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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第3章:変革する日常と加速する世界

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53. 境界を越えた生存報告

「お父様! 起きてください!」

 

『高級素材山』の頂上で眠るドレイヴンをアリスが叩き起こす。


「お……おぉん、アリスおはよう! ……と、ユーマ!やっと来たか! 待ちくたびれて寝てしまったではないか!がははっ!」

「それはすまんかったな……とはいえ、この素材どうすんだよ」


 おびただしいほどの素材を前に、悠馬はポリポリと頭を搔く。


「なぬ! そんなもの、こうすれば良いではないか!」

 

 その時、ドレイヴンが腰にあったホルダー(?)を掲げる。

 その瞬間、山のようにあった素材たちがソレに吸い込まれていく。


「なっ! なんだよそれっ!」

 

「辺境伯に皇帝様より下賜される魔導具よ! 遠征ともなれば、こいつがなければ話にならんからな!」


「異世界の魔導具か……それにしても凄いな。 ドレイヴンさん、それ誰にも見られるなよ」


「ん? 何故だ」


「多分……やっかいな事しか起きない」


 再び頭を掻きながら、訪れるであろう厄介毎に思いをはせる。

 

 更地となった特級ダンジョン深層 第1階層

 そこには悠馬ですら感じられるほどの魔素が満ち溢れていた。


 それは、すなわち例の魔道具の使用が可能という事の証左でもあった。


「ここならばドレイヴン達に連絡が出来そうであるな!しばし待たれよ!」


 ドレイヴンは『黒い板』を取り出し、文字を刻む。



 

 ――帝国 死の森 洞窟最奥。


 膝をかかえ、石のように固まっているのは新人のアイリだった。

 

「アイリ、もう数刻はたつ。 一度キャンプへ戻って、報告をしなければ皆が心配しておる」


 ドレイヴン達が消えてからマグノリアとアイリは、主の命に従い待機していた。

 

「……だって、言ったんです」

 

 戦闘の余韻の残る装備と、埃まみれの顔のままアイリは主の帰還を待っていた。

 その声は、か細く――ただ、強い意志だけが口を動かしていた。

 

 「ヴァレンタイン様は仰いました、『そこで待て』と! だから私はここで待ちます! 団長!主の命令は絶対なんですよね! 私――間違ってません! 間違ってなんか……ないんです!」

 

 まるで、自身に言い聞かせるようにアイリは叫ぶ。


 その手には『黒い板』が握られている、何も移さない黒い画面が思考を絶望へと誘う。

 

 アイリの痛々しい姿にマグノリアは言葉を失い、傍観する事しかできない。


 「しかし、アイリよ……このままではお前も干からびてしまうぞ」


 アイリは答えない。

 何も食べず、何も飲まず……ただ、待っているのだ。


 自身を初めて認めてくれた、主ヴァレンタインを。

 英雄譚の一幕を見せてくれた、主君ドレイヴンを。


「ヴァレンタイン様、ドレイヴン様……私はここで待っております……」


 膝をかかえ、狂信者のように虚空を見つめるアイリ。


「仕方のないやつだ。 私は一度キャンプに戻って状況を報告してくる。 お主は命の通りここで待機せよ」


「……わかりました」


 小さな背中を視界の端に収めつつも、マグノリアはキャンプ地へと戻る。


 ――騎士団キャンプ地 天幕。


 天幕内は、澱んだ空気と重苦しい沈黙に支配されていた。

 

 領主と魔導具士の失踪。


 捜索を出そうにも一体どこに出せばいいか分からず、会議は何時間かけてもまともな話し合いにならなかった。

 

 答えのない議論が繰り返されるうちに、騎士たちの冷静さは失われていく。


 ――――

 

 一方、洞窟の最奥では少女が、今だ膝を抱えていた。

 

 アイリは、帰ってくると信じつつも、曇った顔のまま断裂の消えた空間をただ見つめていた。

 静寂が彼女の不安を煽り、岩壁が冷たく彼女を拒絶する。


 その時だった。


 アイリの膝元に置かれていた『黒い板』が、微かに青白い光を放った。


「……え?」


 絶望に染まりかけていた瞳に、信じられない文字が浮かび上がる。

 

 アイリはそれを見つめ、一度、二度と瞬きをした。


 それが幻ではないと確信した瞬間、彼女の顔から曇りが消え、弾かれたように走り出した。


 ――再び、キャンプ地の天幕。


「……ラチがあきませんな。もはや、我々の手に負える事態ではない」


 マグノリアが、沈痛な面持ちで結論を下した。

 どれだけ時間をかけても、議論は一歩も前へ進まない。


「これより早馬を出し、帝都へ事態の報告を。……私は再度、洞窟に戻りアイリを連れてくる。これ以上1人にしておくわけには……」


 マグノリアが席を立ちかけた、その時。


「来ましたっ! はぁっはぁ……団長! 来ましたっ!」


 入口からアイリが飛び込んできた。


 大量の汗を流し、息を切らしながら、『黒い板』をマグノリアに突きつける。


「来たとは、いったい何の事だ」


 板に表示されていたのは――。


『アリス、ノーラ合流。全員無事安心セヨ。命ヲトク。ヴァレンタイン、ドレイヴン』


「ほらっ! 団長! 洞窟で待っていて正解でした! みんな無事って、正に奇跡です!」


「まっ、誠であるか! ……よもや1日も経たずに解決されるとは、さすが御屋形様であるな。アリス様も皆も無事となれば問題はなかろう。アイリよ!よくやった!」


「はいっ! ありがとうございます!」


 眩いばかりの笑顔が、重苦しかったキャンプの空気を一変させた。



 ――――


 

「さて! マグノリア達への伝言も終わった事だ! これからどうするのだ?ユーマ!」


『黒い板』での通達を終え、ドレイヴンはいきり立つ。


「とりあえず、行けるところまで降りてみよう。 ただ、あくまで様子見だけどな」


 今日は通信が可能かの確認だけのつもりだったので、攻略というテンションではなかった。


「さすがはユーマ! さぁ、道を進もうではないか! ワシが道を切り開くからお主らは着いてくるがよい! がははっ!」


 帝国最強の男が、未知への特級ダンジョン深層へと――いま、足を踏み入れる。

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