51. 帝国最強は彼の地にて、斯く暴れり
本日より第3章「変革する日常と加速する世界」スタートです!
いつものように章開始日は2話公開! このあと直ぐ52話が公開されます。
ぜひ続けてお楽しみ下さい!!
ちなみに今回のタイトルは、私が大好きな作品『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』へのオマージュを込めて付けてみました。
本家では自衛隊が異世界で活躍しますが、本作では『帝国最強』が現代日本で……斯く暴れさせていただきます(笑)。
新メンバーが加わった『オグリ家騎士団』の門出、ぜひお楽しみください!
魔力の波動から一夜明けた小栗家。
いつものように台所でノーラが食事を作り、庭ではアリスが素振りをする光景が。
――今日は違った。
新たなメンバーが合流していたのだった。
庭ではアリスとドレイヴンが打ち込み稽古を、台所ではヴァレンタインが電子レンジを分解していた。
「おい、ヴァレンタインさん。 ……あんた何やってんだ」
「おはよう悠馬、この機械は凄いなんてもんじゃないよ! 魔力も無しに、目に見えないレベルの物質を振動させ、熱を発生させるなんて! 考えもつかない!」
ドライバーで朝から、電子レンジを分解するジャージ美女。
そんな光景、世界中探しても小栗家だけだろう。
「なんでもいいけど、ちゃんと元に戻してくれよ。男所帯だと電子レンジは生命線なんだ」
生返事を返すヴァレンタインを適当に流し、悠馬は庭へと足を運ぶ。
庭では、2本の大剣がぶつかり合う音が鳴り響いていた。
「がははっ!アリス!強くはなったようだが、まだまだワシには届かんぞ!全力で来るがいいっ!」
「はい!お父様!それでは参ります――アルバス・ジャッジ……」
「まてーーーーーーーーーーーーーーい!!」
アリスの大剣が光り輝くのを、すんでのとこで止める悠馬。
「おはようございます。悠馬お兄さん!見ていてください、わたし渾身の一撃をお父様に……」
「だからそれをやめろと言っている!」
ゴツンッ! ――悠馬のげんこつがアリスの頭頂部を襲う。
「えぇぇ、なんでですかぁ」
涙目になるアリスを放っておいて、今度はドレイヴンへと近づく。
「ユーマ!良い朝だな! こんな日は体を動かすに限るわ!がははっ!」
「がははっ!じゃないんだよ。 あんたら親子は俺んちを潰す気か? あんなのぶっぱなしたら、この辺り一帯が更地になるぞ」
「いや、そこはワシがちゃんと受け止めさえすれば……」
「いいから聞け! よしんば、受け止めたとして少しでも漏れた場合の余波はどうなる? うちだけじゃない、お隣さんもそのお隣さんも家が無くなっちまう。 民を守るご領主様がそんなんでいいのかい?……なぁ?」
「あ、いや。 そんなつもりでは――」
「『そんなつもりでは無かった』と、家を、家族を失った人にそう説明すんのかい? 辺境伯様は!えぇ?」
「いや……ユーマ、すまんかった。民への配慮が足らなかったようだ」
悠馬の迫力に押され、ついに謝罪するドレイヴン。
「アリス!お前もだ! 家がなくなったら、シャンプーもトリートメントも全部、吹っ飛ぶんだぞ、いいのかそれで!」
「はい、ごめんなさい。……技は打ちません」
ピンピンに立っていたアホ毛はあっという間に萎れていく。
「はぁ……わかったならもういい。素振りもいいし、打ち合いもいい、ただ周りに影響が出そうな技は禁止な。次やったら――3日飯抜きだからな」
「「はいっ」」
説教を終え、悠馬は居間へと戻ろうと踵を返す。
「なんか、ユーマ怖くないか? いつもあんな感じなのか?」
「いえ、初めて見ました……めっちゃ怖かったです。 わたし、泣きそうです」
コソコソを内緒話をしていると……。
「そこの親子……何か言ったか」
「「いえ!何もっ!」」
――――
朝食を済ませ、今日の予定を確認する5人。
「とりあえずパーティー登録をしに管理局へ向かう。その時、昨夜のことを聞いてみよう、何かわかるかもしれない」
「そうですね、昨夜の事は私も気になります。あれ程の魔力の奔流、帝国でも見たことがありません」
「たしかにあれは恐ろしかったねぇ、ノーラの言う通り『禁忌魔法』の香りがプンプンするよ」
ヴァレンタインもノーラと同じ意見のようだ。
