表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/80

58. 琥珀の指針、断罪の空へ

 戦場は、もはや生物が立っていられる場所ではなかった。


 上空のドラゴンゾンビが翼を振るうたび、腐敗の魔力を帯びた暴風が荒野を削り取り、視界を茶褐色の砂塵で埋め尽くす。


「おおぉぉりゃぁぁッ!」


 急降下を仕掛けるドラゴンゾンビに対し、ドレイヴンが大剣を叩きつける。

 

 凄まじい衝撃波が巻き起こり、巨体がわずかに浮き上がる。


 その隙を逃さずアリスが踏み込むが、腐敗した鱗を掠めるのが精一杯だ。


 ノーラの放つ氷柱と投げナイフも、鋼鉄以上の硬度を持つ骨格に弾かれ、虚しく火花を散らすのみ。


「悠馬お兄さん! 指示をお願いします!」

「悠馬様! 早く……早く最適解を!」


 2人の悲痛な叫びが悠馬を刺す。

 必死に『道標ガイドポスト』を呼び起こそうとするが、網膜に映るのはノイズ混じりの虚無だけだ。


「ユーマ! 指示が出せぬなら攻撃に参加せよ! 遊ばせておく余裕などないぞ!」


 ドレイヴンの怒号が飛ぶ。

 

 ドレイヴンの言う通りだ。

 案内できない案内人など、この死地では荷物でしかない。


 悠馬が奥歯を噛み締め、腰の短剣に手をかけた、その時――。


『ドクンッ!』


 心臓の奥底で、鐘を打ち鳴らしたような衝撃が走った。

 衝撃は波紋となって全身を駆け抜け、悠馬の身体を物理的に跳ね飛ばす。


「……ッ!? なんだ、これ……」


 直後、視界が塗り替えられた。

 

 暗転した世界に浮かび上がったのは、これまでの細い線ではない。

 根元が太く、天を突くほどに長い、眩いばかりの【黄色の矢印】。

 

 それは先端に向かうほど鮮やかなグラデーションを描き、鋭利なきりのように研ぎ澄まされている。


 悠馬が意識を向けると、その巨大な矢印は彼の意思に呼応し、自在に伸縮し、空間を泳いだ。


 矢印の先が傍らの大岩に触れた瞬間、数トンはあるはずの質量が、まるで見えない手に弾かれたようにズレ動く。


(なるほどな……『導く』だけじゃねぇ。これは――)


「指示を再開する! ノーラ、合図で氷柱を3つ! 狙いは胸だ!」


「っ! はい!」


 悠馬の声から迷いが消えた。

 

 その覇気に、ノーラの指先に凝縮される魔力が一段と輝きを増す。


「ドレイヴンさんは一撃必殺の準備を。 今からあいつを叩き落とす!」


「何だと? 一体どうやって――」

「いいから、構えてろっ!」


 戸惑いながらも、ドレイヴンは確信した。

 悠馬が『何か』を掴んだことを。


 大剣が黄金の光を放ち、臨界点に向けて、魔力が周囲の大気をパチパチと爆ぜさせる。


「最後に、アリス!」


 悠馬は真っ直ぐにアリスの瞳を見た。


 そこには恐怖を塗り潰すほどの、純粋な信頼が宿っている。

 

「今からやるのは俺も初めての事だ。どうなるか分からねぇが……信じてくれるか?」

 

「もちろんです! この命、預けます! 相棒ですから、エッヘン!」


 最高の笑顔。

 その覚悟を受け取り、悠馬は吠えた。


「行くぞ! 『純白色の断罪アルバス・ジャッジメント』だ!構えろ!」


 悠馬はアリスの背後に視点を固定し、脳裏で【黄色い矢印】を固定させた。

 

「ノーラ! 魔法射出!」


 3つの氷柱が上空のドラゴンゾンビの胸を打つべく直進する。

 それを受け流そうと身を捩った瞬間、悠馬が叫ぶ。

 

「いくぞ! アリス射出!!」


「はいっ……!? って、えぇぇぇぇぇーーーーーっ!?」


 アリスの悲鳴が空に響く。

 

 悠馬の『射出』という宣言通り、黄色い矢印がアリスを物理的に『押し出した』のだ。


 純白色に発光する大剣を構えたまま、アリスの身体は重力を置き去りにして、レーザーのような速度で上空へと打ち出される。


 悠馬は視界の『黄色い矢印』を操作し、弾丸と化したアリスの軌道をミリ単位で制御。

 一瞬でドラゴンゾンビの死角、その背後へと肉薄させた。


「アリス、やれえぇッ!!」

「いっけぇぇーーーッ! 『純白色の断罪アルバス・ジャッジメント』!!」


 涙目になりながらも、アリスは渾身の力を込めて大剣を振り下ろす。


 神聖な光を纏った一撃が、ドラゴンゾンビの背骨を叩き割る。


 ――ズドォォォォォンッ!!!


 山が崩落したかのような轟音。

 

 ドラゴンゾンビの巨体が地面に激突し、荒野の石畳がクモの巣状に砕け散る。

 

 状況が理解できず、悶えながら再び飛び立とうとするドラゴンゾンビ。


 だが、そこには既に『最強』が待ち構えていた。


「逃がすわけなかろうがッ! 腐れトカゲめ!  くらえ――『剛勇王の断頭台レガリア・ギロチン』!!」


 振り下ろされた黄金の一撃は、深層の濃密な魔素を全て喰らい、巨大な光の刃となって地表を埋め尽くした。

 

 ドォォォッ!! という衝撃波が荒野を薙ぎ払い、爆心地の地形そのものを抉り取る。

 土煙が数メートル先も見えないほどに舞い上がり、世界は黄金の残光に包まれた。


 やがて、静寂が訪れる。

 

 晴れゆく土埃の中、悠馬の視界にいつもの【青い矢印】が浮かび上がった。

 その先にあるのは、勝利を祝福するように青白く光る脱出ポータル。


「……やったな」


 新オグリ家騎士団、ドラゴンゾンビ討伐成功が確定した瞬間だった。

 

 悠馬の隣で、アリスがへなへなとその場に座り込み、それをノーラが支える。


 土埃の中で大剣を肩に担ぎ、満足げに鼻を鳴らしていたドレイヴンが叫ぶ。


「ユーマ! 先ほどのはどういう事だ!」

 

 怒号にも似た、大声が主の間に響き渡る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