50. 波紋の夜、終焉と幕開け
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特級ダンジョンでの死闘、そして時空を超えた親子・仲間の再会……。激動の第2章も、ついにこのエピソードで幕を閉じます。悠馬の受難(とお財布の危機)と、ドレイヴンパパの豪快な暴走を最後までお楽しみください!
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目をむくようなス〇ローでの会計に絶望した悠馬。
涙目になりつつも、千葉の家へようやく辿り着いた。
あまりに濃密すぎた今日の終わりに、悠馬は玄関に荷物を投げ出した。
「ここがユーマの根城か! わが辺境伯邸の馬小屋よりはマシなようだな! がははっ!」
「悪いな、馬小屋レベルで。……とにかく、今後の話をしよう。ってその前に風呂だな」
女子3人は代わる代わる、風呂へ入るため、男2人は台所へと追いやられる事となった。
狭いキッチンで、フルプレートの巨漢が椅子へと座る。
「ユーマ!酒はないのか。 男子たるもの酒を飲まねば、日が終わらんと言うものだ!」
「酒ねぇ、俺あんま飲まないから……っと、あったあった」
悠馬がシンク下から取り出したのは、引っ越し祝いでもらった「〇龍」とラベルの貼ってある日本酒だ。
「ドレイヴンさん、『黒い死神』ぶっ倒したんだろ? じゃあ、色繋がりって事でおあつらえ向きだな」
「良い事言うではないか!どうだユーマも一緒に飲もう!勝利の美酒を共に味合おうではないか!」
いわれるまでもなく、2つの小さなコップを手に対面へと座る。
トクトクと注がれる日本酒にドレイヴンは興味津々であった。
「まるで水のような酒だな、これでは大して酔えないのではないか?」
「まぁまぁ、飲んでみろって。この日本が代表する酒の1つ『日本酒』だ、後悔はさせないぜ」
「ふむ」とコップを掲げ、しげしげと観察する。
「じゃあ、ドレイヴンさん。乾杯だ」
「そうであるな。 勝利と出会いに乾杯!」
コップに口をつけた瞬間、ドレイヴンの目がこれでもかと開かれる。
そのまま、一気に飲み干す。
「ぷはーーっ!なんという旨味! このような繊細かつ強烈な酒は初めてだ!」
「そうだろう、そうだろうとも。今日食べたコメが原料になっているから、日本食とよく合うんだよ」
「たしかに、スシと一緒にか……いかん、よだれが出てきた」
白菜漬けなど、簡単なツマミをあてに男2人、親睦を深めていく。
「時にユーマ、お主伴侶はおらぬのか」
「おっと、突っ込んでくるね。 残念ながらそう言うのは無縁だね、今は」
「ほほぉう。今はという事は過去には居たという事だな。 隅に置けんやつよ」
「あぁ、確かにいたよ。何よりも大事で、大切な……何物にも代えがたい存在ってやつがな」
「なんぞ、含みのある言い方だな。 だが、これ以上は野暮というものか」
「まぁ、タイミングがあれば今度話すよ。そん時はまた酒でも飲もう」
「がははっ!それは楽しみが増えたな!」
その時、キッチンの扉が開く。
「悠馬お兄さん、お風呂空きましたよ。ってパパ!顔真っ赤です!お酒飲んでるんじゃないですか?」
「御屋形様、お医者様から控える様にとあれほど」
「おや~。酒と聞こえたが、まさか私を差し置いて酒盛りとはいい度胸じゃないか」
女3人寄れば何とやらだ。
キッチン内の空気が一変する。
「いや、これは違うのだ!ユーマが今日の勝利にと言って無理やり。な?ユーマよ!お主からも何とか言ってくれ!」
「俺からは何とも、それよりアリスさっき『パパ』って言ってなかったか?たしかダンジョンでも……いつもはパパ呼びなのか?」
「えっ!ソ、ソンナコトナイデスヨー」
お風呂上りのせいか、はたまたそれ以外が原因か、アリスは顔を真っ赤にしながら走って逃げていった。
「なんだありゃ」
悠馬の一言に笑いが起こる。
――――――
男連中の風呂も終わったところで、リビングに集まった面々。
悠馬は「向こう側」と連絡を取るために、黒い板を持って特級ダンジョン下層へ向かうことを提案する。
「ああ。ユーマ、ワシもその『特級ダンジョン』とやらに同行させてもらうぞ。アリスたちが世話になった礼もせねばならんし、マグノリアにはワシから報告せねばな。主の務めというやつよ」
「ドレイヴンさん、あんたが来るなら心強いが……。ヴァレンタインさんは?」
「私はパスだよ。この世界には解析すべきものが多すぎる。明日からはここに残って、この『パソコン』と『スマホ』というやつを弄らせてもらうよ。……置いていきな」
妖艶な笑みで命令され、悠馬は「壊すなよ?」とタンスの奥に眠っていた予備の端末を差し出した。
魔導具職人に現代文明の火を渡すのは、火薬庫で煙草を吸うような気分だった。
「さて、ドレイヴンさんを特級へ連れて行くなら、正式な『チーム登録』が必要だ。実績のない人間を特級にダイブさせるわけにはいかないからな」
「チーム、か。ワシとアリス、ノーラの3人……そこにユーマ殿が入るのだな」
「いや、逆なんだが……まぁいいや。……で、チーム名なんだが」
ここからが地獄だった。
「ガードルド最強騎士団異世界出張版」を推すドレイヴン、「アリスリア様と親衛隊」を譲らないノーラ。
結局、悠馬の「……もう、『オグリ家騎士団』でいいだろ。俺の名前入ってるし」という投げやりな折衷案で、しぶしぶ決着がついた。
「よし、明日は管理局で手続きだ。今日はもう寝るぞ……」
――深夜、丑三つ時。
静まり返った日本を、巨大な魔力の波動が「波紋」のように突き抜けた。
大阪を中心としたその衝撃は、物理的な被害こそないものの、スキルを持つ者、いわゆる魔力に敏感な者たちの神経を激しく逆なでした。
「……っ! 何だ、今のは!」
真っ先に飛び起きたのは悠馬、そしてオグリ家騎士団の面々だった。
庭に飛び出し、夜の冷気に身を晒す。
「……今のは、帝国の『禁忌魔法』に近い感覚でしたが、それよりも遥かに禍々しい……」
「北の空からではないな……西だ」
ノーラとドレイヴンが険しい表情で夜空を睨む。
その時、悠馬の視界に、これまで一度も見たことのない色が走った。
「――っ!?」
黄金でも、青でもない。
禍々しく、それでいて抗いがたい引力を放つ、少し赤みがかった「紫色の矢印」。
それは深夜の闇を切り裂くように、真っ直ぐに西――大阪の方向を指し示していた。
悠馬のスキル『道標』が、本人の意思を無視して、次なる戦場を確定させた瞬間だった。
――第2章・完。
重なり合う2つの世界。道標は今、未知なる「紫色」の輝きを放ち、西へと誘う。
お読みいただきありがとうございます!
ついに第2章、堂々の完結です!
激闘の後の日本酒での乾杯、そして「オグリ家騎士団」という(悠馬の妥協が詰まった)チーム結成。束の間の平穏に心温まった直後、西の空から放たれた不穏な「紫色の波紋」……。
悠馬のスキルが示した、かつてない「紫色の矢印」が何を意味するのか。大阪を舞台に、物語はさらなる混沌と興奮の第3章へノンストップ突き進みます!
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※明日の新章開始日は18時に2話一挙公開! 以降は毎日1話更新となります。
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