、祖父母に預けられこの家で育ったんだ」


「悠馬様にとって、この家は羽根を休める場所であると同時に、思い出の詰まった大事な場所なのですね」


 ノーラは、優しく温かい声色で悠馬へ語り掛ける。


「あぁ、その通りだ。 だから、今朝はアリスとドレイヴンさんに対し、少し感情的になったんだと思う。 2人ともすまなかった」


 悠馬は座ったまま頭を下げる。


「いやいや! ユーマは悪くない! だから頭をあげてくれまいか!」


「そうです!悪いのは私たちです。大事な場所を壊してしまうかも知れない事をして、ごめんなさいです!」


 悠馬はゆっくりと頭を上げ、2人を見つめる。


「そういう訳だから、朝稽古は少しおとなしめに頼む……な?」


 微笑む悠馬に、アリスとドレイヴンはコクコクと首を縦にふる。


「話が反れちまったな、そういう訳で生活が始まったんだが……」


 

 ――――


 

「悠馬!もっと打ち込んで来い! そんなんじゃワシは倒せんぞっ!」

「うおぉーーーー! おりゃ!くそっ!」


 悠馬誕生から10年。

 

 印南家の庭先では、征大郎と悠馬が木刀を使い、打ち込み稽古をしていた。

 

「あらあら、朝から精が出ますね。 そろそろ朝ごはんですよ、水浴びして汗流してくださいね」


 穏やかな祖母の声に、朝稽古は終了となる。


 白飯に味噌汁、卵焼きと質素ながらも、みんなで囲む食卓は暖かい。


「じいちゃん、強すぎるよ。 俺、道場では一番強いんだぜ」

「わっはっはっ! 田舎の道場で一番取って自慢しているようではまだまだよ!」


「あらあら、悠馬は強いのね。 でも、誰かを傷つけてはだめよ」


「わかってるって! 『ちからは守るため』に、ってやつだろ」

「そうじゃ、よくわかっとるではないか! ただ、大事な人を守るとき、自分が間違ってないと判断したとき。 その時は容赦するなよ、世の中には力でしか解決せん事だってある」


 そう話す征大郎の言葉は、重く、質量をもって悠馬に届く。


『他人を見捨てない』という、悠馬の性格は祖父の教えが形成したようだ。


「うん! わかったよ、じいちゃん。 おれは、誰も見捨てないし、悪は許さない! そんなヒーローになるんだ」

「それでこそ、わしの孫じゃ。なぁ、ばあさん!」


「そうですね。 でも、危険な事はだめよ。 あと、女の子いじめちゃダメ。 モテないわ」


 暖かいいつもの朝の場面。

 強く、正しい祖父と、穏やかで、優しい祖母に育てられ、悠馬は強く、優しく育っていく。

 

 

 ――――


 

「そんな俺も年を重ね、18歳の時に社会人になった」


「その時から探索者をやっていたのですか?」

 

 アリスの問いかけに悠馬は、首を横に振る。


「いや、普通に会社員になったよ。 じいちゃんに仕込まれた剣術や、格闘術は大っぴらにしてなかったし」


「毎日仕事して、家に帰って祖父母とメシくって。 なんてない毎日がずっと続くと思ってたんだ」


 悠馬はゆっくりと息を吐きながら続ける。


「仕事中に連絡があったんだ。 ……じいちゃんが入院したってな」

 

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