色の滲む環(6)
室内は大して広くもない。仮にも家の形をしていたスタジオと比べたら、ワンルームといったところか。部屋の中央に置かれたカーテン付きの大きなベッドがいやらしくて千和は目を逸らした。
「基本的には男社会のモガリだ。千和の外見に喰いつくやつは今後も出てくるだろう。その度にこんなことはしてられない。加美山ほど厄介な奴はいないがな」
「じゃあ私を表に出さないようにすべきでは?
」
適当にソファに座った千和は少しムッとして言い返した。加美山の件も、慣れないドレスアップのせいではないかと勘繰っていたのだ。
「それが一番簡単だが、毎回そうもいかない。だからこれを渡しておく」
ゆったりと歩いてきた仁は、小さな薄紫の箱をテーブルに置いた。
「…………?」
開けなさいと言われて従えば、細いシルバーのリングが納められていた。ライトを受けて輝くシンプルなリングだが、よく見れば外側に細い金細工が掘られている。そして細かなダイヤらしき装飾が美しい。
「京月組の指輪だ」
「これがなんの役に立つんです?」
千和は怪訝そうに仁を見た。彼の表情は普段通りで、特別なプレゼントといった風でもない。ただレジュメのプリントを手渡すような気軽さだった。
「これを着けてるのは組員手つきの女性たち。組員と言っても、これを所持できるのは一部の者だけだ」
「手つきの……これを着けていれば、加美山みたいなことは無くなるってことですか?」
「大体そういうことだ。組内だけじゃなく、外部にも影響はある。こちらの仕事で表に出るときは着けているといい」
「これがあるなら、なんで早く貸してくれなかったんですか」
「まぁこちらにも色々とあってね」
「……どの指でもいいんですか?」
「どこでもいい。ちょうどよくはまればな」
千和はまごつきながらも指輪をはめてみた。親指では太すぎるし、小指では細すぎる。結局、何の抵抗もなく、外れて落ちることもなくはまったのは薬指だった。
「…………」
左にはめてみたが、意味が強すぎる気がして右に移動させた。そこでもきちんとはまったので、そのまま右手に着けておくことにした。




