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戦闘スキル無しの元・狂戦士。~案内人の男、最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第2章:重なり合う異世界

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48/82

48. 最適解は、皿と共に更に回転する

 入店手続きを済ませ、テーブル席へと移動する5人の姿。

 車に戻らず新宿の街を歩いてきた一行は、これまで以上に人々の目を引く異様な集団となっていた。


 フルプレートの巨漢と美少女。

 隙のないメイド。

 妖艶すぎる漆黒のローブの美女。

 そして、それらを引き連れるくたびれた皮鎧の男。


 すれ違う客たちがスマホを向けるのを無視し、悠馬は足早に進む。

 だが、後ろではドレイヴンが満面の笑みで手を振っていた。


「がははっ! ワシのフルプレートが輝きを放ち、民を魅了しておるわ!」

「流石は御屋形様。民への振る舞いが完璧で御座います」


「おい、やめろ! そしてノーラ! お前はツッコミ役だろうが、助長させるようなことを言うな!」


 相変わらずのドタバタ劇を繰り広げながら、なんとか席に着いた一行。

 悠馬は手慣れた手つきでタッチパネルを操作しようとする。


「悠馬。さっき入口にもあったが、それは何だい?」

「これか? これはタブレット……まあ、通信魔法みたいなもんだ。これで注文すると商品が届く。入口のは入店名簿みたいなもんだな」

「ほぉ、ちょっと触らせてくれないか?」


 ヴァレンタインが手を伸ばした瞬間、悠馬の視界に『青い矢印』が激しく明滅した。

 これは罠や危険に反応する時の警告だ。


「――ダメだ。嫌な予感がする。 注文は俺がするから、あんたらは黙っててくれ」

「なんだい、ケチだねぇ。ちょっと分解しようかと思っただけじゃないか」


「やっぱり! あっぶな、修理費で余計に金取られるところだった……」


 騒がしさに気を取られ、悠馬は自らの「道標ガイドポスト」が発した違和感の正体にまでは気づかなかった。


 適当に注文を終え、商品が届くのを待っていると、ノーラが静かに口を開いた。


「悠馬様。スシと約束した時のことを、覚えていらっしゃいますでしょうか」

「え!…… ああ、だからこうして食べに来てるじゃないか」


「悠馬お兄さん……『回らない』って、言ってました!  この動く小さな道は……『回っている』のでは?」


 悠馬の額に冷や汗が滲む。……バレた。

 だが、ここで軍師・悠馬の脳がまたも「最適解」を弾き出した。


「……いいか、よく聞け。 普通は人が運んでくるんだ。だが、ここは最先端の機械が寿司を運んでくる。その分、設備に莫大な金がかかっているんだよ」

「悠馬様、それはどういう意味でしょう」


「――つまりだ。その分、高いんだよ! お店も投資分を回収しなきゃならんから、『回らない』より『回る』方が高級なんだ。な!?」


「流石は悠馬お兄さんです! 私たちを労ってくれているんですね!」

「その通りだ! 流石はアリス、賢いな! うん!」


 アリスは頭を撫でられ、上機嫌でアホ毛を振り回している。


「……今日は人数も多いですし、納得しておきましょう。ですが悠馬様。 時に我々をはばかるというのは、相応の危険を伴うとご承知おきください」


 ノーラの眼鏡が、過去一番の鋭さで光り輝いた。

 悠馬が「お、おぅ」と、狼狽えていると、注文した寿司が次々と到着する。


「ユーマ、これはなんだ? 魚の切り身か」

 ドレイヴンの目の前に置かれたのは、鮮やかな『マグロの赤身』だ。


「そうだ。コメという穀物に魚の切り身が乗っている。これが寿司だ」

「ふむ。これを今から調理するのか?」

 

