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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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60. 土俵と土鍋

「小栗様。 それは、どういった意味でしょうか。」


 歩みを止めた悠馬の目を、府後は真っすぐに見据える。


「どういったも何も、俺たちは行かないし売らないって意味だよ」

「それでは、素材はどうされるので?」


「それこそ『どうとでもなる』だな。 別支部に持って行って売却してもいいし、なんなら俺たちは特級素材を利用できる手段を持っている」


「ほぅ、……それは是非ともお伺いしたいところですね」


「馬鹿にすんな、そんな簡単にカードは切るはずねぇだろ。 なにより、望海への約束を果たせないとなると……我慢できないって人がいる」


 悠馬はドレイヴンに視線を向ける。


「その通りであるっ! お主は約束を反故にする事を良しとするのか? ましてや相手は女子おなごだ。 おとこが違えていいはずは無かろうっ!」


 ドレイヴンは望海の前に立ち、府後へ殺意を向ける。


「と、まぁこの通りだ。 あと、これが一番引っかかってるんだが……」


 ゆっくりと息を吐き、悠馬は言葉を続ける。

 

「――アンタ、俺たちが手ぶらな事に対し言及しないな。 ――なぜだい?」


「んな――っ!?」


 たしかに可笑しな話だ。

 今までオグリ家騎士団は、素材袋を使い納品をしてきた。


 しかし、今回は手ぶらで窓口に現れた。

 

 今日、特級ダンジョンの下層以降へダイブすることは、局に属するものであれば容易に把握できる。


 府後は悠馬の言葉に反論できないようであった。

 

 府後は、ただただ脂汗をかく。

 その姿から、目線を返すので精いっぱい、といった所であることが伺える。

 

「――と、まぁそういうわけだ。 アンタは信用に値しないし、そもそも取引の土俵にすら立ててないんだよ」


 そこまで言うと、悠馬は踵を返す。

 府後に背を向け、手をひらひらと振りながら、窓口から離れるように歩みを進める。


 数歩進んだ後、思い出したかのように悠馬は追撃する。

 

「最後に言っとくんだが、金を手にしていない望海を罰するのは無しだ。 特級ホルダーパーティーを関東地区から手放したくないのならな」


 その言葉を最後に、オグリ家騎士団は管理局を後にする。


 

 ――駐車場 車内。

 

「悠馬お兄さん、良かったのですか? 素材売らなくて?」

「そうだぞユーマ! ワシとて腹が立ったが、金にせんことには話が進まんではないか」


「御屋形様、アリスお嬢様。 悠馬様にはきっとお考えがあってのことのはずです。 まずはそれを聞きましょう」


 ノーラはガードルド親子をいさめつつ、悠馬を見つめる。


「いやぁ~、ただ腹が立っただけと言ったら……?」

「またまた。 御冗談を……ウフフ」


 光り輝くノーラの眼鏡、悠馬は冷や汗をかきつつ応える。


「いやまぁ、腹が立ったのはあるんだが。 断った理由は2つある」


 手を広げ、指を曲げながら説明する。


「まず、ひとつ。 ――胡散臭い」

「胡散臭いとは……見た目でしょうか?」


「違う違う。 さっきも言ったが『素材袋』がない事を言及していない事だ」


「たしかに、悠馬様の仰る通りとは思います。 こちらには、空間魔法の施された魔導具はないのですか?」


「俺の知る限りはないね。 もしかしたらとは思うが、それならばそう言えばいい。 だが、アイツは黙ったままだった」


「ユーマ! お主、あの場でカマをかけたのか? やるではないか! がははっ!」


 バシバシと、ドレイヴンが悠馬の背中を叩く。

 

「痛いって! 背中を叩くなよ。 あと、もう1つは……」

「もうひとつは何なんですか?」

 

「素材をヴァレンタインさんに見てもらおうかと思ってな。 何かしら役に立つものがあるかも知れないし、売るならそれ以外でも問題ないと判断したまでだ」


「なるほど、さすがは悠馬様。ヴァレンタイン様であれば、何かしら有用な使い道をお導きになるでしょう。 ご慧眼に脱帽いたします」


 悠馬の判断にノーラが反応する。

 ただ、納得いかないのがドレイヴンだ。


「しかし、ユーマよ! それだと結局、ノゾミ殿との約束は違えてしまうのでないか?」


「それに関してなんだが、今回だけではなく次回も……とか。量を増やすことで納得させられるし、ドレイヴンさんも渡す金額が増えれば腹落ちするってもんだろ? なにしろ望海はそれを喜ぶと思うぞ」


「たしかに、それもそうであるか」


「と、いうわけで今日は帰宅して、ひとまずヴァレンタインさんに相談だな」

 

 ――ぐぅぅ~


 誰のとも知れない、腹の音が車内に鳴り響く。


「――あははっ! その前に買い物して帰るか! ――じゃあ行くぞ!」


「「「おーーー!」」」


 エンジンをかけ、悠馬は自宅へ向かってハンドルを切る。


 ――――


 帰路の途中で立ち寄ったのは『スーパーマーケット ベ〇ク』


「なかなかにデカい建物だな! またスシがくえるのか?」

「悠馬お兄さん! あの黒い車からいい匂いがしてきます!」

「悠馬様。あの『唐揚げ』とはなんでしょう、強烈に食欲がそそられます。 謎を解くべきかと」


「デカい建物と言えば寿司、じゃないんだよ! あと、キッチンカーの前にとどまるなっ! さっさと買い物済ませるぞ!」


 今日はダンジョンへダイブしたとはいえ、売却益は出ていない。


 その為、『潜った日の飯は、その日の稼ぎで決める』というモットーに従い、今日は自炊である。


「人数多いからな……よしっ!今日は鍋だな」

「鍋? お鍋がどうかしたんですか?」


「ん? だから鍋を食べるんだよ。 人数多いときは鍋が美味いからな!」


「悠馬様。 お言葉ではございますが、調理道具を食する文化は我々にはなく……」


「ユーマ! そこまで切迫しておるのか? この2人にあんなもの食べさせるわけにいかんぞ! 今からでもダンジョンへ行って素材を集めてくる! 待っておれ!」


「まてまてまて! 土鍋で調理した料理全般を『鍋』っていうの! だから『鍋』を食うっていうのは『鍋』を食べるわけでなく……って、面倒くせぇな!おいっ!」


 悠馬は、頭を掻くのではなく抱えた。


 さすがは『日本語』。

 英語圏内における、習得難易度カテゴリーVファイブ、序列5位は伊達ではない。


 異世界人にカテゴリーVの日本語ネイティブは説明し難い。

 

 悠馬の叫びが精肉コーナーに響き渡る。

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