「何も、無かったらいいんだが」
悠馬は悩んだ末、【紫色の矢印】について、今は伏せておく事とした。
何となく、今話すべきではないと直感で感じていた。
――ダンジョン管理局 窓口。
「ドレイヴンさんと4人でのパーティー申請ね。 パーティー名は?」
「……家騎士……だ」
「え?聞こえないわよ。もう1回お願いできる?」
「オグリ家騎士団だ!」
耳まで真っ赤な悠馬が床を見つめ、拳を握りしめながらパーティー名を望海に告げる。
「ぷっ!ぶふぉっ! お、オグリ――ぶふぁあ! 無理、無理無理! ンヒーッ……! ン……ブフォッ」
「笑いすぎだろ! 俺だって、今となっては後悔しているんだ」
深夜のテンションと、早く寝たかった事、そして他のパーティー案の語彙力のなさが、悠馬の判断力を鈍らせた結果だった。
「望海さん!笑うなんて失礼なのです! 家名と騎士団という名乗りは騎士を目指す者の憧れなのです!」
「はぁっ~っと。ここ半年で一番笑ったわ、あんた達良いセンスしてるわよ……って、ブフォォォッ!」
パーティー名を入力しながらも、望海の爆笑は終わらない。
「はぁ、これでオッケーよ。 因みに聞くんだけど、ドレイヴンさんも特級ダンジョンへダイブするのよね?」
「あぁ、そのつもりだ。 だからこそパーティー組んだしな。 ホルダーが過半数超えていれば、新規メンバーも入れるはずだろ?」
上級、特級には入場条件がある。
ただ、パーティー単位となると、許可ホルダーの人数がメンバーの過半数を超えていれば、ホルダーでなくとも入場は可能となる。
それは、ポーター等を連れてダイブするための措置であった。
「それなんだけど、最近新しく項目が追加されたのよ」
「――どんな内容だ」
「原理は分からないんだけど、探索者としての能力値をグラフ化?出来る機械を局が作ったらしいの。 それで計測して、あまりにも低いようだったらNGが出るみたいよ」
「なんだそれ、体力測定みたいなもんか?」
「ダンジョン素材から作られたらしいわ。 私は門外漢だから、上手く説明できなくてごめんね。 アリスさんのお父様なら問題無いでしょうけど、規則なので測らせてもらうわね」
「悠馬様、ちょっと」
ノーラが小声で話しかけてくる
「ん?どうした」
「多分ですが、鑑定魔法のようなものかと。 帝国の魔道具でも、魔力を測定し数値化するものがあります。 特級ダンジョンなど、魔素のある場所から出土した聖遺物などでつくられたのはないでしょうか」
「そういうのがあるのか、じゃあドレイヴンさんなら大丈夫だな」
「大丈夫と申しますか、……違う心配が出てくるかと」
「悠馬!行くわよ。ついてきなさい」
望海に連れられ、プレハブ小屋のような施設へ移動する。
「ん?ワシはここに入ればいいのか?」
「はい。中に入っていただき、私が合図したら測定を開始します。」
「立っておれば良いのか?」
「そのままでも大丈夫です。ただ、気合いを入れると言いますか、力む感じで測定しますと測定値の上限が上がるので、特級ホルダーとして局のお墨付きがつくかもしれません。……ただ、お墨付きは今だゼロ人ですけどね」
「ほほぅ、このワシを評価するか……面白い」
ドレイヴンがにやりと口角をあげ、測定室へと入る。
――3、2、1。
「はい、測定開始しまーす」
望海の開始の合図とともに、ドレイヴンは魔力を開放する。
昨日まで帝国にいつつ、アリスの白魔法、純白色の閃光で魔力残量は十分である。
さらには、帝国最強という事実が――1つの答えを導き出す。
徐々に放出される魔力――ドレイヴン周辺の景色が歪んでいく。
望海が見ている計器の針が上限を突破し、煙を上げ始める。
「……やばいな、これは」
悠馬は計器の前で「えっ、えぇっ!」と狼狽える望海を救出し、外へと連れだす。
「御屋形様!その辺でおやめください!」
「お父様!魔力を止めてください」
マイク越しではない2人の声は、中にいるドレイヴンへ届かない。
計器の針が高速で回転し、計測器が臨界点を迎える。
ドガァァーーーーン。
モクモクと上がる、煙の中から平気な顔をしてドレイヴンが現れる。
「ん?もう終わりか?」
望海は悠馬に抱きかかえられたまま、口をパクパクさせ放心状態である。
その背後でノーラが口を開く。
「やはり、こうなりましたか。さすが、御屋形様です」