「いや、この『醤油』ってソースをつけて、このまま食うんだよ」


 その瞬間、4人の表情が驚愕に染まった。


「生、だと……? ユーマ、貴様は海の民(海賊)だったのか」

「悠馬お兄さん、流石に生の魚はちょっと……」

「危機管理の面から見ても、生食は避けるべきだと提案いたします」


 帝国では一部の辺境を除き、魚を生で食べる習慣はない。

 生魚を食べて死に至った者の話は、歴史上枚挙にいとまがないのだ。


「ああ、そういう食文化か……。いいから周りを見ろよ。あんな子供だって食べてるだろ?」


 悠馬は醤油を垂らし、素手で寿司を口に運ぶ。

 

「うん、うまい。やっぱりス〇ローは庶民の味方だな。この値段でこのクオリティは流石だわ」


 後ろめたさを隠すように、饒舌に店を褒める悠馬。


 その時、ドレイヴンのマグロに横からひょいと手が伸びた。

 ヴァレンタインがそれを掴み、躊躇なく自身の口へ運ぶ。


「……ん。悪くないじゃないか。悠馬、その醤油というソースを貸しておくれ」


「ヴァレンタイン! お主、正気か! 死に急いでどうする!」

「そうです、ヴァレンタインお姉さん! 今すぐ吐き出してください!」


「やかましいねぇ。いいから、ほらっ!」


 ヴァレンタインは、テーブルの上にあった『サーモン』をアリスの口へ強引に放り込んだ。


「アリスお嬢様! ……ヴァレンタイン様とはいえ、万死に値します」

 ノーラの指先に冷気が集まり、魔力の産声が響き始める。


「ほう。私とやろうってのかい、お嬢ちゃん?」


 一触即発。

 冷気と黒い風が渦巻こうとした、その時。


「……お、美味しい……っ!」

 

「「えっ!」」


 ノーラとドレイヴンの声が重なる。


「すし、美味しいです! お父様もノーラも食べましょう!  早くしないと、わたしが全部食べちゃいますよ!」


 アリスに促され、「そこまで言うなら」と毒見のつもりで口にした2人の変化は、劇的だった。


「サーモンもっと食べたいです! あの炙ったやつも!」

「この巻き寿司というのは絶品ですね……。特に、この『納豆』という発酵食品、最高に調和しております」


「がははっ! マグロだ、マグロを持ってこい! 足りんぞユーマ! もっと寄こすのだ!」

「エビ、イカ、タコ。最高だね。これが異世界の食文化とは、恐れ入ったよ」


 ドレイヴンに至っては2貫同時に頬張り、テーブルには空いた皿がみるみる積み上がっていく。

 悠馬は乾いた笑いを浮かべ、反対側の人の顔が見えないほど高く聳え立った皿の山を見つめていた。


 ――――


「悠馬お兄さん、今から帰るのですか? またさっきの乗り物ですか?」

「いや、乗り継ぎを考えたら流石にこの人数は無理だ。レンタカー……別の車を借りる。今日はそれで帰ろう」


 千葉の田舎にある実家へ向かうには、公共交通機関では限界がある。

 何より、この異彩を放つ集団だ。これ以上の騒ぎは避けたかった。


「……そんなことより、これからどうするかだ。まず2ドレイヴンとヴァレンタインは、どうやってこっちへ来た。そこから聞かせてくれ」

お読みいただきありがとうございます!


ついに実現した「スシ」パーティー!

高級店だと嘘をついてスシローに連れて行く悠馬ですが、ノーラの鋭いツッコミには肝を冷やしたことでしょう。

「回る=ハイテク=高級」という謎理論で納得してしまうアリスの純粋さが救いですね(笑)。

帝国最強の面々が、現代日本の味に胃袋を掴まれる様子を楽しんでいただけたら幸いです!


毎日18時に更新しております!


「悠馬の苦しい言い訳に吹いた!」「寿司食べたくなってきた!」と思っていただけたら、作品フォローやブックマーク、星(★★★★★)での応援をよろしくお願いします!

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